金木犀
夜。彼女は隣でスマホと格闘している。いつも通りのことだけど、なんだか今日は寂しい。
彼女の背中は慎ましやかで、ちょっと猫背気味だ。長い髪が、肩をつたって、サラサラと流れる。
天井の豆電球からのオレンジが、彼女の後ろ姿を映すのだ。
「どうしたの?急に抱きついてきて」
「ちょっと寂しくて」
布団の中でゴソゴソと体が動く。彼女のニヤッとした悪い顔がよく見えた。
私の顔をじっと見て、優しく口付けする。
窓からふぅっと、金木犀の香りがした。
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