第26話 県庁占拠③

 「馬鹿。お前らまで来てどうする!」

隊長はついて来た部下に叱責する。

 「流石について来ないとやばいですって!残りの奴らにバトンタッチしたので。取り合えずあいつらに従った方が良さそうですね。」

部下が隊長に言い返した。

 「隊長を置いていかずに部下までちゃんと来るとは素晴らしい団結力だねぇ。ここまでちゃんと来たこと褒めてやろう。」

アブナーイは茶化すようにしゃべり続ける。

 「あんたに褒められても嬉しくない。人質に取るなら俺だけにして県庁職員や委託業者さんを解放してあげれませんか?ステゴロのキケンダーさん。キケンダーだけに人質たくさんいるところで無双されると危険なので。」

隊長は軽々しく小馬鹿にしてアブナーイに意見した。

 アブナーイはチェコスロバキア製の自動拳銃であるCZ75を取り出してRATS隊長の眉間を撃ち抜いた。

 激しい銃声と同時にRATS隊長は即死する。

 部下もびっくりして動揺して隊長の死体を見つめ続けて放心状態になっている。

 「隊長さんもあっけなくあの世にいっちゃったねえ。あ、ごめんごめん。あまりにも僕を馬鹿にするもんでカッとなって撃っちゃった。」

アブナーイは笑いながらRATS隊員にごたくを並べて半分ふざけていた。

 「こいつらも邪魔だから消してくれ。情報も聞き出さなくても他にも仲間がいるの分かってる。それも作戦の内なのだろうから。」

アブナーイは自分の部下にそう言って処刑するように指示を出す。

 クルド人民革命軍のメンバーがM16で2人を射殺して死体を廊下に並べた。

 

埼玉県某所

 防衛省特務情報部も諜報班の他に強襲班も動員して民間仕様に偽装した自動車で出動する。

 金創がペーパー企業の駐車場に案内して誘導終わりの合図して強襲班を下ろした。

 「メタルソーセージ君。お久しぶりん。」

強襲班の要員の1人がふざけた挨拶をする。

 「テロリストを殺す前に試し撃ちしていい?」

金創は9ミリ拳銃2型という名所で使われているグロック19ハンドガンの銃口を向けて冗談を言った。

 「バカ!こっちに向けんなwww」

金創の知り合いと思われる強襲班の要員が銃身部分を掴んで銃口を降ろさせる。

 そして任務の概要をお互いに話し合いを始めた。

 「ほーう。これは楽しいサバイバルゲームのお時間だな。」

金創と話していた要員がタバコに火をつけながらつぶやく。

 民間偽装されたトラックから黒色の戦闘服を着た強襲班の要員が降りて来て休憩を取り出した。

 金創をからかっていた要員の名前は犬神秀俊いぬがみ ひでとしでコードネームは「バトルフェンリル」。そして職種が違うとはいえ金創とは陸上自衛隊情報学校教育入校中の同期であった。

 「お前はメタルソーセージなだけに軽装備で羨ましいよ。こっちは特戦やSATみたいな…むさ苦しい装備さ。」

犬神は黒色のプレートキャリアを身につけて5.56ミリ弾が装填されたマガジンの数を軽く数えながらM4A1のドットサイトやレーダーサイト、サプレッサー付きを手に取った。装備している拳銃はやはりグロック19である。

 強襲班の要員は同じ防衛省自衛隊の所属とはいえ特に装備の規定はなく、公的機関向けの装備販売業者に発注して自腹購入した者もおれば、自衛隊、警察の流用品も使っている者もいて88式鉄帽の他にFastヘルメットと呼ばれる最近の特殊部隊でも使われているヘッドギアやスポーツヘルメットまで被っている者もいた。

 「それとトルコからエージェント来てるからくれぐれも俺のメンツを保ってくれよ。」

金創は犬神にそう告げてペーパー企業から出て行った。

 防衛省特務情報部は日米地位協定に左右されないことから始まり、時には同盟国が相手になっても、仮に同じ自衛隊、警察が敵になっても戦う諜報機関のような存在であるため、かなりリスクを負うのも要員達も承知の上である。

 RATS側には犠牲者が出てきてしまったが日本社会解放軍とクルド人民革命軍側にも当然、犠牲者が出ているため、戦力はだいぶ削ぎ落とされていた。最悪はマスコミ規制させて警察の特殊部隊がテロ犯を制圧したことにして多少犠牲者が出ても手柄は警察組織に譲るのも一つの手だと金創は考えた。

 既に別の諜報班の要員がマスコミに話をつけており多額な金額を非課税で贈与する条件で決して今回の考えを口外しないように徹底して、万が一マスコミの者の誰かがその情報を漏らせば数日後に特務情報部の強襲班に殺されることになっているが、かと言ってそれを断ってもどのみち殺されるのはマスコミ関係者も知っているため従わざる得ない状況にある。

 そして上層部も警察幹部に話をつけており、埼玉県警の機動隊や特殊部隊の後方支援的な役割も担うことが了承され、金創ら特務情報部は県庁へ出向いた。

 (今回は俺らの出る幕ではないも同然。たまには同じ国家と国民を守る者同士、警察のメンツぐらいは立ててやろう。)

金創はそう思いながら現場へ急行する。

今回の作戦は決して防衛省自衛隊が動いたことが公になるリスクも考えられるため、マスコミや警察、公職関係に口止めを念入りにさせるように通達して本格的に動き出した。

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