第2話 麦わら少女

窓から差し込む明かりで目が覚めた。時計を見ると6時。台所だろうか?ガチャガチャと物音が聞こえる。気だるさ感じる体を叩き起こして着替えた。着替えていると自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。慌てて台所の方へ向かった


「おはようございます、ご飯できてますね」

「おはよう!よく寝れたような顔しているな。それより納豆は食べれるかい?」

「えぇ、大丈夫ですよ」

「良かった、それじゃあ食べよう」


いただきますと言い朝食が始まった。アジの開き、漬物などが机に置いてある。そして納豆は一つのお皿にたくさん入っている。朝食がご飯が主軸とする食事は自分の家にはない習慣で、少し物珍しさを感じる。


「ごはんを眺めて、どうしたんだよ ?もしかして朝はパン派かい」

「そうですね、だから少し珍しさを感じますね」

「ふ〜ん、都会っ子はやっぱり違うもんだな」


両親が忙しくて毎日、スーパーの半額シールの貼られたパンを食べているだけにすぎない。毎朝、買い食いに近い生活だった。何か作られたモノを食べる生活はしばらくしてない気がする。そう考えて見ると、今は立派な食事を食べてる気がした


「毎朝、惣菜パンとかの半額のヤツ食べてるだけですよ」

「あ〜、なるほどね」


純さんは少し呆れた顔をして、ボソボソと何か独り言をしている。そして、何かひらめいたような顔をして「そうだっ!」と言った


「午後、散歩をしてきなよ。ここに来てまだ1日目だろ?ここらへんのことはさっぱりだろ?案外、都会で見慣れないものがあったりするかもしれないよ」





朝ごはんの片付けをして、宿題をやっている。とても静かで気分が落ち着く。自分が部屋で作業してるときは、どことなくガヤガヤと音が聞こえてくる。でもここでは何も聞こえない。聞こえるものは、蝉の鳴き声も聞えぐらいだ。何かガヤガヤと音に気を取られることなく宿題はあっという間に終わった。その進み具合に驚いた。課題の半分以上進んでいる。時計を見ると12時、もうそろそろお昼ごはんの時間だろう。戸が開く音がした。


「お昼ごはんだよ。へぇ〜宿題かぁ、エライな! オレはやらなかったな」

「そうなんですね、どんな生徒でした?」

「ヤンチャなクソガキだったな。まぁそんな事なんてどうでもいいんだよ。メシね」


純さんは少し恥ずかしそうに頭を掻いて苦笑いしている。あとで来てねと言って部屋のふすまを閉じた。作業で散らかった筆記用具やプリントを片付つけて整え、台所に向かった。するとチャーハンが置かれていた。しかし普通のどこか違う気がする。


「なんか違いません?これ」

「納豆が入ってるんだよ。百耳は一行にしかずっていうだろ?食べればわかる」

「じゃあ、いただきます」


正直いって疑い深いが一か八かの気持ちで食べた。すると、かなり美味しかった。新しいものをしれた気分だ。僕はもう一回、口に入れた。このチャーハンと納豆の意外な組み合わせが美味しい。


「美味しいです」

「そりゃあ、美味しく作ってるんだからさ。午後、散歩行くだろ?」

「えぇ、まぁ」


純さんは台所に戻って冷蔵庫からペットボトルを取り出してきた。よいしょと言い座った。そしてペットボトルのお茶僕に差し出してきた。


「ペットボトルのお茶用意しとくからさ。熱中症になったら大変だろ?」

「助かります」

「女の子、連れてくるなよ〜? 冗談だよ」





食事を済まして外に出て散歩をしている。ジリジリとした暑さだ。遠くの地面がゆらゆらと揺れている。やはり、ビルなんてものは一つたりもない。あるのは平らな永遠に続く畑。すると畑仕事をしているおばあさんがこっちに向かってきた


「ここらへんで見ない子だね〜どこから来たんだべ?」

「東京の杉並区です」

「ほぇ〜随分なところが来たんだねぇ。あ、コレはオレが作ったきゅうりだべ。持ってきな!」


そう言っておばあさんはレジ袋にきゅうりを持ってきて差し出して来た。受け取った瞬間、どこか人の温もりを感じた。ここは優しい人が多いのかもしれない。僕はありがとうございますとペコリと一礼をして去った。





色々見て回っていてとても新鮮で楽しかった。スマホを見てみると3時になっていた。もうそろそろ、帰るにはちょうどよい頃だろう。お茶を少し飲んでバックに閉まった。すると、麦わら帽子の白いワンピースの女の子が叫んで走ってきた。


「こんにちは!君って見ない子だね。どこから来たの!? 」

「えっと東京の」

「東京!? すごいすごい! 私、里子って言うんだ!里芋の里に子どもの子って書くの。東京でしょ?ホテルに泊まっているの?」


自分と同じぐらいの女の子だろうか?すごく目をキラキラ輝かして僕を見つめている。

東京と何度も言っている。その姿は少しかわいらしくも見えた。こんなに女の子に興味を持たれたのは初めてな気がした。


「いや、違うよ。伝わらないかもしれないけど、純さんの家にいるよ」

「本当に!? 私は隣の家に住んでいるの!明日来て!」


そう言ってすごい勢いで走り去っていった。一体何が起きたのか正直、理解ができない。あの女の子はなんだろうか?少し気になるところだ。

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