電話応対の練習をしてみた

 大学4年生の6月。私は電話応対の練習を1つ目の就労移行支援事業所で体験することになった。

 まぁもちろん当時は1つ目の場所を辞めるだなんて思ってもいなかったけど。


「お電話ありがとうございます、○○の訓練生がお受けいたします」

「○○ですね、少々お待ちください」

 なんてロールプレイを他利用者と行いながら、形を覚えていく。


 そして覚えたら事業所独自の電話検定を受け、晴れて外部の一時取次の練習デビューとなるのだ。


 だけどね、今思うとこれは2~3回同じ講義を受けたからすぐにできるなんてもんじゃないのよ、障害者にとっては。得意なことはたしかに2~3回の復習でできるようになるんだけど。苦手なのは10回聞いてもできるようにはならないんだな、これが。


 訓練生になった後に同期の利用者いわく、7回試験に落ちた人だっているし。


「おじゃがさん、緊張してたね」

 そう女性スタッフが私に声をかける。

「あったりまえじゃないですか。私は聴覚処理が苦手なんですよ?」

 と返すと、

「でも、おじゃがさんは聞き取れているほうですよ。あとは話を聞きながらメモをとれるといいね」

 と私を見ながら女性スタッフは笑った。


 難易度が高いなぁ、と私は苦笑いを浮かべた。


 しかし、その後女性利用者に

「なんでおじゃがさんの間違いは大目に見るのに私には注意するんですか」

 と訴えられていた女性スタッフ。しかも私のいる前で。

「ごめんね……」

 とスタッフは謝るけど、その利用者はふんぞり返っていた。


 まぁ指摘した女性利用者は細かなスタッフの漢字間違いも言わなきゃ気が済まないような方だったんですが。


 数ヶ月後、その女性スタッフは私の通っていた就労移行支援事業所から姿を消した。


 私が1つ目の就労移行支援事業所に通っていたときは、自己管理ができていなかったと思う。今の私ならもう少し落ち着いてチャレンジするだろう。


 まぁだからといって2つ目の就労移行支援事業所では落ち着いて電話応対できるかと聞かれたら話は別だけれど。


 1年後、職務スキルと生活力は別物なのだ、と学べたのは私の大きな進歩だと思っている。

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癇癪持ちのソーシャルスキル検証録。 おじゃが @ojaga1006

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