アイドルになりたいアタシは勇者になりたいわけではない!!
空間なぎ
第1話 アタシの夢
アタシには夢がある。
アイドルになるという夢だ。
生まれたときからアタシはアイドルになりたかった。
アイドルアニメを観まくった小学生時代。
国民的アイドルの総選挙に一喜一憂した中学生時代。
実力派アイドルのパフォーマンスに魅せられた高校生時代。
アイドルを応援してるうちに、いつの間にかアタシはアイドルになりたくて。
ダンススクールに通って、練習して。
カラオケで歌の練習をして。
毎日の筋トレや健康管理は欠かさずやった。
そんな努力を積み重ねて、よおおおおおおやく有名事務所の練習生として生きていけるようになった矢先に……!
どうして、異世界に来てしまったのだろう。
「誰だぁ!! 出てこい!!!」
アイドルを目指すような女の子が、異世界転生のこと知らないと思った?
最近のアイドルはね、普通にアニメを観るしラノベを読むのよ!
推しが好きだからね!!! 異世界転生モノ!!!
アタシが見ている景色は、まさしく異世界転生モノに出てくる街並みそのもの。
もはや、異世界転生モノの街並みを完全に再現したテーマパークとか作ったら? ジ○リとかムー○ンとか、最近そういうの多いじゃん。
「出てこい神!!! いるんだろ!!!」
腹から声を出す。にぎやかで元気な楽曲は得意分野なのよね、繊細な楽曲は全部ダメだしされるんだけど。
途端、目の前にアタシと同じくらいの身長の美少年が姿を現す。
そのまま二分くらい微動だにしなくたって、アタシは歓声上げないからね?
「お前がミイナ?」
「アタシこそ次世代のスター、歴史を作り歴史を残す絶対アイドル、坂木ミイナ!」
昔から考えていた名乗りを言っちゃった。なんか悪役っぽい。サカキだし。
美少年はやれやれといったていで右手を高速で上下左右に振る。超高速視力検査受けてる人? 右、上、下、右、左、上……。
「ステータスが見えない……? なにかのバグなのかな」
「見えないってなによぉ、強いか弱いかくらい教えてくれてもいいじゃないの」
口をとがらして訴えるも、美少年は首をかしげて眉をひそめたまま。
ひょっとしてこれ、舞台とか? 最近、異世界転生モノの舞台とかも増えてきたよね。
そっか、だからステータスなんて見えるはずないんだ。なんか安心。
そう思って、こわばった背中をほぐそうと、伸びをした。
瞬間、練習着のTシャツからのぞく左腕に、見覚えのないタトゥーがチラリ。
「なんじゃこりゃあああああ!」
「なにそれえええええ!」
アタシと美少年の声がハモる。
タトゥーは血のように赤く、左手首からTシャツの袖あたりまでに彫られていた。
模様は何にたとえるべきか、ツタがからまったような模様?
てか、アタシ、タトゥーとか彫ったおぼえないんですけど。
推しグループの一人が右腕と背中にタトゥー彫ってて、それがチラチラ見えるたびにかっこよかったから憧れはしてたけど。
でも、叶えてって言った覚えはないし……。待って?
「ねぇ、鏡、ない?」
「あるよ。どうぞ」
鏡を見て愕然とした。声も出なかった。
ピンクの髪はツインテールに。
目のなかにはキラキラ光るお星さま。
鼻はきゅっと小ぶりで、唇は赤ちゃんのようにかわいらしい。
「若返り……?」
「君が望む姿を読み取って、こっちで変更しておいたよ」
着ている服はそのままに、アタシの体だけ中学生の頃に若返ってる……。
なんだ、この複雑な感情。ピンク髪はよしとしよう。
これは正直望んでいた。ブリーチとかヤバそうだなって思って、なかなか試せずにいたから。でも、こんな、こんな……
「こんなかわいい姿は求めてないよおおおおおお!!!」
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