ゲームしようぜ!
今日はいつもと違って部室はひどく静かだ。
理由は今日の放課後、全教科補習が行われているから。
補習がなかったのは僕と先輩だけというなんとも残念な結果なため、部室に先輩と2人きりというシチュエーションが、微妙に居心地が良くない。
と、僕が考えていたのが察せられてしまったのかソファに寝転がっていた先輩の方から声がかけられた。
「なぁ翔真。ゲームしないか」
「唐突ですね。どうしたんですか?」
「いや、分かるだろ?暇なんだよ暇。みんなみいないと部活やる気にならないし、この部室楽器以外ほとんどないし退屈なんだよ。だから、ゲームしようぜ!」
この先輩はちょいちょい押しが強い。そして気弱な僕は断れない。
「わかりましたよ。それで、何をするんですか?」
「うーん。じゃあ恋バナしよう!恋バナ!」
「ゲームはどこに行ったんですか!それに、僕が先輩に話してもいいことなんてないと思うんですけど」
「じゃあ好きな人はいるってことね」
「それは別にいいでしょ!」
ゴホン
「とにかく、ゲームをしましょう。じゃあこれなんかどうですか」
僕が取り出したのはオセロ。
うん、ただのオセロ。部室にある古い戸棚にはゲームが隠されている。が、誰もそのおんボロさと汚れ具合に触ろうとしないので試しに開けてみると、中は意外と綺麗でボードゲームが沢山入っていた。
「へー。こんなにたくさんゲームあるんじゃん。でもどうしてこんなに汚い棚に入れてたんだろ」
「監査の時にバレないようにじゃないですか?ただでさえこの部活、部員少ないんですし」
ちなみに部活監査の時にこういう遊び道具が見つかると部費が削られたりする。意外と生徒会はケチです。
「あっ、トランプあるじゃん。こっちにしよう」
戸棚の奥から見つけたのは、プラスチック製のトランプ。割と新しめ。
「まぁ、先輩がそっちにしたいんならいいですけど。ゲームはどうします?」
「そりゃあもちろん、神経衰弱でしょ」
「わかりました。じゃあくって置きましょう」
何度もトランプをくって裏向きでバラバラに並べる。柄は至って普通の赤色のやつ。
並べ終わるってじゃんけんをしようと顔をあげると彼女と目が合う。非常に悪い目だ。
「じゃあ罰ゲームを決めようか」
「ん?」
「罰ゲームだよ。決めないと翔真はやる気をださないだろう?負けたらうちにどんな質問でもしていいよ。代わりに翔真が負けたら、私の言うことを一つ聞いてもらおうか」
「その不平等な罰ゲームはなんですか!嫌ですよ。普通にしましょう、普通に」
「えーっ。じゃあ翔真の好きな人にキミがその人のこと好きだってこと伝えちゃうけどいい?」
「ダメですよ!何言ってるんですか?」
ひどい。あまりにも横暴だ。
「じゃあゲームしよう」
その淡々とした態度が余計に腹が立ってきた。
「分かりましたよ。でも罰ゲームは守ってもらいますからね。こう見えても記憶力には自信があるんで」
「うん!それでこそキミだ。さぁさじゃんけんじゃんけん」
こうしてまんまと智音先輩の口車に乗せられて、2人だけの勝負が始まる。
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