3
「おかえり」
この日は雨で、水が苦手なタマは遠巻きにぼくを出むかえた。
吹きかけた雨でぼくは、少しぬれていたからね。
「タオル、ありがとう」
玄関に、タオルがたたんで置いてあった。
「すごい雨だねえ」
「寒くなったし。タマは大丈夫だった?」
「ずっと、おうちにいたから、平気だよ」
昨日、『あした天気になあれ』をしなかったからこんな雨になっちゃったんだよ、とタマは言って、
「学校、どうだった?」
化けねこになってから、タマは学校のようすを聞きたがるようになった。
もともと学校には興味があったのに、ねこの時は話せないから、ぼくが気づかなかっただけかもしれない。
「なんだろうなあ」
変わったことは、特にないかな。雨がすごかったことで、なんだか忘れてしまったかも。
「そうだ、気になったんだ」
ぼくは、急に思い出した。
「上ばきだよ」
図書室に寄った帰りに見かけたとなりのクラスのハヤサカさん、体育館に行くみたいだったけど、上ばきが左右ちがっていたのだ。
「右が緑で、左が黄色だった」
「間ちがえたのかな?」
音楽室のとなりが放送室でそこは土足禁止だから、そこに行く用事があれば、そういうこともたまにある。
「ハヤサカさん、放送クラブだからね。帰りの放送当番だったっけ?」
誰かが片方間ちがえると、間ちがわれた誰かも間ちがったほうの上ばきがのこるから、上ばきを間ちがえたのは、ハヤサカさんかもしれないし、ハヤサカさんじゃないかもしれない。
そう、放送クラブの副クラブ長なので、目立つ人なんだ、ハヤサカさん。今年の四月に転校してきたばかりなのにぼくでも知ってる。
「でも、ハヤサカさん、上ばきの間ちがえなんてしなさそうだなあ。
まあ、明日になれば、どっちかわかるよ」
「そうだねえ」
タマは電子レンジで牛乳を温めてくれた。
「あちちちち」
化けねこには熱いらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます