向日葵

夏。蝉時雨。入道雲。


麦わら帽子をかぶった白いワンピースの少女。


どこかの漫画に出てきそうなその理想的な光景に胸惹かれ。どこか遠くから聞こえる列車の音と鼓動が重なる。


真っ白なキャンパスに鮮やかな青をいれる時、少女がこちらを振り向いた。

にこりと微笑むその表情は幼く、輝かしい。大人の女性であろう私でさえ心を奪われた。


少女がこちらえとゆっくりあゆむ。緑の海をかき分けて一歩一歩。


「お姉さん、なにかいてるの?」

あどけない表情で、純粋な質問を投げかける。


「田舎の風景を描こうと思ったのだけど、向日葵のような未来が見えたから、それを描くつもりよ」


「ひまわりなんて見えないよ?」


「そうね。でも私には綺麗な向日葵がこちらを向いたから……」


「そっか!じゃあ完成品楽しみにしてる!」


筆をとると、1本のひまわりをかきはじめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る