第8話 はちみつレモン
ここにいれる時間はわずかしかない。最初は見知らぬ土地で過ごすだけだと思っていた。しかし実際は楽しくて、思い出になる出来事ばかりだった。そんな場所にいれるのもあと3日。3日後には駅で電車に乗り、自分の家に帰らないといけない。複雑な気持ちを抱えながら、荷物を少しまとめた。
*
朝ごはん。食卓には色鮮やかな彩っている野菜が挟まれたサンドイッチがある。
とても美味しそうだ。朝からサンドイッチが食べれるなんて高級ホテルみたいだ
なんとも贅沢な食事だ。
「すごい....朝からサンドイッチが出るなんてホテルみたいだ。美味しそうだ。
これ食べて良いんですよね!?純さんすごいですよ」
少し目をキョロキョロとさせて純さんは照れくさそうな仕草をしている。しかし、いつも美味しくて上手な料理が出せることがすごい。経験の差だろうか?当たり前だが少なくとも自分よりも料理は上手いはず。同性としての憧れを少し感じる
「あの、食べて良いんですか?」
「せっかくの若い子が食べないと意味ないからな!食べていいいよ。そのサンドイッチをたくさん食べて平らげてくれよ」
僕はサンドイッチをさっそく食べた。野菜がシャキシャキとしていて美味しい。次々と食べた。一口で入るくらいのサイズに切られていて気軽に食べれる。そしてどれも美味しい。こんなホテルみたいな朝を過ごせて、幸せな気分になった
*
どれも美味しかった。食卓にあった、サンドイッチは一つも余らずに残らずに感触をした。ごちそうさまと言い、片付けを始めた。
やっぱり若さはすげぇな!余るかなって思ったけど全部、食ったな」
「いえいえ、それくらい美味しかったので」
片付けをしているとドアを叩く音が聞こえた。新聞屋とかだろうか。戸がガラガラと開いた。どうやら、里子ちゃんみたいだ。朝から来るなんて早くないだろうか。何か特別な用事でもあるのだろうか
「遊ぼうよ!」
「朝早く来てなにかあったの?」
「早いってそうかな?」
「そうだよ。悪いけど、僕は宿題があるんだよ。ごめんね、午後でいいかな?」
そう説得をすると分かったと言い頷いていた。そしてまたねと言って去っていくのを見送った。朝から、いきなり来るとは思っていなかった。午後の約束をしたこともあり、僕は再び食前の片付けを手伝った
*
お昼ごはんを済まして、土間にある椅子に座りゆったりとくつろいでいる。窓から見える外は地面がゆらゆらとして、一目分かるような暑さをしている。外に卵でも置いといたらゆで卵にでもなりそうだ。正直、ここから出たくない気分だ。すると、戸がガラガラと開く音が聞こえた。里子ちゃんが上機嫌そうにやってきた
「とっておきのものがあるんだよ!今日は私の家に来てほしいんだ」
「とっておきのものってなんだろう。前にも素敵なプレゼントを頂いたし」
「いいから来て!」
初めてだ。僕は女の子の友達がいない。だから女の子の部屋に入る経験がなかった。
とても新鮮でドキドキとする。待っていてと指示をされたが、中々来ない。すると何か揉めてる声が聞こえてきた。
「できないの!?」
「家のは出来ない訳でもないけど、皮が固くて果汁があまり出ないからね」
「じゃあ、どうしよう。うわあああ〜!」
「ちょっと!」
まるで幼稚園生のような会話だ。すると、里子ちゃんが走って部屋に戻ってきた。
今にも泣きそうな顔をしている。何か慰めようと思ったが、変なミスは負いたくない
リスクは避けるべきだ。悲しくも自分には何も出来なさそうだ
「ご、ごめん。あのね」
「えっと....大丈夫?」
「ほら、里子!しっかり聞きなさい。作れるには作れるよ。レモンは家の木じゃないのあるでしょ?」
「なんか悔しいなぁ。でも、お願いするよ!」
里子ちゃんが持ってきてくれたみたいだ。お盆にコップが乗っている。コップは薄い黄色をしている。これがはちみつレモンであろうものなんだろうか。少しドキドキとする
「これがはちみつレモンだよ!ちょっと待ってね。はいっどうぞ!」
「ありがとう、いただきます」
口にいれる甘酸っぱい爽やかな味がした。後味がスッキリとした感じでとても美味しい。初めて飲んだが、これは気に入った。もう1杯飲みたくなるほどだ。
「初めて飲んだけど、好きな味がする。とても美味しいよ。そういえば気になることがあるんだ。聞いていいかな?」
「いいよ。渡くんからの質問だったらなんでも答えちゃうもん」
「そっか、それじゃあね。僕のこと好き?」
しまった、誤解を生む言い方になってしまった。頭がパニックになっていると、里子ちゃんの顔は真っ赤になっている。そして一気に飲み干して慌てるような顔つきをしている
「ごめん、そういう訳じゃなくて」
「それはデリカシーないよ!乙女だからね」
やっぱり女の子というのはさっぱり分からない。逆に僕の対応がヘタクソなだけかもしれない。自分の不甲斐なさを感じた
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