ep2 見える?

 ”幽霊”

 私の頭の中に浮かぶ言葉。

 それは、恐ろしくて、湿っていて、テレビからでてきたり、人をおどかしたりする存在。

 その類の話が昔から苦手な私は、よく眠っているおばあちゃんを起こして、”眠るまで見守っていて”とよくわがままを言った。

 その度におばあちゃんは、眠るまで頭を撫で続けてくれた。

 だが今、リビングのソファに座りテレビを見ている青白い”幽霊”には、恐怖より、安堵を覚えてている。

「おばあちゃん」

 その”幽霊”である私のおばあちゃんは、今お風呂から上がったばかりの私に、以前よく聞いていたことを言う。

「髪の毛はすぐ乾かしなさい。女には髪がいのちよ」

 おばあちゃんは、なんにでも女のいのち、とつける。

 歯とか、肌とか、時には作法にまで。

「もう死んでるじゃん」

 ふざけて私が返すと「それもそうね」と笑った。


 おばあちゃんの言いつけを守って髪を乾かしながら、この不思議な現象について考えた。

 もしかして、”さよなら”を私が言えなかったから、成仏できないのかな?

 それとも現実を受け入れられない私が見ている”幻覚”?

 でもどちらにせよ、私はわくわくしていた。

 たとえあれが”幽霊”でも、あの懐かしい匂いがもうなくても。

 大好きな私の”おばあちゃん”だと、私は確信していた。

 確信していた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る