勉強会
机の上には教科書、ノート、筆箱。
床はふかふかのカーペットで向かいには星奈が笑顔で座っている。
「じゃあそろそろ始めよう」
「うん」「そうだな」
当たり前のように幸と裕也は返事をする。
「いや、、なんで?」
「そりゃあだって」
「うちらも赤点あるからに決まってんじゃん」
裕也は国語、幸は英語の酷い点数のテストを自慢げに見せつけている。頭を抱えて大きなため息をつく。
「先輩、手伝ってくださいよ」
星奈のベッドでゴロゴロしている智音先輩に声をかけるが、返事がいっこうに返ってこない。聞こえてくるのは漫画を読んで愉快に笑う声だけ。この人こそ本当に何しに来たんだ。
「早く勉強しようよ。テストまであと2日しかないんだから」
その間に3人は既に教科書を開いてテストの範囲の勉強を始めている。意欲だけは人一倍あるが、それをテスト前に発揮すればいいことにどうして気づけないのだろうか。
「じゃあ分からないところがあったら声掛けて」
「はいっ!」
反射レベルの反応で星奈が手を挙げた。
「2人を見習ってもう少し努力をだな……」
幸達は黙々とテスト問題と教科書を見合わせて間違いを黙々と確認している。たぶんホントにただ勉強してなかっただけなんだと思う。
対して星奈はといえば、
「微分の仕方が分かりません」
「教科書を見ればわかる」
「それが分からないです」
駄々っ子のように声をあげる彼女のノートにはしっかりと取り組みの努力が見られた。ただ出来ないと言ってるわけじゃないみたいだ。
「分かった。分かったから。先輩、もし裕也達がわかんないところ質問したらちゃんと答えてあげてくださいよ」
「あー、うん。OK」
こちらに一瞥くれることも無く返事をしているあたり聞いてないんだろう。まぁもう知らない。
「じゃあまずここからだけど……」
「うんうん」
彼女はいたって真剣なんだけれど、あどけない無邪気さが見え隠れしている。
「って感じ。わかった?」
「……たぶん」
「じゃあこの練習問題解いてみようよ」
「分かった」
ーーーしばらくして
「できたー!」
とうに日は僕らの真上まで昇っている。彼女がテスト問題を理解するのに4時間もかかってしまった。2人と言えば、智音先輩がああは言っても教えていたらしく僕らが悪戦苦闘している中3人でゲームを始める始末。
星奈の終わりの声を聞いても、
「終わった?じゃあ一緒にゲームしようよ」
まるで自分の家のように星奈のコントローラーを手渡す。
「うん、やるやる」
はぁ〜
なんだかもう疲れた。彼女のベッドにもたれかかって、だらんと体を伸ばす。
目を瞑ってしばし休もう。そう思っていた時、星奈が振り向いて僕と目が合う。
「翔真君、一緒にやらない?」
「そうだな、息抜きにやろうぜ」
「このゲーム4人しか出来ないから一番弱い幸が交代ね」
「えーっ!そんなのダメだよ。ルール追加はずるいぞ!」
みんなが途端に騒がしくなる。それを見ると少しだけ疲れがほぐれる。
「うん。僕もやるよ」
起き上がって星奈のコントローラーを受け取る。
久しぶりに友達とやるゲームは、時間を忘れるほど楽しかった。
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