5.帰宅部一択

 男女混合テニス大会が終わり、4人で昼食を屋上で食べる。


 不意にスマホが鳴った。スマホを確認すると、祭りからのメールが届いていた。


 メールの内容は『今日、学校終わったら、買い物付き合ってよ。待ち合わせ場所は駅前ね』とのこと。


 メールに翼はOKと返す。


「昨日の軍用機の山墜落事故凄かったな」


 日向の言葉に谷夜色は頷く。


「山火事が遠くからでもハッキリ見えたし」


「ホントそう、爆弾でも爆発したかと思ったにゃー」


「落ちた場所が山で良かった。町に落ちていたら、学校の誰か死んでたかもな」


 翼の言葉に三人は沈黙し、目を閉じて考える。このメンバーの誰かが欠けていたら、クラスメイトや家族の誰かが死んでいたら。


 きっと今笑って学園生活を送ることはできなかっだろう。


 死は気づかないだけで、確かにいつも近くに存在する。


「翼の弁当の玉子焼き激ウマっ」


「ちょ、勝手に食うなし」


「私も食べたい」


 しんみりした空気は、日向のマイペースな性格に救われた。


 他愛ない会話をしてるうちに、昼休みは終わりに近づく。


 午後からは、部活動紹介ということで、一年生は全員体育館に集められた。


 俺はもちろん中学生の時と同様に帰宅部かな。ゲームスポーツ部とかあるなら興味があるけど。


 最近の学校にはゲーム部あるとこちらほら増えてるし。


 ゲームが社会的に認められているようで嬉しく思う。


 部活動紹介が始まって一時間が経過した頃。「パン、パン」と銃声のような乾いた音が体育館に響いた。


 体育館に待機していた教師が、生徒には待機するように指示し、外に確認しに行った。


「パン、パン」


 と再び銃声が鳴り響く。


「翼、嫌な予感がする。見に行こうぜ」


「わかった」


 テニス大会で、下着の色やブルマの透けを見抜いたことからもわかるように、翼の視力はとても良い。その視力は4.0である。


 体育館を出て、屋上に上がる。銃声がしたのは、学校から南の保育園の方からだった。


「なんだあれ!?」


 何十人もの民間人が、警察官に雪崩のように詰め寄っている。それを警察官が発砲していた。


 その時、拡声器の付いた車が『覚醒剤を使用した宗教団体の団員が暴れています。大変危険なので、外出しないようにお願いします』とのこと。


 覚醒剤!宗教団体?それが事実かはわからない。しかし、わかることがある。外は危険だ。


 スマホを取り出して、祭に電話をかけようとするが、通話が繋がることはなかった。


「おい、翼。どうする?」


「一旦、体育館に戻ろう」


「わかった」


 翼と日向は全力疾走で、体育館に急いだ。その道中、曲がり角で誰かにぶつかってしまった。

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