第3話 クラスメイトのクセがすごいっ
魔人ことらんぷに名前をつけてから数日が経った。俺が入学する高校は言うまでもなく底辺高校なので定員割れしている。なのでらんぷを今から合格にすることも簡単だった。入学式は少し遅めの4月20日だ。なぜ遅いかというと、この高校の制度で留年する予定の生徒は4月に20日間登校することで留年を回避することができるからだ。俺もお世話になった。話が逸れたが今日は4月19日。入学式まであと1日となっていた。
「らんぷ〜準備出来てるのかぁ?」
俺はらんぷの部屋のドアを叩く。俺の家は父も母も仕事でほとんど家には帰ってこない。両方なんかの研究とやらで研究室にこもっているのだ。前にその研究で1発当てたらしく家は無駄に広かった。なので3部屋ほど空きがある。その1つをらんぷの部屋にした。
「ん〜私人間の服を着たことがないから着方がわかんない〜!」
らんぷは初めての制服に戸惑っているようだった。
「んじゃあ恋美呼んでくるから待ってろ〜」
俺は妹を呼びに行こうとした。がその時
ドシャバキャーン!!!!
部屋からすごい音がした。俺は咄嗟にドアを開ける。
「おい!大丈夫か!?」
俺は唖然した。これが言葉が出ないということなんだと思った。そこには頭からスカートを被り、ブレザーを足に履いて倒れているらんぷの姿があった。部屋は棚やタンスなどがすべて倒れている。おそらくブレザーを履いてバランスが取れなくなったんだろう。
「はぁ…恋美〜」
こんなんで明日からの生活大丈夫なのか…?らんぷはこの世界に全く慣れていなかった。この間も晩飯時になったら「すし!すし!」とか言い始めたので寿司が食べたいんか?と聞いたら「え?料理名を言ったら料理がでてくるんじゃないの?」とか言っていたし、ある時は風呂場に水を貯めて「なにこれ!?冷たっ!温度調節自動じゃないの!?」とか言っていたし。魔人どんだけ楽な生活してんだよ。そりゃランプに帰りたくもなるわ…と思ったりもした。そんなことを考えていると部屋から「わぁ〜可愛い〜!」って声が聞こえてきた。
ドアが開くとそこには天使がいた。
「どぉ…かな?」
茶色のブレザーに黒と赤のネクタイを付けていて紺色のスカートを履いているという普通のどこにでもある様な制服。しかし、美少女が着ると全く違う物のように見えた。俺はこの魔人の美少女度合いを再度確認した。
「あっ、ああ…似合ってる…と思う」
そう、俺はコミュ障である。なぜ今までこの美少女とちゃんと話せていたのか不思議だ。ネット上でも女と聞くとキョドって喋れない俺がさっきまでだが、なぜこんな子と話せていたのだろうか…
「なーに?恥ずかしがってんの??んふふふ今更私が可愛いって気づいたのね?うんうん…その反応、その反応…んふふふ」
あっこれだは。いくら美少女でも、んふふふなんて気持ち悪い笑い方してたら引くし、ずっとわがままでギャン泣きだったし、女というかコイツ子供だは。
スンッ
「おっけこれで学校には行けそうだな」
「え、なに?なんで今スンッってなったの?ねぇ?なんで急に視線を合わせられるようになったの??」
なんだかうるさいらんぷを放って、俺は晩飯を作るべくリビングへ向かった。
「響って無駄に料理上手いわよね」
晩飯を食べ終わって早々らんぷが意味のわからないことを言い始めた。
「それわかる!こんなくそ兄貴のくせに家事だけはいっちょまえに出来るの意味わかんないよねぇ?」
妹よ…お前もか。
「昔から研究室籠もりの親に変わって俺が家事をやってたからな。あと恋美お前はもう少し俺を手伝え」
「えぇ〜やだよ。兄貴それしか出来ないんだからそれやりなよ」
ひでぇ言われようだな。
「へいへい。ところでらんぷ」
「ん?」
らんぷが気の抜けた返事をする。
「お前に言っておきたいことがあるんだが」
「どうしたの?」
「明日、マジで覚悟して行けよ?俺は1回経験してるから分かるけどマジでヤバいやつしかいないから」
「響だって十分ヤバいやつじゃない」
「それ同意」
俺のどこがやばいんだろう。ランプから出てきて願いを叶える!とか兄のことをクソ呼ばわりする奴のほうがやばい気がするが…まぁそんなことは置いといて、
「俺は忠告したぞ?マジで泣くなよ?」
そう、らんぷや恋美の想像を絶するヤバいやつらがうちの高校、いやうちのクラスには居るのだ。このまま元の歴史通りのクラス分けになれば必ずアイツらと同じクラスになるはず。らんぷもおそらくは俺と同じクラスになる。俺がぼっちなのは元々だが高校でぼっちを拗らせた理由が分かるはずだ。そのレベルでアイツらはやばい。俺は何もないことを願うばかりだった。
「それでは本校の新しき生徒たちよ!君たちがこれからの高校生活を明るく、元気に楽しめることを願っているよ!」
校長の眠く、長い話が終わった。ここからクラス分けが発表されるわけだ。
「新入生のみなさんはクラス分け表を見に来てください」
来た。この学校は底辺私立高校と言うこともあり、やはり人数は少ない。今年も93人しか新入生が居ないらしい。なのでクラスは3つになる。俺は1年の時は2組だった。俺は人が空いてきたのをみて、クラス分け表を見に行く。やはり2組だ。らんぷも同じクラスだった。さぁ…地獄はここからだ。俺は静かに気合いを入れた。
教室に行くと、なぜか教室がザワついていた。俺の時は無かった出来事だ。俺の時は通夜かよってレベルでみんな下を向いていたのに、今は隣の奴と話すなどしてザワついていた。そんなみんなの視線は1人の少女に向けられていた。らんぷだ。みな口々にあの子めっちゃ可愛くない?とか、外国人?ヤバっ!ヌケル!!とか、とっとと落としてやんよ…とか言っている。やっぱらんぷは美少女だよなぁ。とか思いつつ自分の席に座る。らんぷは俺の隣の席だった。らんぷがヒソヒソと俺に話かけてくる。
「なんかすごい視線を感じるんですけど」
「そりゃお前が美少女だからだよ」
そう言うとらんぷは俺のことをポカポカと殴った。痛い。
ザワザワが加速する。あいつ殴られてるぞ、羨ましい!とか、もう仲良いんだ…死のうとか、やばい事ばかり聞こえる。すると担任が入ってきた。
「おーっす。ザワザワすんなぁ。んじゃHR始めるぞ〜」
教室が一気に静かになる。それから担任の自己紹介やこれからの学校生活について説明があった。担任の名前はまた覚えられなかった。そして、自己紹介の時間に入る。
「それじゃ、主席番号1番のやつから自己紹介しろ〜」
茶髪の少しギャルっぽい女子が席を立つ。
俺はらんぷに耳打ちする。
「マジで気をつけろよ」
「?」
らんぷはまだ注意を理解していないようだ。もう知らん…
「主席番号1番、
目が点になるらんぷと担任。
「ははは…じゃあ次の人お願いします…」
次に髪型を今風にしたオシャレな雰囲気イケメンが席を立つ。
「主席番号2番、
ゾワッとしているらんぷと疲れすぎている先生。
「君は後で生徒指導室に来なさい…じゃあ…次…」
髪を腰まで伸ばし、目の下のクマがすごい女の子が席を立つ。
「主席番号3番、
2回目だけど俺も疲れた。
「じゃっじゃあ、次の人…」
手に包帯を巻いていて、長い前髪で左目を隠しているいかにもな男が立つ。
「
もうらんぷは涙目になっている。俺も最初はこうなった。次は俺の番だ。
「じゃあ…次…はぁ…次に行こうか…ハハ…」
「主席番号5番、大宮響です。よろしく」
先生は泣きかけている。
「よろしくな!じゃあ次!行こうか!!」
こうしてクセの強い自己紹介は続いていった。趣味で推しのポスターを食べてるやつや、be動詞よりも助動詞のほうがいい!とか言い出すやつ、背中がネズミの刺青だらけの奴などまぁ沢山いた。終わる頃には先生とらんぷは半分魂が抜けていた。
「だから気をつけろって言ったんだ…」
この高校で青春ができる気がしないのは俺だけじゃないはずだ…
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