一話 転生成功

 「……セミオじゃないか。」


 俺の言葉に反応した二人が、声をかけてくる、


 「ん、おはよう、セイン。」

 「……おはようございます、セイン。」


 プロインは気付くと直ぐに挨拶をしてきたが、セミオの方はお茶を飲み終え挨拶をしてくる。

 セミオは、普段的に無表情なのだが、今はその目の中には少し戸惑いの色が伺える。


 大方、いきなり自分の名前を呼ばれたことに戸惑っているのだろう。


 「……セイン、お母さんのことを名前で呼ぶのはよくないぞ?」


 そこで、俺がセミオに対し名前呼びをしたことに対し、注意をしてくるプロイン。

 流石にここはお母さん呼びをしたほうがいいだろう。


 「……ごめん、お母さん。」


 自分で作った、いわば自分の子供にお母さんという呼び方をするのは何というか……少し、少しだけなのだが……気恥ずかしい。


 「……良いですよ。」


 そう言うと、セミオは少しだけ微笑む。

 きっと、お母さんと呼ばれるのが嬉しいのだろう。


 「……あっ……と、とにかくっ、早く朝ご飯を食べちゃいなさい。」


 セミオを見て少しの間硬直していたプロインが俺に言ってくる。

 少し赤くなっているところを見ると、セミオに見惚れていたのだろう。

 当然の事だ。


 何故なら、俺の子だからだ。

 俺の作った子が不細工な訳がない。


 ……とまあ、ごちゃごちゃ言っていてもどうにもならないので、とりあえず朝食を食べてしまおう。


 ◇


 ……うまかった。

 ……とにかくうまかった。

 転生したと言うのに断食の時の感覚が癒えていないのか、それとも、さっきの料理が今まで食べてきた物の中でずば抜けてうまいのか。


 いや、断食の感覚が抜けきっていなかったのだろうか?

 腹が減っていた訳ではないが、今俺の感覚的な物がそう感じさせた。


 ともあれ、今はリビングで何故かもじもじとして俺を見ているセミオを見ながら、プロインの話を聞いているところだ、


 「なあ、セイン。」

 「なん──何?」


 危ない、昔の癖で普通に接するところだった。

 今は一応子供という定だからな。


 「……なんで母さんの昔の名前を知っていたんだ?」

 「……ん?」


 どういう意味だ?


 今はセミオと名乗っていないであろう事は、今の言葉でわかった。

 ……が、何故名前を変えたんだ?


 「……あてずっぽうか?」

 「え、あ、うん……!」

 「やけにぎこちないな……?」


 焦った俺は子供という事を利用し、セミオを連れてリビングを出る。


 「えっとぉ……あ、お、お母さん! 遊ぼ!」

 「え……あ、いいですよ。」


 いきなり声をかけられたセミオは、少し戸惑いながらもしっかりと返事をする。

 その声を聞いて、俺はセミオの手を取りリビングを後にする。


 リビングを出ると、セミオを引き連れ、俺が目覚めた部屋へと来ていた。


 「……セミオ、俺がわかるか?」

 「はい、お久しぶりです、ギリア様。」


 俺の事は覚えている様だな。

 まずは、何故俺がこの様な姿をして此処に居るのかを説明しなければいけないだろう。


 俺は、セミオに【キメラ】の作成を頼まれたことや完成したこと、転生魔法の作成を頼まれた事を伝えた。

 さらに転生魔法に関しては、それを作り、成功させ此処に居る事等を全て話した。


 「つまり……怪しい人間に力を貸したら殺されたと……そういう解釈でよろしいでしょうか?」

 「うっ……否定できないが……人を助けるのはいい事だろ?」

 「確かに善い行いではありますが、人を選んでください。」


 確かにその通りなので何も言えない……。


 だが、俺もそうは思ったが【キメラ】は前々から作りたいと思っていた所にあの依頼が来てしまったのだ、受けるに決まっているだろう、

 一応冒険者ではあったが、これは冒険者としてではなく、あくまで俺個人に来たものだ。

 金を払うと言われたらやらないわけがない。


 ──とそこで、セミオが言葉を続ける。


 「……ですが、またお会いできたこと誠に嬉しく思います。」


 そういって、少し頬を緩めてお辞儀をしてくる、


 実際、俺もそれは思っていたのだが。

 何故か?

 十年たって転生するとして、その間の意識はないため、一瞬のことに過ぎない。

 とは言えだ。

 その前段階、約十五年程人と話すことがなかったため、あまり知らない人間の元に生まれるのは少し嫌だったのだ。


 それには安心した。


 が、今はこの話を通してセミオが一番気になっているであろう事についてを話した方がいいだろうと思う。


 「……俺の死体をどうするかだが……。」

 「一度、クリント様にお会いになられた方がいいのでは?」

 「確かに、それは一理ある……が、今はまだ下手に動かない方が良いだろう。」


 今下手に動けば、またあいつらみたいなのが来るかもしれないし、この歳で錬金術が使えれば、将来が有望だろうと見込んだどっかの国が自分の国のものにしようとするだろう。


 俺は、そうはなりたくない。

 前世と同じく自由に実験やらなんやらを楽しみたい。


 そういえば……冒険者は今もあるのだろうか、?

 あるのならば、冒険者になるのもいいかもしれない。


 「……とりあえず。これから、俺の新しい人生が始まるのか……。」


 俺は途中で考える事をやめ、そう呟いた。

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伝説の錬金術師は転生する~剣も魔法も使える錬金術師、転生して世界の常識を覆す~ @100700313

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