7章 12. マイラ達の急成長

 魔獣探しシーラチームは、海へと向かう予定であるが、その為にまずやることががあった。




「よっし、久しぶりにやるかな……!ピイィィィィィイ!」




 俺とシーラは竜の島の浜辺までやって来ると、久しぶりに指笛を鳴らす。


 俺の指笛は昔から動物を引き付ける効力があるので極力使わない様にしていたのだが、今回はある仲間を呼び出す為に使ったのだ。


 それにあいつが来れば、他の魔獣もビビって近寄って来ないだろうし。




「ボアァァア!」




 そんなことを考えていると、激しい水柱を上げて力強い鳴き声と共に俺の仲間、イナリは姿を現した。


 イナリは帝国から救出した獣人族を逃がす際に運んでもらう為一時別れていたので、久しぶりの再会である。




「おっすイナリ、元気にしてたか?」




「ボアァッ!(おう!灯も元気そうで安心したぜ!)」




 イナリはイナリという名前に似合わず結構荒っぽい口調なので、ちょっと申し訳ない気分になる。


 まぁ本人は気に入っている様子なので、俺も気にしないようにしておこう。




「その様子から獣人族達は無事に送り届けられたみたいだな」




「ボアッ!(もちろんだ、あれくらい楽勝だぜ!)」




 問題は無いと思っていたが、それでも心配はしていたので獣人族達も無事に島に帰れて一安心だ。




「貴方様、この後はどうなさるおつもりですか?」




「これから海に潜って魔獣を探すつもりだ。だからイナリ、融合するぞ!」




「ボアァ!(了解だ!)」




 シーラの問い掛けにそう答えると、俺はイナリと融合する。


 イナリと融合した俺の体は、全身銀色の鱗に覆われ首元にはエラが生えてきており、口はゴツゴツと変形し歯は鋭くなっていた。おしりの方からはちゃんと尻尾も生えている。




「よーし!それじゃあいくぞシーラ、イナリ!」




「了解ですわ」




『ボアッ!(任せとけ!)』




 イナリと融合し水中に適応した俺は、シーラを連れて海へと飛び込む。


 ただ、やはり人間としての感覚が強いからか最初は呼吸出来ることが信じられず、しばらくは息を止めて泳いでいた。




 しかしそれも限界が来たので、俺は恐る恐る海水を口に吸う。


 すると吸い込んだ水は、エラを通過して排出されるのを感じる。そしてその時無事体内に酸素を取り込んだ様で、息もだいぶ楽になった。




「ははっ、こりゃすげぇな!」




「わたくしのサポート無しで貴方様と一緒に泳げる日が来るなんて、なんだか感動ですわ」




「確かに前は空気の膜みたいなの作ってもらってたからなー。でもあれも楽しかったから、またやりたい気もするけど」




「ふふっ、貴方様はわがままですわね」




 こうして、シーラと会話しつつ楽しく海中を進みながらも、俺は魔獣を次々と仲間にしていった。


























 ――


























 魔獣探し最後はガンマチームだ。


 ガンマと俺は懐かしの仲間に会う為、砂漠地帯を訪れていたのである。




「相変わらずここは暑いな……」




 以前はドロシーやシンリーが居たおかげで砂漠の気温にも耐えられたが、今はガンマしかいないので正直しんどい。


 ここはあまり長居は出来ないだろう。


 だが、それでもここにはどうしても会いたい魔獣がいるのだ。




「大将、位置はどうだ?」




「あんまり動きは無いみたいだ。このまま直進してくれ」




「キリイィィィ!(了解!)」




 俺はモンスターリングで位置を確認しながら、運んでもらっているソニックドラゴンに指示を出す。




 そうして進むこと数分、俺達はやがて砂漠地帯の一角に立ち並ぶ岩場へとやって来た。




「ここに居るのか?」




「えーと、モンスターリングだとここを指してるはずなんだけどな……、おーい!誰もいないのかー!?」




 岩場に降り立ったはいいが、そこには生き物の気配は全く感じられない。


 だが、不安になった俺が声を上げたのと同時に、俺は背後から現れた何者かによって押し倒されてしまった。




「ガウゥー!(懐かしい匂いがすると思ったら灯だー!)」




 俺を押し倒した魔獣、キマイラのマイラは俺の顔をぺろぺろと舐めながら嬉しそうに鳴き声を上げていた。


 そう、この砂漠地帯に来た目的は、かつての旅仲間であったマイラとその家族を勧誘する為である。




 しかし、それにして不可解なことが1つあった。




「おぉマイラ!久しぶりだけど、なんか体……、でかくね?」




「ガウ?(そう?)」




 以前は軽々と抱き抱えられる程に小さかった筈のマイラだが、今では俺は簡単に押し倒され身動きも取れなくなっている。


 しかも以前と違って立派なたてがみまで生やしていたのだ。


 マイラは明らかに大人へと成長を遂げている。




「あらあら、懐かしい気配がすると思って来てみれば、ガンマに灯ちゃんじゃないのー。ほんとに久しぶりね」




「バウバウ!」




「バオォッ!」




「エキドナにルベロにユドラ!お前達も久しぶりだなー!」




「へっ、元気そうで何よりだぜ」




 マイラの急成長に困惑していると、更に懐かしい声が聞こえてきたので振り向く。


 ガンマも久しぶりの再会で嬉しそうにしていた。




 だがそこでも俺の目を引いたのは、ルベロとユドラも急成長していたことだ。


 ルベロはマイラと同じぐらい巨大になってるし、ユドラに至ってはリツと同レベルの立派な体躯となっていた。


 元々でかかった体が更にでかくなってやがる。




「なぁエキドナ、こいつらしばらく見ないうちに変わり過ぎじゃないか?」




「そう?まぁ子どもの成長は早いって言うからねー。無理もないわよ」




「そう、なのか?いや、にしてもこれは……」




 マイラ達の急成長に対しエキドナは何の疑問も抱いていない様子であったが、以前見た時のあの可愛らしいサイズと比べたら変わりすぎていて、違和感しかない。


 魔獣の成長ってこれぐらい早いものなのだろうか。




「まぁまぁ大将、別に成長して困るってもんでもねーんだし、あんま気にすんなよな」




「うーん、まぁそうだな。気にしても仕方ないか」




 かつての姿との対比に困惑していた俺だが、それはマイラ達が成長した結果なのだと受け入れることにした。




「てかマイラ、そろそろ辛いからどいてくれると有難いんだが」




「ガウッ!(うん!)」




 マイラの体重に俺の体も限界を迎えてきたので、上から下りてもらった。


 もうマイラを抱き上げることも叶わないのかと思うと、やっぱり少し寂しさはあるな。




「それで灯ちゃん達はここへ何しに来たの?見た感じドロシーちゃん達もいないみたいだけど」




「ああそうそう、そのことで少し話があるんだ」




 エキドナに聞かれて本題を思い出した俺は、エキドナやマイラ達にこれまであったことと世界の創造に協力してほしいという話をする。




 それを聞いたエキドナは何やら考え込む素振りを見せると、振り返ってどこかへ移動し始めた。




「2人とも、私に着いてきなさい」




「え?ああ、いいけど答えはどうなんだ?」




「その件に関しては私の一存で決められるものではないからね。そういうのは一家の大黒柱に判断してもらわなくっちゃ。ということで、灯ちゃんうちの旦那に会ってちょうだいね!」




 俺の質問にエキドナは淡々と答えると、爽やかな笑顔を見せてきた。


 そう言えば彼女には旦那さんが居るって話を前にも聞いたことがあるな。


 なんか、義理の親に娘を貰いに行くみたいな雰囲気になってきちまったじゃないか。まぁある意味当たってるのかもしれないけど。




「前は別の場所に居るって言ってたけど、今は一緒に居るのか?」




「えぇ、この下が私達の家になってるのよ。ささっ、遠慮しないで着いてきなさい」




「わ、分かった」




 久しぶりのマイラ達との再会から一転、話は思わぬ方に転がっていった。


 こうして俺は、マイラ達を再び仲間にする許可を得る為、彼らのお父さんに許可を得るという謎の試練へと突入したのである。


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