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 次の日、ぼくとオオモリくんはタムラくんのおばあちゃんの店に集合した。

 だがしをえらんで、おばあちゃんと学校の話や家の話をした。


「毎度ありがとうねえ」

「いえいえ。こちらこそ、いつもお世話になっております」


 どうしてオオモリくんは、大人みたいにすらすら話せるんだろうなあ。


「ところで、おばあちゃん。気を付けてください」


 そして、声をひそめてこんなことも。


「昨日の夜、ぼくたちじゅくの帰りに知らないおばさんからのこと、聞かれそうになったんです」

「……あらまあ。迷わくかけたねえ。

 いやなこと、言われなかったかい?」

「いいえ。いいところで、彼のがむかえに来てくれたんで、何もそういうことは」


 タムラくんの本当の名前がミヤタくんだということは、ぼくらの秘密だ。

 そして、タムラくんは先週引っ越していったのだ。それもぼくらとタムラくんのクラスの先生、じゅくの先生だけの秘密だ。


「子供にこんなこと気をつかわせて……

 仲良くしてくれて、ありがとうね」


 タムラくんは、先週ぼくらとここで小さくお別れ会をした。そのときおばあちゃんに、粉ジュースをおみやげにもらったんだ。


(家族なんだけどね)


 会ってはいけない事情があるんだ。そういうお家もあるんだ。

 いつか解決するまで、だまって信じて待っているのよ。お母さんからも言われた。


「あら。タマがさんぽに来た。

 おいで、おいで」


 タマはゆうゆうとふたつに分かれたしっぽをゆらしながら歩いて、おばあちゃんについていった。

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