19話 副理事長カイ
この場に残った太田先生と一色。
太田先生は一色にあるものを渡した。
そう、CCBSだ。
「これが、CCBSよ」
これがCCBS……
思ってたのと違った。
なんか、CCBSってクラブカーストバトルシステムの略だから、
システム=機械だと考え、
機械のかたまりみたいなものと思っていたから、違った。
水晶であった。
システムとは……一色はポカーンとしていた。
「クラブカーストバトルシステムといいつつ、実物は水晶なんですね……これはちょっと意外……」
と一色は言葉を濁していた。
「そういや、これどうやって作ったんですか?」
「実は、私もよくわからないんだよね。で、この水晶は理事長が渡されたの。噂によると、この学校と連携している研究機関がね。この水晶を作成しているとかなんとか……」
と太田先生は苦い顔をしながら言う。
「まずは、この水晶に触れてみて」
と太田先生に言われたので、一色は、箱に入っている水晶に触れた。
すると、水晶が一色の胸に入っていった。一色は驚く。
「いや、水晶が俺の胸に入ってきたんですけd」
と一色が太田先生に話している途中で、周りが光に包まれ、
とある場所へと転送された。
そのとある場所とは、何もない、真っ平な空間。
そして
「一色颯佑くん、私の声が聞こえておるか……」
と声がした。しかし、誰かいる様子でもない。
「いや、聞こえてるけど、一体誰だよ。この声は……」
と言うと、一色の目の前に、とある女性が姿を現した。
その女性は幼く、小学生のような見た目をしていた。
「誰とは失礼じゃな。私は山翔海高校の副理事長だというのに……」
「ふ、副理事長……」
と一色は言うと、空を見上げる。
「ほう、君の属性は「風」のようじゃな」
「か、風……」
「クラブカーストバトルシステムには10つの属性があってね。炎、水、草、雷、土、光、闇、氷、風。そして、無の10の属性よ」
「どうして俺の属性が風だってわかったんですか……」
一色は謎の女性に聞いてみる。すると、
「空の色が属性の判定になっているのじゃ。赤色だと炎、青だと水、白だと風……
とこんな感じでな。」
と謎の女性は答えた。
「というわけで、属性判定は終わりじゃ。ここで少し話をしようか」
と謎の女性は座ってあぐらをかいた。一色も動揺しながらも、ぺこりと頭を下げて座る。
「ずっと気になってたんですが、あなたの名前は……」
「私の名前?……私の名前はカイ・ショウじゃ」
カイ・ショウ? 甲斐翔って字なのかな?
「カイさんの苗字って、ソフトバンクホークスの甲斐選手と同じ苗字なんですか?」
「違う違う!カイはカタカナじゃ。何ならショウもカタカナじゃ!」
「え?ってことは海外の方……」
「それも違う違う! 私は異世界の人間じゃ!」
とカイは大胆に暴露する。一色はカイの暴露に固まる。
「い、異世界?」
「何だ、知らなかったのか。私は異世界から来た人間だぞ」
「い、異世界?」
一色は同じ言葉を繰り返して言った。一色は状況が理解できない様子だ。
いや、冷静になれ……これは何かの間違い。大体、異世界の人間なんて冗談に決まってる。
一色はそう考えていると、
「ここで、一色くんの考えを当ててみようか……
『こんなの冗談だ!異世界の人間なんて、何かの間違いだ!よう実で山内が復学するぐらいあり得ない!』だろ?」
よう実の山内のくだりはあっていないけど、冗談であること、何かの間違いであることは合っていた。
「いや、別にそこまでは……って、カイさんってよう実知ってるんですね……」
「知ってるも何も、よう実は君の好きなライトノベルじゃろ? 推しキャラはたしか軽井沢恵とか言っていたような……」
「え!? なんで俺がよう実好きなこと知ってるんですか!」
「知ってるも何も、Vやねん高校野球の一色くんの記事を読んだからね」
と一色の疑問にカイが答える。
お前も……Vやねん高校野球読んでるんかい!
一色も苦笑いしていた。
「それじゃ、私が異世界の人間であることを証明するかね」
とカイは立ち上がった。どうやって証明するんだろ……
すると、カイの手から魔導書が出てきて、呪文を唱えていた。
日本語じゃない……英語でもない……別の言葉……
何の言語だろうか……
そして、カイが手を前に出し、叫び出すと、地面から炎が噴き出してきた。
一色は
「うわ!!」
と声を上げて驚く。
すると、地面から炎だけでなく、水も、氷の塊も噴き出していた。
カイが一色にはわからない言語で叫ぶと、炎や水、氷の塊が地面から噴き出されなくなった。
一色は唖然とした表情をしていた。
「これはマジックでも、クラブカーストバトルシステムの能力でもない。私自身が、異世界で培ってきた能力だ。どうだ? 信じて貰えたか?」
とカイがドヤ顔で言ってきたので、一色は唖然としながらもパチパチと拍手をしていた。
「カイさんが唱えていた言語ってもしかして……」
「そう。異世界の言語だ」
と一色の質問に、カイは答える。
「異世界の言語を日本語に翻訳して聞こえさすよう、私が一色くんに魔法をかけたんじゃ!」
とカイはまたしてもドヤ顔をする。
なるほど……カイさんが日本語で話したのではなく、カイさんが発する異世界の言語を日本語に聞こえるよう、俺に魔法をかけたってことか。
で、さっき、俺が日本語に聞こえなかったのは、その魔法を解除したから。
ってことなのかな。
「あ、でも翻訳魔法、私が異世界の人間であることを証明するためにさっき解除したわ。聞き覚えのない言語が聞こえたじゃろ? すまんな! あれは私たちが住んでいた世界の言語なんじゃ!」
とカイは謝った。
さっき、カイが魔法を唱えている間、スマホの翻訳機能をオンにしていたが……
「言語が不明で翻訳できません」と表示された。
この世界にある言語、全てに対応しているんだけどな。このスマホに搭載されている翻訳機能。
彼女が言っていることは本当のようだな。
「私が異世界の人間だと、信じて貰えたか?」
「はい、まぁ……」
と一色は返事する。すると、
「それじゃ、異世界の人間だと証明したことだし、私は帰るとするかのう……」
とカイは体を伸ばした後、
「あ、最後にこれを教えとかないとな」
とカイはあることを思い出した。
「この空間を再度出現させる方法は、2つある。1つ目は自身が所持している、所持する予定の水晶に触れること。もう1つ目は、胸に手を3秒ほど当てて、『クリスタルスペース』と叫ぶことじゃ!」
「それと、必殺技とサブツールの設定が可能じゃ。『カスタマイズ』と叫ぶと、一色くんの目の前に画面が表示され、必殺技とサブツールの設定ができる」
「最後に、この空間から出る方法。それは胸に手を3秒当てて『バックアウト』と叫ぶ。それだけじゃ」
とカイは説明した後、
「それじゃ!」
と一色に笑顔で言い、消えていった。
カイさん……まさか副理事長が異世界の人間だったとは……
そう思いながら、カイが去った後、一色は必殺技の設定を行なっていた。
場面は変わって、副理事長室。
ノックして、とある人物が入ってきた。
そう、彼こそが理事長のヤマである。
「お疲れさまです。カイさん」
「おう、お疲れのう、ヤマ」
「……一色くんが作り出した仮想空間の中に侵入してましたよね」
「侵入ってなんじゃ人聞きの悪い。侵入したんじゃなくて遊びに行ったのじゃ」
とカイはプンプンと怒っていた。ヤマは自由奔放なカイに呆れているようだった。
「……というか、ワシが一色くんのところに行ったの、お前、知っておったんじゃな……まさか、追跡魔法を使って!!」
「正解です」
「はーーー!!マジか!!ワシの行動パターンが把握されとる!!」
「カイさんの護衛任務が私の役割ではありますからね」
とヤマは言う。カイはというと、手に顔を当ててうなだれていた。
「しかし、CCBSの設定方法なんて、あなたのホログラムが説明してくださるのに、わざわざ停止魔法使ってあなたのホログラムを停止してまで、一色くんに属性や何やら丁寧に説明するなんて……なんか意外ですね」
「丁寧は言い過ぎじゃ。ざっくりとしか説明しとらん!!」
とカイはツンツンとした表情で言う。
「ま、話はここまでにして、仕事しますよ仕事」
「そうじゃな。生徒の様子でも見に行くとするかのぅ」
「生徒の様子も大事ですが、まずは事務仕事頑張ってください」
「ええええ!!!」
とヤマの発言にカイはガッカリとした表情をする。
「私も手伝いますから。事務仕事頑張りましょ」
とヤマが言って手を差し伸べ、カイとヤマの2人は事務仕事に取り組むのだった。
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