第3章
第24話 県庁占拠
激しい銃撃音が県庁付近で鳴り響いたことで当然ながら警察も出動をせざる得ない状況となり、埼玉県警から機動隊と銃器対策部隊が出動することになり、その後に県警独自の特殊部隊として設立されたRATSが出動することになった。
RATSは機動戦術部隊で銃器対策部隊より一回り広範囲な戦術、技能を有した埼玉県警の先陣を斬る部隊である。
埼玉県警としては極力は機動隊と銃器対策部隊でその場で任務を遂行させたかったが今回はそういうわけにもいかないようだった。
その一方でSPが会議用の椅子や机でバリケードを作って一時凌ぎができるように準備をしていたが何かが落ちる音がした。目の前を見ると手榴弾が落ちており、気がついたSP達の前で爆発した。
激しい爆発音と共に官僚や省庁関係者、県議会議員もパニックになっている。
「およよよよよ〜!」
「あびゃびゃびびぁーー」
今までそう言った経験がないのもあるが特に県議会議員が1番、パニックになっていた。
爆発した際の破片で片足をやられたSPが咄嗟に片手撃ちで拳銃を撃とうとするがアブナーイに先手を突かれて撃たれる。
眉間を撃ち抜かれたSPは「あぎゃ!」と間抜け面を晒してその場で倒れた。
「こいつら警察学校で何を学んだんだよ。いや、配属先と言った方がいいか。」
そう言って会議室で向かう。
「どうもお取り込み中のところへこんにちわ〜。」
アブナーイがふざけ半分で県議会議員や官僚、省庁関係者に挨拶をする。
ちょうど他の記者室からカメラを引っ張りだしてクルド人民革命軍メンバーに指示をされながら犯行声明を出すための準備を念の為に始めた。
「今回参加しているのは県議会議員、と各省庁官僚、入管局幹部、警察官僚までおいでになられてる。スペシャルゲストだな。」
他のメンバーに渡されたリストを展覧したアブナーイはひとりひとりをランダム選びのように見続ける。
「おい、お前、こっちへ来い。」
宇野は清潔感のある格好をした職員を指名してアブナーイの元へ向かわせた。
最初に指名されたのは保健所の課長だった。
「なぜ私が…」
保健所の課長がうなだれる。
「名前は
アブナーイは課長の個人情報を読み上げてから嫌味のような言葉を並べた。
「動物の殺処分は国の法律で決まっていまして…それをどうこうしようにも…それに公務員の給与削減で私もローンや子供の習い事で金銭が…」
保健所の課長はアブナーイにそう訴えて同情を買おうとする。
「でもその税金から支払われる給与でローンを組んでるんだよね?まあ、それは良いとして動物の殺処分に関してはあんたら役人や政治家がまともな税金の使い方でシェルターなり普及させれば良かったのでは?」
アブナーイはさらに意表を突くような発言をして保健所の課長を黙らせた。
「国内の難病に苦しむ人種問わずの民、無責任な連中に棄てられ殺処分される不条理さ、そんな残酷な世界に立ち向かう覚悟もなければ向き合わず危機感を覚えないバカ役人は死ね!」
アブナーイは部下から取り上げたAK74で保健所の課長を連射で撃ち続けて無惨に殺した。
激しい銃撃音と共に血飛沫をあげて周囲の人質も悲鳴を上げる。人質を黙らせようと傭兵達がまた天井に銃を撃ち出して場を静めた。
アブナーイにとってこれらの問題に対する不信感や怨念はなかったが誰かを公開処刑の生贄にして見せしめにするには充分だった。
県庁付近では既に機動隊が駆けつけて包囲して後ろから銃器対策部隊が人質救出の準備を始めている。
「第1分隊、第2分隊は準備ができたら裏口から潜入するぞ。屋上からヘリコプターでRATSが降下して徐々に制圧するからここで挟み討ちだな。万が一、民間人に犠牲者が出るかもしれないが責任は俺が取る!」
銃器対策部隊の隊長が参加した隊員全員に言った。
警察としてはパソーナにおけるテロ以降、極力、自衛隊が最終的に出動するという事態は避けたかった。いくら特殊作戦群や第1空挺団、中央即応連隊などの精鋭部隊がいるとはいえこれ以上、自衛隊に尻拭きをしてもらっては警察庁の面子にも関わってくるのもあり、警察上層部はRATSか関東圏に配属されているSATが出動するまでで収めようと躍起になっている。
RATSがヘリコプターからロープで垂直降下して銃器対策部隊が防犯カメラに注意しながら建物の中に入って行った。
「良いぞ。良いぞ。ここで警察官僚を救出できればかなりお手柄だぞ。」
埼玉県警の警部はRATSがヘリコプターから降下し終わったのを確認して期待を膨らませていた。
ブラインド越しに外を確認していた日本社会解放軍のメンバーが急いで宇野に報告へ向かう。
「警察の銃器対策部隊が突入しようとしてきています。ヘリの音はおそらくRATSだと思われます。」
メンバーが慌てて報告をして宇野達は潜入が予測される場所へ配置に着いてから待ち伏せ攻撃の態勢に入った。
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