21話 一色VS葉乃川

「一色くん、私と勝負しよ」

と葉乃川が言ってきた。CCBSのことだな。


「ごめん、葉乃川さん……俺は島野と戦ってみたいし……だから、申し訳ないけど……」


と一色は葉乃川の誘いを断る。すると、島野が、


「葉乃川さんと戦うといいよ。一色くんは」


「し、島野?」

と一色は島野の発言に驚く。


「だって強いし」

「そういや、葉乃川さんも昨年のクラブカーストバトルトーナメント本選出場者だったな……」

とニコニコしながら話す島野に、一色は葉乃川をみながら、タジタジになっていた。


「いや……でもな……女子と戦うのは気が引けるというか……」

と一色は苦笑いをしていた。少し間を置いた後、


「なあ……俺、ほんとに葉乃川さんと戦っていいのか?」

「私は歓迎よ」


と葉乃川は何気ないように返事する。


「手加減無しでかかってきなさい」

と葉乃川さんは堂々と言ってきたので、


「わかった……葉乃川さん、勝負しよう」

と一色は葉乃川の目を見て言った。


「と、その前に、サブツールの設定とか、必殺技の設定とか準備するから、ちょっと待ってて」

「大丈夫よ。私も一色くんと同じく、準備しようと思ってたところだから」

と一色の頼みに葉乃川は同意し、


「クリスタルスペース」と両者が言うと、両社は姿を消し、先ほど転送された仮想空間へと入っていった。


副理事長のカイが去った後、一色はクラブカーストバトルシステムの設定画面を使って調べていくうちに、この空間についての真相を知る。


副理事長と一緒にいたあの空間は水晶(クラブカーストバトルシステム)が作り出した仮想空間だったようだ。


そこで、一色はサブツールの設定といった、クラブカーストバトルシステムの設定に取りかかっていた。


そして、5分後、葉乃川、一色、両方の準備が整った。


なんか……俺と葉乃川の周りにギャラリーができていた。


俺の初試合だからか……それとも、葉乃川さん目当てか……

まぁ、そのあたりはどうでもいい。

たしか……起動方法は……クラブカーストバトルシステムの設定画面に記載されていたな。


一色は大きく息を吸い込んだ後、


「クラブカーストバトルシステム、起動!」

と叫んだ。葉乃川さんも同じく、

「クラブカーストバトルシステム、起動!」

と叫ぶ。


両者が光に包まれれ、服装が変わっていた。


一色は黒と赤のユニフォーム。楽天イーグルスのブラックユニフォームがモチーフだ。


葉乃川はというと、陸上部のユニフォーム、へそだしブルマのセパレートタイプに服装が変わっていた。


そういや、陸上のユニフォームを着ている葉乃川さんを見たのはこれが初めてか……

なんか……間近で見るとめっちゃ露出しているよな。このタイプの陸上のユニフォームって。

もしかして……ギャラリーが多いのは葉乃川さんのユニフォーム姿目当て……

いや、そんなわけないか……


「審判は私がするわ。ルールは簡単。クラブカーストバトルシステムにおけるHPがゼロになった方が負けよ」

と太田先生が言い、一色と葉乃川は頷く。


「それでは!試合開始!」


太田先生が告げると、早速、葉乃川が仕掛ける。


葉乃川の周りを葉っぱの渦で囲み、走って加速させ、突進してくる技「リーフ・カソク」を繰り出した。「ライメイ・カソク」の草属性バージョンである。


しかし、島野VS穂村で試合を観ていた一色。この技は対策済みだ。


一色は風に包まれているバットを取り出し、葉乃川が「リーフ・カソク」を発動したと同時にスイングした。同時じゃないとバットが当たらないと考えたからである。

「ライメイ・カソク」「リーフ・カソク」の弱点は、一直線にしか攻撃ができないこと。サブツールを使わない限り、左右や上下に動くこともできない。

それでも、この技は強いと俺は考えている。


なぜなのか。それは、この技のスピードである。


普通の人間じゃ躱せないほど、速いスピードで突進してくる。時速150kmぐらいか。

時速150kmはプロ野球選手の一流投手のストレート並だ。

それに加えて、加速させたスピードを活かしたパワーがこの技にはある。


左右上下に動くことができないデメリットをひっくり返すほど、

メリットの部分が強い。


ともあれ、これで突進してくる葉乃川を返り討ちだ。


と思っていた。


しかし、一色の読みは外れた。


葉乃川さんは、一色のスイングの裏をかき、サブツール「ジグザグスクエア」を発動。スイングを躱し、背後を取った。

「ライメイ・カソク」を解除させたことで、スピードは大分落ちたとはいえ、

裏を取られた。背後ががら空きだ。


葉乃川は再度、がら空きになった一色の背中に向かって、「ライメイ・カソク」で

突進してくる。


これじゃ、一色は対応が間に合わない。


島野も、穂村もそう思っていた。


「葉乃川さん!」


と一色は突進してくる葉乃川の方を振り向いて、


「タツマキスイングセンター返しバージョン!!」


と叫び、葉乃川にバットを当て、葉乃川は吹き飛ばされる。


「な……なんで……一色くんはスイングしたはず!!」

と葉乃川は技が当たらず悔しそうにしていた。


スイングはスイングでも、半スイング。

葉乃川が正面から攻めこまないと読んで、フルスイングしなかったのだ。


スイング途中にバットを止め、すぐさま葉乃川がいる方向へと振り向き、改めてスイングしたのだ。


「よくバットを止めたな。一色」

と言ってやってきたのは梶谷だった。

「あ、梶谷くん」

「おう!島野と……そして、穂村も!」

と島野に声をかけられ、笑顔になる梶谷。


「梶谷、お前なんでここに……ここG組の練習場だぞ」


不審そうに穂村は梶谷に言うと、梶谷は笑いながら


「いや~山口先生がG組の様子を観に行こうって言うからさ~」

と言っていた。


梶谷の言う通り、G組が練習しているフロアに、B2組の生徒たちが集合しており、担任の山口先生もいた。


「待て。B2組全員がいるということは……」

「元気にしているか~穂村~」

と声をかけてきたのは、B2組の光田聖だった。光田は穂村と同じ男子サッカー部所属であり、ポジションも同じFWである。


光田の登場に、穂村は嫌な顔をする。

「おいおい、なんだよ。その嫌な顔は……」

「声かけてくるなよ……」

「なんだよ。冷たいな~穂村は~」

と、冷たくあしらう穂村に、光田は冷たくあしらわれるのは関係なしに、

からかってくる。


「で、G組はどうよ。居心地いいか?」

「まぁ……クソなクラスメイト達もいるし……普通のちょっと下だな」

「クソみたいなクラスメイト?」

光田は穂村の発言に疑問を持っていた。穂村は続けて話す。

「とある女子の着替えを見ようとするクソみたいなクラスメイト達がいたんだよ」

「へぇ~そんなやつらがG組に……それは大変だな……」

光田は穂村に同情すると、

「まぁ、俺がボコボコにすると威圧したらそのクラスメイト達はビビって退散したけどな!!」

と穂村は自慢げに話すと、光田は

「退治方法が穂村らしいな……」

と苦笑いをしていた。


「でもよ……その着替えを見られそうだった女子がな……健康診断が終わった後に、下着が盗まれたらしいんだ……島野から聞いた……」

「そうなんだよね……酷い話だよ……」

と穂村は真剣な表情をして光田と梶谷に話し、島野も呟く。


「マジかよ……下着泥棒って……」

穂村と島野の発言に、梶谷と光田はドン引きしていた。少し間があいた後、

「まぁ、犯人が見つかったら、そいつをボコボコのギッタンギッタンにしてやる!!」

と穂村は鬼のような表情をして拳を手のひらに当てて決意していたので、

「暴力で解決もほどほどにね……」

と島野が穂村に忠告した。


「で、話変わるけどさ。島野と穂村って、CCBSで戦ったの?」

「ああ、戦ったよ。俺が負けた」

梶谷の質問に穂村は即答する。穂村、すぐに負けを認めるとは、思ってたより潔いやつなのかもしれない。


「梶谷の言う通りだったな……梶谷が「G組には島野がいる」と言ってた理由がわかる……戦ってみたけど、島野、こいつは強い……」

「いやいやいや、僕はそんなに強くないよ……」

と穂村は真剣な表情で梶谷に伝えると、島野は謙虚な姿勢で否定する。


「本来、CCBSの能力は、部活動の能力に比例する。だから、部活動の能力が高いと、CCBSの能力が高くなり、CCBSでのバトルでも有利に試合を進められる。だけど、島野は身体能力が低いし、陸上の実力もそれほど高くない……でも、強い。元B級の生徒に勝てる実力を持っている。それは何故だと思う?光田はわかるよな?」

「ああ、当然よ。俺は男子サッカー部のエースだからな」

「は?エースは俺だよ」

「G組に落とされるような人はエースではありません!」

「なんだとおおお??」

「お前ら喧嘩するな……」

と梶谷は穂村と光田の口論の仲裁に入った。


「ああ、俺も気になっていた。なぜだ?島野?答えろ?」

「いやいやいや……穂村くん……自分で考えてみるのがいいと思うよ」

「わかった。チート使ってるんだな。先生ーーー!!島野くんはチートつk」

「違う違う違う違う!!」

と穂村の暴走に島野は慌てて否定した。

「おい、穂村、島野を困らせるな」

と梶谷は釘を刺した後、ひと呼吸を置いて、

「じゃあ、光田、正解言ってもらえる?」

と梶谷はお願いをすると、光田は返事をして了承する。 


「それじゃ、正解を発表します。正解は……」

と光田が正解を言おうとして、穂村は緊張が走っていた。

島野の強さの秘訣は何か、気になってしょうがなかった。


「越後製菓ーーーー!!!」

と光田が笑顔で叫んだ。穂村は固まっていた。

梶谷と島野は苦笑いをしている。


「は?」

穂村はいまだに固まっている。


「いや、越後製菓なわけないでしょ……」

と穂村は完全に困惑している。すると、光田は光の速さで逃げていった。


数秒経って、

「もしかして……これ教える詐欺ってやつ……」

光田の意図を完全に理解したのか、穂村はぷつぷつと怒りが湧き、

「光田てめえええええええええ!!!」

と穂村は大激怒で光田を追いかけていった。

「おい! それは卑怯だぞ!! 光田!! 教えろ!! 

光田あああああああああ!!!!」


2人の様子の一部始終を見ていた梶谷と島野はというと、完全に呆れている様子であった。

「光田……お前ってやつは……まぁ、穂村は穂村で、卑怯も何も、島野と試合をやればわかることなんだけどな……」

と梶谷は頭を抱えていた。


「それよりも梶谷くん、一色くんと葉乃川さんの試合、観よう」

「それもそうだな……一色、あれからどうなってっかな」

と穂村と島野は、話すのをやめ、一色と葉乃川の試合を見ることにした。


そして、現在、一色と葉乃川の試合はどうなっているのか……


一色が劣勢であった。




































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