7話 生徒会室
翌日。
一色は、1年SA組の教室の扉をそっーーーと開けて、中に入っていた。
すでにクラスメイトが数人いた。
一色はどうも……っと小声で言った後、自分の椅子に着席した。
クラスとメイトが俺の方を観てひそひそと話している。
当たり前だよな……硬式野球部が盛大にやらかしたんだもんなぁ……
教室内には人が増えてきた。
相変わらず俺に対する痛い視線を感じる……
特に女性陣からの痛い視線が……
俺はやっていないのだがな……硬式野球部員の大多数が犯罪を犯したからな……
窃盗に盗撮……盗撮動画のインターネットへの流出……
派手にヤバいことしているからな……
白い目で見られてもしょうがないとは思う。
と、一色が肩身の狭い思いをしていると、
「おう! 颯佑! 久しぶり!」
「む、武良!」
友人である武良が一色のもとにやってきた。
一色は声をかけてくれて安堵したのか、嬉しそうな表情をしていた。
「1週間、何やってんだよ」
「いや、別に……ただ単にリフレッシュしてただけだよ~」
と一色は頭を掻きながらそう答える。
そうこうしているうちに、神崎と宮橋がやってきた。
あ、ヤバい……宮橋さんはあの事件の被害者なんだ……
「おはような! 颯佑!」
神崎は声をかける。一色は「おう」と返すと同時に、
「おはよう、一色くん」
と宮橋さんも声をかけてきた。一色は宮橋さんが声をかけてくるのが意外だったのか
「あ、mや橋さん!」
「な、なによその声!!」
「いや……その……」
と変な声が出てしまった。一色の行動を、宮橋は笑っていると、一色は完全にあたふたしていた。
「あ、あのさ……」
「ん?どうした?一色くん?」
と宮橋は一色を不思議そうに見つめる。一色に緊張が走る。
「す……すみませんでした!!」
「きゅ、急にどうしたのよ!!」
と一色が謝ったことに宮橋は驚いていたようだった。周りがざわつき始める。
「そ……その……あの事件のことで……宮橋さん、傷ついていないか……すごい心配で……だから……謝りたいと思って……」
と一色は申し訳なさそうな表情に言う。一色の謝罪の後、少し間を開けた後、
「大丈夫よ」
「え?」
と宮橋の返事に一色は顔をあげて驚く。
「一色くんがあの事件に関与していないのは私、知ってるし、あなたが責任感じて謝る必要はないわ」
「いや……でも……俺、硬式野球部だし……」
「被害者である明美ちゃんが謝らなくていいって言ってるんだ。あまり気負うなよ」
と宮橋の発言に対して、神崎がフォローに入った。
「あ、ありがとう……宮橋さん……」
と一色は感謝していた。
「そういや、一色はどうするの? 野球部、活動停止処分食らったんでしょ?」
と宮橋は質問してきた。
「じ、実は……終業式が終わったら、転校しようと思ってて……」
「ま、マジ?」
と一色が答えると、一色の友人たちは驚く。
「ど、どこの高校に……?」
「宮城県の野球の強豪校だと、東北学園とか?」
「いや、それがまだ決まってないんだよね~」
「そ、そうなのか……」
と武良と神崎は興味津々に一色に聞いてきた。
「ということは、一色君とはお別れなのね……」
と宮橋さんは寂しそうにしていると、
「ま、俺がいるから大丈夫だよ、明美ちゃん」
「何それキモイ」
「ちょっと!!それはないよ!!明美ちゃん!!」
と神崎がフォローしたが、宮橋は一蹴した。
「別の高校に行っても頑張れよ。一色」
「もちろん」
と武良がエールを送り、一色が頷いた。
1限が終わった休憩時間に、守屋というクラスメイトが一色の元へとやってくる。
守屋は生徒会に所属していて、宮橋の親友だ。
「ちょっと話があるから、放課後、時間取れる?」
「……話って……あの事件のことについてか?」
一色がそう言うと、守屋がコクリと頷く。
「場所は生徒会室。あの事件について、生徒会長が事態を色々と把握したいんだってさ」
「わかった。放課後ね。体育館に集合ね。」
一色は了承した。守屋はそう伝えると
自分の席へと戻っていった。
放課後……ね。守屋のあの顔……かなり不快そうな顔してたよな。
そりゃそうだよな。この高校の硬式野球部は犯罪集団なんだもんな。
一色はシャーペンを見つめながら思う。
そして、昼休み、午後の授業とあっという間に過ぎていった。
時間が過ぎるのは早い。
放課後。一色は生徒会室前にやってきた。
ドアノブを掴み、
「失礼します……」
と生徒会室へと入ったのた。生徒会室には、守屋しかいなかった。
「来たね。一色くん」
「ま、来たよ」
「ちょっと生徒会の方々が遅れるってさっき連絡が……」
「りょーかい」
と一色は、守屋が座っている方の反対側の席に座った。
生徒会長と話をするのは初めてだな……
一色が天井を見上げていると、
「一色ってさ……」
「ん?」
「あの事件に、本当に関わっていないの?」
「ああ、本当に関わっていない」
一色ははっきりと守屋に伝える。
「本当なの?」
「本当だ。俺を疑っているのか?」
「そうよ。だって、この事件には、監督コーチ3人、
部員60人中58人が関与してる……どうして……どうして……」
と守屋はプルプルと震えた後、
「一色くんは関与していない2人のうちの1人なのよ!!」
と守屋はブチぎれた。一色は一瞬ビクッとしながらも、
「おい!!!それは俺に対して失礼だろ!!」
とツッコミした。すると、守屋は続けて、
「だって……一色くんは萌えアニメが大好きで、アニメキャラの水着姿とか……
アニメキャラの裸を見てウハウハしてたり……」
「ちょっと待て。俺、そんなやつだった?」
と一色は同級生の女子の守屋にそんな目で見られていたことに完全に焦っていた。
「そうだよ!!だって……一色くんは……」
と守屋は話し始めた。
それは夏休みに入る前の出来事
一色、武良はいつものように談笑していた。
「なぁ、俺、絵師さんのイラストを観て思ったんだけどよ……
恥じらいながら着替える女子って最高だよな!!そうだろ!!武良!!」
と一色はニヤニヤしながら武良に言っていたことを暴露した。
いやいやいやいやいや、
ちょっと待てこれは……
「まだまだあるよ」
「ちょっと待て。もう言わんでいい」
と一色の願いは届かず、守屋はさらに暴露し続けた。
一色は朝、武良と話していた。
「おい!!お前!!これは!!!」
「へへへ……実は買ったんだ!『ToLOVEる』!」
「おい、マジかよ! 後で感想聞かせてな!!」
と一色は持ってきた『ToLOVEる』を読み始める。
ロッカーの中には、中古で買った大量の『ToLOVEる』が置かれていた。
そして、お昼休み。
「で、どうだったよ!!『ToLOVEる』!!最高だったろ!!!」
と武良はニヤニヤしながら言う。
「ああ、最高だったわ……特に、古手川唯ちゃんが最高だったな! ツンデレおっぱいがもう……最高よね。いや~~マジで古手川唯のおっぱいが揉みたい!! 抱きしめたい!! リト、裏山!!」
「なるほど、古手川唯ちゃんが最高だったと」
「そういうことよ」
「ちなみに、俺はララちゃん推しな」
「わかる。ララちゃんも最高だった」
「あと、一色、お前、ダークネスも観ろよな」
「もちろん。そのつもりよ」
と満面の笑みで答える一色と、古手川唯が最高だったと認識する武良。
あの……ほんとに……勘弁してください……
一色はしどろもどろになっていた。
「まだあるよ」
いや、まだあるんかい……
昨年の大晦日、家族に頼まれて買い物をしていた時に、偶然、一色とその姉らしき人物(風花と凪のことです)を見かけて……
「いや~~素晴らしい買い物をした!!」
「すごい混雑してたわね。コミケ」
「何買ったの?あんた?」
「これよこれ!!」
と一色は風花と凪に見せる。
萌えアニメのイラスト本だ。水着のイラスト、可愛い可愛い萌えアニメのイラスト、様々な絵が描かれている。
ちなみに、18禁ものは買っていない。16歳だからな。
「うわ……すごい萌え萌え感が……」
「こんな萌えアニメ大好き男に負けた高校野球球児が不純でならない」
「酷いなお前ら……」
と凪と風花がドン引きしていた。
「おい、なぜそれを知っている……」
一色は完全にドン引きしていた。守屋、お前、俺のネタ持ちすぎだろ……
そう思っていると、守屋はプルプルと震え、
「こんなに……女の子に興味がありそうなのに……ありそうなのに……
どうして……関与していない側なのよ!!で、一見、女の子に興味なさげな高松くんや山中くんが下着泥棒とか盗撮に手を染めたのよ!!!どう考えても逆じゃない!!」
「おい!!それはどう考えても俺に対して失礼だろ!!」
と守屋は意味がわからないという表情で一色を見ていたのを、一色は一蹴する。
「ま、守屋は何かを勘違いしているな」
「勘違い?」
と守屋は不思議そうな顔で一色を見る。
「俺は、女の子に興味がないというわけではない。可愛い女の子大好きだし、おっぱいには興味があるし……そりゃ、男子だからな……男子はそんなもんだ……理解してくれ」
「一色くんはほんと女の子大好きね」
「特に大好きなのは2次元の女の子だけどな。その女の子、画面から出てこないけど」
「女の子の好みは言わんでよろしい」
と守屋はバッサリと切り捨てる。一色は守屋のツッコミを無視して話を続ける。
「ただ……女の子のことを悲しませてまで、女の子のことをよく知りたい……とは俺は思わない。盗撮とか、下着泥棒とかね」
と一色は守屋に告げた後、
「まぁ、実際、俺は……というか……俺の所属していた硬式野球部は……女の子を悲しませちゃったけどな……ほんとすまない……」
と申し訳なさそうに補足し、謝罪した。
「あと、俺はそんなしょうもないことをして、甲子園の道、プロ野球選手への道を閉ざしたくないんだ」
「プロ野球選手への道? あなた、プロ目指してるの?」
「そうだよ」
「意外ね。なんかアニメ大好きだから、アニメ関係の仕事を志望するのかと……」
「いやいやいや……俺、プロ行きたいし……そのためにこの学校を選んだまであるから……」
「そうだったのね」
と守屋は驚いた表情をしていた。守屋の俺に対するイメージ、「野球」よりも「萌えアニメ大好き」に比重が置かれえているな。こりゃ。
「なら、尚更、一色くんは……」
「ああ、甲子園の道は閉ざされ、プロの道も怪しくなっているというね……
あああ、ほんと頭が痛い……」
と一色は頭を抱えた。
少し間を開けた後、
「あの……」
と一色の表情を見て、守屋が何か言いたそうにしていた。
「どうした?」
「ご、ごめんなさい……一色くんのこと、疑っちゃって……」
「ははは!大丈夫だよ。気にすんな」
と一色は守屋の過ちを笑って許した。
「ま、俺があの事件に関与してなかったとしても「事件を起こした明乃森高等学校の硬式野球部の代に所属していた野球部員」という経歴がある以上、白い目で見る人がいるのは確かだろうね」
と一色は悲しそうな表情で言う。すると、守屋が口を開く。
「あ、あとさ……は、話変わるけどさ……わ、私が言うのもあれだけど……転校先でも頑張りなさいよ」
「え?なんで俺が転校すること知ってるわけ?」
と不思議そうに守屋を見る。
「み、宮橋さんから聞いたのよ」
「な、なるほど……」
そういや、宮橋さんと守屋さんは親友だったな。納得した。
「あなたが転校するって、どこに行くのか知らないけど、別の高校に行っても頑張りなさいよ。」
「……うん、頑張るよ」
と一色は頷いた。
守屋と一色が話していると、ドアが開く。
「待たせてすまない」
と生徒会長がやってきた。
「大丈夫ですよ」
と一色は笑顔で返す。
他の生徒会の方々もぞろぞろとやってきた。
これから、俺は生徒会長に、事件について色々と聞かれるんだろうなぁ……
と一色が思っていると、
「よお!一色!!」
と東坂がやってきた。
「東坂さんもいるんですか!!」
「私もいるよ!!」
と鈴森さんも生徒会室にやってきた。
「そりゃそうだろ。あの事件について、俺がいなかったらおかしいだろ。元、硬式野球部員なのに……」
「た、たしかに、それもそうですね……」
と一色は東坂の発言に納得していた。
そして、全員席に着いたのを確認した後、生徒会長が
「これより、生徒会会議を始める」
と宣言し、生徒会会議が始まった。
。
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