第六話 夕食

武器屋から戻ってきた俺は手を洗う。

丁度良い時間にもなってきたのでそろそろ夕ご飯だろうか。

いい匂いが漂ってくる。 受付の女の子が居たので聞いてみる。


「受付さん。 食堂は何時頃から空いてる?」


「あ、はい! 多分もうそろそろ空いてるはずですよ! 良かったら皆呼んでるのでミラって呼んでください!」


ミラちゃんって言うらしい。

名前に似合った可愛らしい女の子だ。


「分かったよ。 ミラちゃん。 俺はレイド…って知ってるか」


ついつい笑ってしまった。

釣られてミラちゃんも笑っている。笑顔はより一層可愛い。


「じゃあ、食堂に行ってきます!」


「行ってらっしゃい!」


もうこなれた感じで階段を上がり、食堂へ向かう。

お肉の焼けるいい匂いとざわざわと沢山の人が居るのが伺える。


「朝ぶりだね。 おっちゃん、席空いてるかい?」


「お、いらっしゃい! 待ってたぜ! カウンターなら空いてるぞ」


カウンターだと厨房が見えるのでより食事を楽しめそうなので大人しくカウンターに座ることにした。


「晩飯はメニューから好きな物を選んで注文してくれ」


了承し、メニューを眺める。

やはり、男らしく肉を食べたい。 結構歩いたのでお腹も空いている。


「あ、じゃあこのモンスタービーフの極上ステーキと、絶品ポテトサラダ、ふわふわのパンを一つと、朝飲んだオニオンスープはありますか?」


「おう、丁度あとちょっとで無くなるとこだったんだ。 運がいいな! ちょっと待ってろ!」


そういって料理を始める料理長。 リンゴでも差し入れしておこうとおもって忘れていた。


「あ、おっちゃん。 そういえばこれどうぞ。 お土産です」


「お、これライカのところのリンゴじゃないか? あの果物屋は結構美味いって有名だぞ」


へぇ、そうだったのか。 だから結構色々品物無かったのね。

このパイルゲートって街は本当に優しい人が多いなぁ。

受付嬢のミラちゃん、料理長のおっちゃん、果物屋のお姉さん、武器屋のオジサンドワーフと俺が追放されてから出会った人全てが優しかった。


もしかしたら皆と出会う為に追放されたのかもしれない。


そんなロマンチックなことはないかもとは思うけど、そういうロマンは嫌いじゃない。

むしろ結構好きな部類に入るかもしれない。

オカルトの部類になるのだろうか? 分からないけれど。


そんなこんなで頼んでいた食事が目の前に置かれる。

牛型の魔物の肉を焼いたモンスタービーフの極上ステーキ。 これをカットし、頬張る。

噛めば噛むほど出てくる旨味。 溢れ出てくる肉汁。 とても美味い。


魔物になった牛は筋肉が凝縮され普通の牛より少し痩せた様に見えるが筋肉が凝縮されているからなのだ。

凝縮されたことで旨味も増し、熱を通すと凝縮された繊維が壊れ、柔らかくなるのだ。


中から肉汁が溢れてきて全然止まらない。

そこにパンを軽くつけて頬張る。

バターの甘さと、肉汁の甘さ、パン自体のしょっぱさが相まってめっちゃおいしい。


ここでスープを一口飲む。

心が温まるような懐かしい味がする。

安定して美味しい。


最後に名前に絶品が付いていて試したくなったポテトサラダを見つめる。

スプーンで掬い、口に運ぶ。


思わず、


「うま」


と独り言ちる。


細かく切って、こんがりと焼いたベーコンが中に入っている。

芋がふわふわとしていて味が濃く、中の玉ねぎも甘くて美味しい。

胡椒と塩味のバランスが最高で日の付け所がない。


これは絶品を名乗っているだけのことはある。


ごちそうさまでした。


このままお風呂に行ってこようと思う。 そしてお風呂に入ること20分。

裸のオッサンが入ってきた。 良く見ると料理長だ。


「あれ? お前さんも居たのか。 ゆっくり温まっていってくれや」


「はい、もうそろそろ出るところでしたがもう少し温まっていきます」


そして俺はのぼせたのだった。

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