死霊魔術 vs 怪腕の魔法
グランホーの終地にで常軌を逸した戦いが行われていた。
集団墓地を埋めつくすほどの悪霊。
絶え間ない攻勢に窮した男たちのまえに颯爽と現れたのは奴だった。
ガラの悪い荒くれ者が集う冒険者ギルドのなかでも、とりわけガラが悪い、否、そんな言葉では済ましてはいけない、きっと女子供だろうと容赦なく殺し、赤子の肉を美味い美味いと喰っているに違いない狂気的殺人鬼顔をした男だ。
その者は身の丈以上の大きな鉄塊をふりまわしアンデットを粉砕する。
馬の首を叩き落とす大処刑包丁は、遺憾なくその暴力性を解き放ち、かつてない以上に速く、力強くふりまわされ、屍どもを屍へ還した。
骸骨の群れを割り、ただひとりで果敢に進撃する殺人鬼の勇ましき戦い様を、冒険者の荒くれ者たちは、口をあんぐりと開けて呆気に取られて見ていた。
自分たちが見ている物が夢か幻なんじゃないかと、あるいはそうであるほうがよほど現実的な光景だった。
ひとつ気づいたことがある。
俺が斬馬刀をふるうたびに『歪みの時計』の針が1分ほど進んでいるようなのだ。
スケルトンを叩き潰しながら数えているので間違いない。
俺はなんらかの魔法の作用によって、この剣と呼ぶには大きすぎる鉄塊をふりまわしていると考えられる。
戦いのなかで、なぜか俺は記憶を取り戻しつつあった。
おそらくは力を行使し続けていることがトリガーになったのだ。
俺がいつの間にか覚醒させていた魔法。
それは『怪腕の魔法』と呼ばれるものだ。
魔力をあつかえる生物はごく自然とあるいは意図的にこの魔法を使えるのかもしれない。
スケルトンを倒しながら進み、ようやっと殲滅し終える頃、歪みの時計が2時間ばかり進み、長針は5時を示していた。最近は節約を心がけていたので余力はある。
ただ、まあ、100mくらい後ろに冒険者たちがいた気がするので、明らかに魔法現象とわかってしまうような技を使うつもりはない。身バレは避けなければならない。
「スケルトンたちが守ってたのが、この地下入り口ってことは、ここに魔術師がいるってことか」
屍のクリカットとか言うやつより、ずっと凄い魔術を使ってくるやつだ。
なるほど。この規模なら確かに侮れない。
世の中には凄い魔術師もいるということがわかった。
でも、いまだにスケルトンオンリーなのが、ちょっと……って感じではあるが。
カタコンベと言うのだろうか、地下墓に足を踏み入れる。
壁から生えて来るスケルトンの腕に捕まれる。
ビックリしてぶん殴ると、スケルトンの頭蓋骨が砕け散った。
怪腕の魔法、とても便利だ。
筋力があがるのに伴って、皮膚や骨など、肉体的な強度もあがってくるので、硬い物をぶん殴っても拳が全然痛くない。素晴らしき魔法だ。俺好みの。
「っ、貴様、どうしてここに!」
言って怪しげな魔法陣のそばに首謀者らしき者を発見。
宿屋でアルウに絡んでいた輩だ。
グドとジュパンニを襲い、アルウを攫ったという情報は得ている。
案の定、あいつがアンデットたちを使役する魔術師だったらしい。
「うちのアルウを返してもらう。あとお前に死んでもらう」
言って斬馬刀を担ぎ直す。
「ふざけるな! どうやってここに来たかを聞いているんだ! 外にはスケルトンたち100匹以上を召喚したはず!」
「徒歩で来た」
「馬鹿にしてるのか!」
男は癇癪を起したように頭を掻きむしった。
こちらを見て、俺がデカい剣を持っていることを認めると「まさか、本当に突破して来たのか……?」とすこし冷静になりっていく。
俺はその間に魔法陣の真ん中でぐったりしているアルウを抱きおこす。
身体が弱いというのに、こんな不衛生な場所に直で寝かせやがって。
「俺のエルフに触るな! スケルトン・ドッグ!」
わんころ3匹が向かってくる。1匹を斬馬刀で叩き潰し、1匹を前蹴りで粉砕、1匹は首筋に噛みついてきたので、手で引き剥がして逆に首骨をへし折って黙らせた。
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