第4話 カブトムシ

里子ちゃんと予定が決まった。明日を楽しみにしているからと言って帰っていた。さっきのはなんだったろうか。一緒にいた時間は1時間もなく帰っていったけど、正直いって何をしたかったのか未だに理解が終えてない。


「帰っちゃいましたね」

「やりたいことを閃いたら、すぐどっか行っちゃう子だからいつものことだよ」

「そうですか」

「それで、どうだったんだよ!里子ちゃんについて」


純さんはニヤニヤと期待してそうな顔つきをしている。結構、歳を重ねているはずなのに、その様子は高校生のようだ。確かに容姿はすごく良いと見て分かった。でも少し行動が幼い感じもあってか、少し年齢より見た目が幼く見える。かわいいと純さんは言っていたが、確かに言っていることは間違えではない気がする


「期待に答えれるような答えじゃないですけど、今まで会ったことない子ですね」

「ほう!そうなんだ。都会だと、ああいう子は居ないの?」

「まぁ、そうですね」


中学生の頃は人のことを小馬鹿にして蹴落としたりする年頃で、僕のところにも男女問わず言ってきた。しかし、高校生になると忽然と自分と友達のことしか、みんな興味がなくなる。だから、おのずと僕を話しかける人間などは誰もいない。


「それで何を話したんだよ?」

「カブトムシを取りに行くって話でしたけど、採れるんですか?」

「採れるよ!オレ、山持っているからさ。里子ちゃんが虫採りに行っているよ」

「そうなんですか」

「カブトムシって都会だと見ないの?」


触れたり、見たりしたことは一度もない。東京の奥地にはいると少し耳にしたことがあるが、実際に見たことあるものといえばセミぐらいしか見たことない。正直、絶滅してるのではないのかというぐらい見かけない


「見たこともないですし、触れたこともないです」

「そうかぁ〜都会っ子は違うなぁ。虫取りの道具は持っているからさ準備しておくから大丈夫だよ」

「ありがとうございます」


純さんは少し照れる仕草をして玄関を出ていった。しばらくすると虫かごと虫取り網を持ってきた。道具の状態は新品に近い状態だ。


「これこれ、なんか新品に近かったわ。あとは早寝早起きすれば問題はないと思うよ。しっかり寝とけよ?」






朝4時、スマホのアラーム音で目が覚めた。眠気と気だるさを感じながら、洗面所で顔を洗って眠気を覚ました。そして部屋に戻り着替えて支度をした。準備ができて土間で靴を履き、玄関を出た。玄関前には虫取りの道具が置いてある。僕は虫取りの道具を持って里子ちゃんの家に向かった。時間は4時50分。かなり計画的に順調だと感じている。


「どうなっているんだ!?」


思わず声が出てしまった。里子ちゃんが大の字になって寝ている。このままにしていたら、問題がある。しかし自分と同い年の女の子だ。一歩でも間違えればセクハラになってしまう。少し躊躇をしながらも、肩をさすってみた。すると目が開いた。


「あ、おはよ....ちょっと待ってね」


寝起きのせいかふらふらとしている。すると、ホースの繋がった蛇口をひねった。水が勢いよく出て頭から肩までびっしょりと濡れている。心配になり、すぐにタオルを渡した。すると拭いて、安心したような表情をしていた


「顔を洗おうかって思ったけど、濡れちゃった。優しいね。渡くんって」







木がたくさん生えている林のような場所についた。カブトムシがいそうな場所だ。どこに、いるのかと周りを見回していた。そんな簡単に見つけれるようなものじゃないのかもしれない。


「ほらほら!アレみてよ!」

「すごい....たくさん居るな」


木にはカブトムシとクワガタが5匹以上いる。驚いて口から声が漏れた。たくさんいるとは全く想像していなかった。衝撃のあまり、体がうまく動かない。記念に写真を取ろうと思いスマホを取り出した


「スマホ持ってるの!?」

「もしかして、持ってないの?」

「うん、そうなの。スマホはまだダメって言うの。頭が悪くなるって言われたの」


確かに言われてみれば不必要な情報まで目が入ってしまう。何か暇を潰す時はスマホ。いつだってスマホを使っている。スマホがなければ他のこともできるかもしれない。確かに、頭の回す時間は圧倒的に減る。使わないっていうのも一つの手かもしれない。


「そのスマホで一緒に写真を撮ろうよ!」

「え、いいけど」


誰かと写真を取ることなんて今までなくて少し不慣れな気持ちになった。隣で早く早くと言ってくるが、そんなにうまくはいかない。とりあえず二人でピースをして写真を撮った。


「いい写真だね。これは思い出になるよ!」

「そうかもしれないね」

「一緒に取ろうよ!」

「僕は少し虫は慣れてないんだ」


里子ちゃんはおかしそうに笑っている。虫が苦手な自分が恥ずかしく感じる。

笑っている姿を見て、自分も頬が緩んで笑った。確かにあの写真は思い出になりそうだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る