第2話 アタシは生まれ変わる

 これがアタシの望んだ姿だって? 記憶にあるような、ないような。


 数日前に見たアイドルモノのアニメに、こういう子がいたような。


 でも、見たのほんのライブパートだけだよ??


 ピンク髪とかブリーチヤバそうだな~って、なおのことツインテとかリアルにやるの難しいよな~って、ほんの一瞬思っただけ。


 髪色とか、髪形とか、リアルだとちょ~時間かかるし。お手入れとかで。


「で? 君はどうやって、杖を腕に埋め込んだわけ?」


 超高速視力検査は終わったのか、美少年が腕を組みながら言った。


「杖? 埋め込むも何も、最初から持ってないよ。大阪行ったことないし」


「オオサカ? でも、解析結果は間違いなく腕に杖があると言ってる」


「アタシの腕が杖みたいに細くてキレイってことですか?」


 ものすんごく嫌そうな顔された。そんな顔しなくても。


「お前のそのタトゥーは、魔法回路だ。この世界の住人は皆、魔法を使うときに杖を使う。それを」


 と、ここで止め、美少年は名探偵のようにキリッとした眼差しで、


「お前は腕に埋めたんだ!!!」


 うん、さっきからあなたそう言ってるじゃん。かっこつけなくても。


「それで、これが杖ってことは、アタシもしかして魔法使える?」


「使えるなんてもんじゃない。魔法を使うために杖を実態化させ、魔法を唱えながら杖を振る……その手間がオールスキップだ。本当に、どうやって埋め込んだんだ?」


 おお、なんかよくわからないけど強そうね。一切練習しないですべての振り付けを踊れるみたいなもんかな? ちょっと違うかな?


「お前のステータスはおかしい。この世界も、管理してる神もおかしいが」


 試しに、なんか魔法使ってみよう。魔法……魔法……あったらいいなっていうのを叶えるのが魔法でしょ?


「花道ができますように!」


 唱えると、たちまちアタシの足元に花々が咲き乱れる。おお、キレイ。


 一度歩いてみたかったのよね、リアル花道。花道だけ歩きたいね。


「おい、気をつけろ。魔法を使うための魔力資源は有限だ」


「ごめん、ごめん。つい」


 謝るアタシを見て、美少年が目を丸くしている。なになに?


「お前……ミイナか?」


「そうだよ?」


「驚いた……お前の能力は本当におかしいな」


 美少年はアタシに手鏡を差し出しながら、言う。


 手鏡の登場回数多いね。アタシがかわいいからか。


「お、おお……金髪だ……」


 金髪ショートボブ、存在感のあるイヤリング、セクシーというか、鎖骨とか太ももをあらわにした衣装。ついでに背が少し高くなったような?


「これは最近流行りのガールクラッシュ系!」


「自由自在に姿を変えられるのか……もはや、やりたい放題だな」


 鏡のなかのアタシをよくよく見ると、顔の造形だけはそのまま。


 メイクのおかげか、若干オトナっぽく見える。


「もしもし?」


 ガールクラッシュ系に変身して大興奮のアタシをよそに、美少年はどこかへ電話(?)し始めた。耳にイヤモニでもつけているのか、片耳を指で押さえている。


 イヤモニ、ちょっと激しい踊りすると、すぐ落ちるからね……。


 アタシが街行く人(誰もかれも、普通の人間に見える。でも服はRPGっぽいのよね。そういうテーマパークに来た気分)をぼーっと見てると、電話(?)は案外すぐに終わった。


「ミイナ、お前のスキルがわかった」


 お、それは気になる。自分の実力を把握することは大事ね。


「レベル0、攻撃力も防御力も0……ヘンテコなスキルがひとつしかない」


 ……なんですって?

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