怪奇談話【スーパーの警備】
こーたろ怪談
怪奇談話【スーパーの警備】
4年前俺はあることがきっかけで長年勤めていた警備会社を辞めた。就職氷河期の最中に拾ってくれた会社だが身の安全には代えられない。今回はその話をしようと思う。
その日私が担当していたのはとあるスーパーだった。屋上含め3階建てで1階は食料品、2階は洋服や生活雑貨、玩具が売っている。小さなゲームコーナーもあったっけか?
まあ都下近郊に昔からある小さな店だ。
その日は夜勤のシフトだった。1階の食料品コーナーが24時に閉まるので、そこから最後の従業員が出てしばらくした後俺は店内の見回りを開始する。チェックする鍵の位置なんてたかが知れてるので1時間もしないうちに
終わり、俺は仮眠を取るために警備室の簡易ベッドで横になった。
「次の見回りは3時代だ。2時間は寝れる。」
スマホのアラームをセットし、万が一に備え非常通報ボタンを枕元に置き目を瞑る。
1時間位経っただろうか?「ドンッ」
不意に扉に物が当たる音で目が覚めた。「なんだ?」寝ぼけたのかもと思いまた目を瞑ると、「ドンッドドンッ」「コツッコツッ」「ガチャガチャ」明らかに扉をいじくっている音だ。俺は音を立てずに起き、靴下のまま右手に特殊警棒を構え左手はいつでも押せるよう非常通報ボタンに添えて、「そこにいるのは誰だ!」と叫んだ。瞬間音はやんだ。
そのまま1分くらい過ぎたとき、「ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ!」今度はさっきよりも重い音で扉が叩かれる音がし、怖くなった私は震える手でモニターを操作して部屋の外を見た。
…見なければよかった。今でも後悔している。とっととボタンを押して応援を呼べばよかったんだ。
カメラに写っていたのは、2回の洋服売り場にあるマネキンが警備室の扉に頭を打ち付けている様子で、片方の手でドアノブをガチャガチャ操作している。
腰が抜け椅子にへたり込んでいると、油を指していない歯車のようにぎこち無い動作でマネキンの顔がカメラの方に向き、「さ・と・う・お・ま・え・に・き・め・た」と口を動かし同時に私の頭の中にも言葉が響いた。
そして今度はカメラに顔を向けたまま扉を叩き、ドアノブをいじる。
私は響く音に頭がおかしくなりそうになるのを必死にこらえ、モニターの前にある電話で警備会社に電話し一刻も早く応援をよこせと伝えようとしたが…聞こえてきたのは先程と同じ声で「む・だ・だ・よ」
そこから先は記憶がない。
次に気づいたのは病院のベットの上で、上司が見舞いに訪れていた。
どうやら私を発見したのは警備会社の同僚で、朝出勤しようとしたスーパーの従業員が外からに通じる通用口の鍵が掛かりっぱなしなうえ警備室につながるインターホンを押しても出ないのを不審に思い連絡を入れたのだという。
駆けつけた同僚が見たのは警備室の扉の前てばらばらになっていたマネキンと、中で泡を吹いて気絶している俺だった。
そして同僚はある事に恐怖したそうだ。
それは彼が警備室の前に来たとき、マネキンはバラバラになっていたが手の部分はがっちり入り口の扉を掴んで離さず、まるで人肌のような暖かさがあったのだと言う。
この事があって俺は会社をやめる決意をしたのだが、この頃からおかしなものが見えている。それは、家でも外出先でも鏡やガラスなど自分の姿が映るところには、必ず隣に例のマネキンが隣に映りこんでいるのだ。
もしかしたら、俺はいつかこいつに殺されるのだと思う。
怪奇談話【スーパーの警備】 こーたろ怪談 @kotaro_kaidan
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