うちは、ペット可なんだよ。いいでしょう。


「おかえり」


 この日のタマは、声だけで姿が見えなかった。


「小さくなってみたよ」


 どーこだ?


「足もとじゃないよね?」


 ふみつけたらたいへんだ。


「ふふふ」


 くつ箱の上の、花びんのかげにいた。


「ただいま」

「あそぼうよ」

「今日は宿題あるんだよ」


 お母さんは仕事でおそい日だから、夕ご飯は冷蔵庫にある。開けてみたらグラタンだった。


「洗たくもの、たたむよ」


 タマはぼくが宿題をしている間、お手つだいもする。

 人間の姿になって、人間の手で器用に仕事をしているつもりなのだけれど、時々あんまり上手にできていなくて、大きなねこが洗たくものを集めていた、と、近所の人にびっくりされたことがある。


「牛乳とクッキーもあるよ」

「うん。あとで食べる」


 みんなにいいことを教える。

 化けねこになると、ねこの手でもおいしいお菓子を焼ける。


「『あした天気になあれ』をしようよ」


 ぼくが宿題にあきてきたころ、タマが言った。


「いいよ」


 ぼくとタマの『あした天気になあれ』は、ぼくがタマをふわり、と放って、タマがくるくると空中回転し、きれいに着地をする、という遊びだ。

 タマがもしもお腹を出して着地をしたら、明日は雨なのだが、タマはそんなへまはしない。


「『あした天気になあれ』」


 二回転して、着地。


「『あした天気になあれ』」


 三回転一ひねりで、着地。


「あしたは晴れだね」


 晴れだといいね。

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