22話 一色VS葉乃川の決着
一色と葉乃川との試合は佳境を迎えていた。
一色は息を吐き、ボロボロになりながら葉乃川を見る。
葉乃川も息を吐いているものの、一色よりは疲れていないようだ……
つまり、試合の状況としては一色の劣勢である。
葉乃川さん……クラブカーストバトルトーナメント本選出場者だけあって、強い……
そういや、葉乃川さんは元C級の生徒だよな……
元C級ってことは、陸上でもそれなりの成績を残してきたに違いない……
なぜG級の生徒になったのか……わからんけど……
「タツマキスイングセンター返しバージョン」を葉乃川さんに食らわせた後、
俺は劣勢になった。
俺が投球モーションに入って、「タツマキストレート」を投げようにも、投球モーションの間に、葉乃川さんが攻めてくる。
で、俺が、サブツール「シールド」を使用して「シールド」の能力の1つ、「全体シールド」を使って、自分の範囲全てをガードすることで、「ジグザグスクエア」対策を試みるも、「リーフ・カソク」で真正面から力強いスピードで攻めてきて、全体シールドが破られ、葉乃川さんの攻撃を食らった。
ここで、サブツール「シールド」について説明しておくと、「通常シールド」
「全体シールド」「集中シールド」の3種類のシールドを使い分けることができる。
「通常シールド」は、その名の通り、普通のシールドであり、大きさとしては、プレイヤーの身長分は守ってくれる。シールドの耐久性は「集中シールド」「全体シールド」の中間ほど。ただ、シールドを出した方向以外の攻撃は守ってくれない。
「全体シールド」は、自分の周り……全範囲を守ってくれる。
しかし、シールドの耐久性が「集中シールド」「通常シールド」よりも劣っているのが弱点である。
「集中シールド」は腕、心臓、脚といった、プレイヤーが指定した特定の部分を守ってくれるシールドである。そのため、「通常シールド」「全体シールド」よりも、攻撃を守る範囲は狭まるものの、耐久性は「通常シールド」「全体シールド」よりも高い。
葉乃川さんからの攻撃を食らい、怯んだ後、「クラウチングロケットスタート」を発動。
葉乃川さんがクラウチングスタートの構えをすると、俺の近くの地面から木が生えてきて、その生えてきた木が、俺の足元を縛り付け、拘束した。
そして、葉乃川さんがクラウチングスタートの構えからスタートダッシュし、身動きの取れない俺はまたしても葉乃川の攻撃をくらった。
攻撃を食らった俺は、地面をゴロゴロと転がり込み、隙だらけの状態になったことを、葉乃川は見逃さなかった。
速攻……
葉乃川さんの……覚醒技だ……
「覚醒技! 発動!!」
葉乃川が叫ぶと、地面から大量の木生えてきて、一色を襲い、足元だけでなく、
腕も拘束した。
完全に身動きが取れない……まずい。
一色が拘束されている間に葉乃川はクラウチングスタートの構えをしていた。
そして、木の葉の渦を自身の周囲に発生させていた。
ああ、これは完全にまずいわ……
「ウッドスターインパクト!」
葉乃川が木の葉の渦を自身の周囲に発生させた状態から。クラウチングスタートで、光の速さで接近。真正面から攻撃してきた。
サブツール「ビックウォール」と「通常シールド」でCCBSの弱点の1つである心臓を防ごうとするが葉乃川さんの
パワーに押し切られそうだ……これはマジでヤバい……
一色の集中シールドが破られると、葉乃川のパワーに押し切られ、吹き飛ばされた。
地面にゴロゴロと転がり、うつぶせに倒れた。
で、今の至る。
「さすが葉乃川さんだね。必殺技は2つ、サブツールは1つしか所持していないけど、自身の身体能力と陸上能力の高さをふんだんに活かして戦っている。
これは一色くん厳しいだろうなぁ……」
と島野は今の状況を厳しそうな表情をして言った。
「いや、キツかそうが劣勢だろうが、一色は諦めてなさそうだよ」
と梶谷は一色の方を見てフォローする。
何とか耐えた……耐えたことがキセキというべきか……
かなりキツイ……一度でも攻撃食らったら今度こそ敗北決定だ……
CCBSが強制解除された時がHPゼロの合図……敗北が決定する。
どうする……何か手はあるか……
一色は疲れながらも考え考え考え、策を練っていた。
「まだ……諦めていないのね……一色くん……」
葉乃川は一色の目を見る。一色の目は諦めていない……そんなオーラを感じていた。
「でも……もう終わりね……」
葉乃川はクラウチングスタートの構えをした。
これは……
一色は葉乃川の行動を見て確信した。
勝てる……と。
一色は葉乃川がいる方向に向かって走り出した。
「一色くんが走った……これは……ちょっと意外だな……」
「たしかに……何か策があるのか……」
梶谷と島野が一色の行動に驚く。
走ってきても無駄よ。だって、「クラウチングロケットスタート」の時に地面に出てくる木は、確実に足元を拘束する、追跡機能を持っている。
立ち止まっていても、動いても、足元の拘束は確実。
無駄なあがきだったわね。
スタートの準備はできた。私の勝ちよ……
そこで、葉乃川は異変に気付く。
「あれ……私に力が……」
「俺の勝ちだ」
「え?」
一色の声に葉乃川は顔を上げる。一色が目の前にいる。
「え?なんで……一色くんが目の前n」
と葉乃川が驚いたのと同時に一色は葉乃川の腕を掴むと、
勢いよく振り向き、葉乃川を投げた。
「しまった……体制が……完全に崩れて……」
と葉乃川が思っていると、
一色は素早くピッチングモーションへと移り、
必殺技「タツマキストレートクイックモーションver.」を投げた。
タツマキを身にまとったボールがCCBSの弱電でもある葉乃川の心臓を襲う。
そして、「タツマキストレート」を食らった葉乃川は、「タツマキストレート」の上昇軌道に伴い、葉乃川は勢いよく空中へと舞い、飛ばされた。
「た、体制が……」
「やはり……空中が苦手だったか……」
と空中で焦っている葉乃川をみて、一色は思っていた。
同じ陸上部の島野くんが空中から攻撃を仕掛けたのに対し、
葉乃川は地上戦を主として戦ったり、攻撃を仕掛けたりしていた。
覚醒技を発動した時、俺に必殺技を食らった後の時も、「ジグザグスクエア」を使って上方向に移動し、上空から攻めていいものを、葉乃川さんは真正面から攻めた。
最初の方で必殺技の軌道を変えた時も、上方向ではなく、横方向から後ろ方向へ軌道を変えたのだった。
そして、俺は仮説を立てた。葉乃川は空中戦が苦手ということなのかもしれないということを。
そう考えた俺は、何とか空中戦に持ってこれないかと考えた。
その結果が俺の……今の行動だ……
「そうか……葉乃川さんの隙を付けたのは、サブツール『必殺技無効』を使って、
葉乃川さんの『クラウチングロケットスタート』を無効化させたからだよ……」
島野の言う通りである。
一色が持ってた最後のサブツール「必殺技無効」を使って、
葉乃川の「クラウチングロケットスタート」を無効化させた。
『必殺技無効』は1試合につき1回、1つの技に対してしか使えないサブツール。
さらに、その名の通り、覚醒技、サブツールに対しては無効化できないサブツールなのである。
そして、必殺技「フィールディング」で葉乃川の腕を持ち、思いっきり振り向いて投げたのだ。
これで決める。
真剣な表情をした一色は、タツマキが纏っているバットを取り出し、
「タツマキスイングセンター返しver.」によって、タツマキが纏っているバット
スイングした。CCBSの弱点でもある葉乃川の頭にクリティカルヒット。
葉乃川は一色の攻撃の勢いに負け、地面を転がっていった。
「終わりだ……葉乃川さん」
一色が言うと、葉乃川がCCBS強制解除された……よって、葉乃川の敗北、一色の勝利が決まった瞬間でもあった。
会場が静まり返っていた。
「か、勝ったよ……葉乃川さんに……勝ったよ。すごいよ……一色くん」
「……昨年のクラブカーストバトルトーナメント本選出場者の葉乃川に勝つとは……これは6月の最終予選が楽しみだな」
島野と梶谷は笑顔になっていた。
「勝者、一色くん!」と太田先生がコールすると、周りがどよめいていた。
仮にも葉乃川は、元Cランク、そして昨年のクラブカーストバトルトーナメント本選出場者である。
その葉乃川を、一色は倒したのである。
しかも、一色は今日、初めてCCBSというものに触れた。
その一色が、葉乃川を倒したのである。大金星だ。周囲が動揺するのも不思議ではないのだ。
「ま……負けた……私が……負け……」
葉乃川が呆然として座り込んでいた。勝てたと思ってた。まさか負けるなんて……
しかも、今日、初めてCCBSに触れた一色くんに……
悔しさと屈辱でいっぱいだった。
そんな葉乃川のもとに、一色はやってきて、
「対戦、ありがとうございました」
と声をかけた。
一色から声をかけられたその時、葉乃川は、
試合前に送られてきたあるメールを思い出していた。
あのメール……あのメールの……命令を……守れなかった……
逃げなきゃ……逃げなきゃ……
葉乃川は震えていた。
一色は不思議そうに思い
「ど、どうした? 葉乃川さん?」
と再度声をかけた。そして、
「だ、大丈夫……私の方こそ、対戦ありがとう。強かったわ……一色くん」
と葉乃川は動揺しながら走って逃げていった。
一色は不思議そうな表情で走り去っていく葉乃川をみていた。
すると、島野と梶谷がやってきて、
「葉乃川さんの覚醒技、よく耐えたな。一色」
「ま、まぁ、何とか……ね。投手をする上で培ったスタミナのおかげ……かな?」
「サブツール『必殺技無効』の使用がナイスタイミングだったね。勝利、おめでとう」
と島野と梶谷に褒められ、一色は照れていた。
「でも、葉乃川さん、強かったね……さすが元Cランクで昨年のCCBTの本選出場者……」
「葉乃川さんは1年生ながら関東大会に出場するぐらいの実力を持っているからね」
「それマジか島野……どうりでCCBSの能力が高いわけだ……」
と一色は島野の発言を聞いて納得していた。
こうして、CCBSの授業は終了した。
その後、葉乃川さんはというと、CCBSの授業終了ギリギリに、2年G組の練習場に戻ってきたけど、覇気のない様子であった。
葉乃川さんの様子が何を示しているのか、一色には知る余地がなかった。
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