第9話
肥えた大男が運転席に座り、鉄くずは運ばれていく、新たに形を変える為に。ところが、実際男はその行く末を知らなかった。男と顎の長い男は肥えた大男のトラックを見送ってから、敷地内中央に積もったままの回収品の山に近づいて、鳥の巣作りを逆さに再生した動きを始めた。古い民家の遺品整理の回収品が乱雑に吐き出されたままで、家具、家電、食器、衣服、本、雑誌などから、缶詰などの食料品、縁の錆びついた虫除けスプレーなどの缶、陶磁器やプラスチックなどの色の着いた小物の置物や文房具などがあり、土を掘り返せば小石や木の根、蒸れた落ち葉、おもちゃの鉄砲の銀玉、クリップ、菓子の包装の切れ端、蚯蚓、草鞋虫、甲虫の幼虫などの目に見える物から、目に見えない微細な粒や生物が姿を表わすように、家をほじくり返してかき集められた多様な物物は、土の中を構成する物物同様に一つ一つを見ればいつでも息を吹き返せる物でありながら、それを必要とする主人を失ったことで全てが停止していて、無理にかき混ぜられて投げ出されたことにより、この世のすぐ裏に存在する混沌を見事に具現していて、抽出されて形作られた物が目的と意味を失い元へ戻りたくて彷徨っている形となっていた。男はこの仕事をそんな迷った物達に少しでも最適な進路を与えて循環させることだと考えていた──あふりか出身ノ芸能人ニ似タ背ノ高イあふがにすたん人ハ『めいどいんじゃぱん』ト連呼シテ好意的ナ表情ヲ向ケナガラとよたノはいえぇぇす・すぅぅぱぁぁろんぐノたいやヲ整備シ続ケル──。
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