18話 2年SA組

お昼休みとなり、一色が島野、穂村に食堂に一緒に行こうと誘う。


穂村は一色に誘いにOKを出したが、

島野が葉乃川と何か話しているようだった。



まさか、葉乃川さんの下着が盗まれるとはな。


「一体、誰だよな。犯人」

穂村が不満そうに一色に言う。


「下着だけじゃない。財布の中身のお金も盗まれたらしいからな。葉乃川さん」

「マジかよ!!やってることエゲツねぇな」

穂村は不満をさらに爆発させていた。


「俺も許せねぇわ。窃盗だからな。窃盗。警察案件だわ」

一色は穂村に同意していた。


すると、島野がお待たせと言って、一色と穂村の元へとやってきたので、3人は食堂に向かうことにした。


「葉乃川さんとは何を話してきたんだ?」

「話してたってか、財布の中のお金も盗まれてたから、僕がお金を渡してたの」

あぁ〜なるほど。そういうことか。一色は納得した表情で頷く。

「しかし、許せねぇな。一体誰が……」

「わからない。太田先生にも相談したんだけど……どうなることやら……」

「警察案件だろこんなの!!」

穂村がめちゃくちゃ怒ってる。当たり前だと思う。一色は穂村の意見に同意して頷く。


「そういえば、僕のクラブカーストバトルシステムの戦績、知ってたの驚いたよ……」

「今日、CCBS(クラブカーストバトルシステム)を使った授業やるんだろ。

だから、CCBSについてのある程度のことは知っておこうかなと。で、CCBSの知識とか、戦績とか調べておこうかなって」

「ほうほう。なるほどね」

一色の考えに島野と穂村は関心していた。

「じゃあ、CCBSについて説明できる?」

「CCBSによって、身体能力を大幅に向上させ、部活動に関するプレーや活動を必殺技に変えることができる。

必殺技は4つ、覚醒技が1つ。必殺技の他にサブツールというものを3つ入れることができる。

そして、CCBSにおける必殺技の威力や能力は部活動に関する能力に比例する。

つまり、部活動における能力が高ければ高いほど、CCBSにおける必殺技の能力や威力は高くなる」

「おお、正解だ。すごいよ。ここまで知ってるとは……」

島野に褒められて、一色は嬉しくなった。

「そして、昨年のクラブカーストバトルトーナメント、G組生徒としては初となる本戦出場できたのが、島野くんなんでしょ」

「ははは、その通りでございます。初戦敗退だったけど……」

と島野は謙虚に言うと

「3学年生徒合計で1860名いて、その中でクラブカーストバトルトーナメントの本戦に出場できるのが256名。約13%の確率と考えると、本戦に出場できるだけでもすごいと思うよ!!」

と一色が島野をフォローする。

島野はありがとうと返す。


「で、俺は気になったことがあってね」

「気になったこと?」

島野は首を傾げる。

「CCBSの能力は部活動の能力に比例するんだろ。で、言いにくいことではあるのだが、島野のCCBSの能力はあまり高くない。でも、クラブカーストバトルトーナメントで本選に出場できた。一体どんなカラクリを使ったのか気になって……」

「ああ、それ俺も気になってたわ……そういや、梶谷が言ってたんだよな。『G組には島野がいる。CCBSの大会で勝ちたかったら彼から学ぶといい』とね」

と一色の疑問に穂村も同意する。

「梶谷くんがそんなことを……なんか、照れるな……」

島野は照れ笑いをする。

「梶谷のこと、知ってるのか? 島野?」

「うん。まぁね」

「おいおい、一色、梶谷のこと知らない人は2年生にはいねぇよ」

穂村が呆れると、

「え?どういうこと?」

一色は首を傾げる。

「梶谷くんは1年生にしてクラブカーストバトルトーナメントでベスト16に入った、いわゆる強者だよ。しかもイケメンで学力優秀、B組だけど、彼の実力を考えたらA組にいてもおかしくない生徒だよ」

「マジかよ。それは知らなかったわ……」

「おいおい。調べ足りてねぇな」

「梶谷ってすごいやつだったんだな……」

梶谷が実力の高さに驚く。

そういや、俺の直球を特大のセンターフライにしてたよな……


投手専門なのにあそこまで打球を飛ばせるとなると、打者としての実力も高いんだろうな……


一色はそう感じながら、穂村、島野と一緒に歩いて食堂へと向かっていった。



午後はCCBSの授業だ。


ということで、指定された場所に向かったのだが、


「人多いな……」


一色はフロアにいる人の多さに驚きを隠せなかった。


鉄筋コンクリートで

ここはCCBSの練習するための施設。

CCBS練習場だ。

まぁ、そのまんまだな。


そして、ここは第2フロア。

1学年(620人)まるまる入ることのできるフロアだ。

大小合わせて全60フロアもあるという、

まぁ、そんな施設だ。


前の学校は1学年合わせて300人ぐらいだったのだが、この学校はその倍である。


なので人の多さに圧倒されている。


なぜこんなに第2フロアに2年生が大集合してるかというと、

CCBSの練習の前に2年生の全体集会があるからである。


2年生が全員、整列が終わり、全体集会がスタートした。


全体集会は学年主任とかが学校のこととか、規則のこととか、その他諸々話し、

スムーズに事が進んでいた。


そして、学年主任の話が終わると、先生が何やら包装されたものを持ってきていた。



「これから、総合ランキング学年別トップ10を発表する。発表されたものは前に出るように」

と告げられた。


なるほど、表彰か。ってことは、包装されたものは表彰する際に渡すもの?なのか。


「総合ランキングでは、部活動成績、学業成績、素行、CCBSを使用した大会での成績を総合して順位を付けている。その上位10名を今から発表する。上位10名の生徒を見習って精進するように」


ああ、俺には縁がないやつですね。


「2年生総合ランキング10位 2年SA組 男子ボクシング部 神戸大勢」

「9位 2年SA組 ダンス部 紅川美月」

「8位 2年SA組 女子剣道部 新堂清香」

「7位 2年SA組 男子空手部 浅野鉄心」

「6位 2年SA組 男子柔道部 小郷新一郎」

「5位 2年B2組 男子硬式野球部 梶谷源」


梶谷が5位??

一色は驚いていた。


しかし、2年SA組の生徒が上位を独占してるな……

そりゃそうか。2年SA組の生徒になるためには、学年総合ランキングで上位に入ることが絶対条件なのだから。



「4位 2年SA組 音楽部 音原響介」 


「3位 2年SA組 男子フィギュアスケート部 氷橋学」


「2位 2年SA組 男子バスケ部 羽馬巧也」


「1位 2年SA組 男子ハンドボール部 水森空」


「以上の上位10名は記念品を渡すので、私の元へと来るように」


と学年主任が言うと、呼ばれた生徒はゾロゾロと前に並び始める。


1位の名前は水森空……男子ハンドボール部……


一色はあることが気になって隣にいた島野に話しかける。


「なぁ……水森空って水森さんの……」

「そうだよ。双子の姉弟」

「マジかよ! 水森さんって双子だったんだ……」

「水森葵さんが双子の姉で水森空くんが双子の弟」

「そうなんだ……」

と前にいる葵のことを見る。


男女の双子って珍しいよな……



一色はそう思っていた。


すると、

「あと、今いるトップ10にいる人達は、全員、昨年のクラブカーストバトルトーナメントでベスト16までには進出している。

3学年合同で行われるクラブカーストバトルトーナメントで、ベスト16のうち、1年生10人を占めるのは異例のことだとか」

と島野は言うと、

「マジかよ……」

と一色は驚いていた。

つまり、今年の2年生は豊作ってことか……



学年集会も終わり、2年G組はCCBSの練習のため、別のフロアに移動していた。


フロア名は第15フロア。普通の体育館ぐらいの広さはある。

この普通の体育館ぐらいの広さのフロアが

全クラス分合わせて48個ある。


ここで疑問が残る。


60近くもフロアがあって、立地に割り食ってるのではないかと。体育館レベルの広さの部屋を何個も用意できるわけないだろと。


この建物にカラクリがある。

中の部屋は仮想空間となってある。

この仮想空間は現実世界のお偉いさんたちが作ったとのこと。


今いる部屋は現実世界とは何も変わらない建物に見えるが、仮想空間なのだ。


そんなフロアにやってきた俺を含めた2年G組の生徒達。


担任の太田先生は2年G組の生徒たちを集合させて、

あることを告げる。


「今月下旬、クラブカーストバトルトーナメントの第1予選がスタートします」

と。


真剣な表情をするクラスメイトたち。

「とうとう第1予選か……」

島野がそう呟く。

「あ!そういえば、一色くんってクラブカーストバトルトーナメントの予選って知ってる?」

太田先生が言うと、

「予選があるというのは知ってたんですけど……予選で何をやるのかはまだ……」

「わかった。じゃあ私から改めて説明するね」

と太田先生が説明する。


「クラブカーストバトルトーナメントは3学年合わせて256人しか本選に出場できない、CCBSを使用したバトル大会よ」

「加えて、クラブカーストバトルトーナメントは学校内で最も大きな行事でもあるんだよ」

と島野が付け加えて説明する。

「あと、これからクラブカーストバトルトーナメントはCCBTを略させてもらうね」

と太田先生は一色に許可を取り、一色は了承した。


「CCBTの予選は第3回行われるわ。第1、第2、第3予選とね」


「で、残念だけど、一色くんは第1予選には出場できないわ」


「え?」

太田先生の発言に一色は驚く。


「第1予選のエントリー締め切りが3月中旬で、エントリー条件が「締め切り日までにこの学校の生徒であること」だったの。

一色くんは4月の2年生の始業式に転校してきたでしょ。この学校の生徒になったのは4月から。だから、3月中は明乃森の生徒だった一色くんは、第1予選にエントリーできなかったのよ。同様に、今年の1年生も第1予選には参加しないの」

と太田先生は説明した。


「で、一色くんが参加できるのは第2予選から。

で、第2予選が5月の下旬に行われて、内容は体育祭よ」


体育祭?? 体育祭が第2予選の内容なのか??


「体育祭の件に関しては第1予選が終わったらしっかり説明するね」

と太田先生は優しく言う。


「第3予選は6月下旬に行われる。これも詳細は時期が近くなったら教えるわ」


「第1予選で64人、第2予選で32人、第3予選で144人、本選出場者を決めるわ」


64人……32人……144人……あれ?256人に届かなくね?


「あ、言い忘れていたけど、第1予選の前の時点で総合ランキングトップ16の人はCCBT予選免除となり、CCBTの本選出場決定となります」


と太田先生が付け加えて説明した。


なるほど……一色は納得した。


「以上がCCBTについての説明だけど、何か質問ある?」

「いえ、今のところは特に……」

と一色は太田先生に言う。


「俺は質問あるわ」

「何でしょう。穂村くん」

「第1予選の内容を教えてくれ」

と穂村は太田先生に言った。すると、


「それはこれから言う予定だったわ」

と太田先生は答える。そして、少し間を置いた後、


「第1予選の内容は、ループシックスバトルロワイヤルよ」

「ループシックスバトルロワイヤル?」

クラスメイトは全員首を傾げた。


「参加者は2・3年生の1224人。8人1組のグループを作り、CCBSを使用したバトルロワイヤルを行ってもらう。最後まで残った1人が決勝に進出」

「つまり、1224人から153人まで減らすってことだな……」

「そういうことだね。」

と穂村の考えに太田先生は頷く。

「そして、153人から、7人〜8人1組のグループを作り、バトルロワイヤルを行ってもらう。

最後まで残った1人が本選に出場が決定。これで、本選出場人数が19人」

「次に、先ほどのバトルロワイヤルで負けた134人からまた8人〜9人1組のグループを作り、バトルロワイヤルを行う。そして、先ほどと同様、最後まで残った1人が本選に出場。

これで、16人が本選に出場決定。現在、35人が本選に出場決定」

「次に、先ほどのバトルロワイヤルで負けた99人からまた8人〜9人1組のグループを作り、バトルロワイヤルを行う。これも先ほどと同様、最後まで残った1人が本選に出場。これで12人が本選出場決定。現在、47人が本選に出場決定」

「次に、先ほどのバトルロワイヤルで、負けた87人からまた7人〜8人1組のグループを作り、最後まで残った1人。11人が本選出場決定」

「最後に、76人先ほどのバトルロワイヤルで、負けた76人から12人〜13人1組のグループを作り、最後まで残った1人。6人が本選に出場決定。これで64人の本選出場者が決定するのよね」


と太田先生は説明した。


しかし、第1予選の内容……思っていた以上に過酷だな……

最大6回は試合することになるし、最終戦は8人より多い12人でのバトルロワイヤルとなる。


そして、何より……


「これ、初戦がかなり重要になってくるな」

穂村がそう考える。

「そうね。初戦で8人のうちの1人に残らなかったら即終了だからね」

と太田先生が同意する。


「最大6戦戦うとなると、体力にも気を使わないといけないですね」

と島野は考えると、

「第1予選は1日のうちに行われるから、体力配分も考えないといけないのは、その通りね」

と太田先生が同意する。


「と、第1予選の内容についてはこんな感じだけど、他に何か質問はある人いる?」


と太田先生は生徒に投げかけるも、

特に何もなしといった感じであった。


「それじゃ、ミーティングはここまでにして、

CCBSの練習するよ。あ、あと一色くんはCCBSを渡すからここに残るように」


と、太田先生がそう言い、一色以外の2年G組の生徒たちは、練習するために解散した。














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