第23話 蜂起
アブナーイは次なる計画を立てていた。それは埼玉県庁の襲撃だった。埼玉県庁自体は特に恨みがあるわけではないが憂いていることがあったのである。クルド人としてもだが日本人の代弁者として。決行日当日、県議会議員だけでなく官僚や警察幹部、厚生労働省官僚、保健所の重役などが集まって会議を開く情報を裏社会の情報屋から得ていたのであった。
今回の襲撃はクルド人民革命軍だけではなく、日本社会解放軍も参加することになっている。
日本社会解放軍のトップである宇野もアブナーイに協力的で気前良く人員も配置させる約束をしていた。
アブナーイはメンバーに亜麻色やオリーブグリーンの防弾ベストやプレートキャリアを渡して個人的な装備の好みや使い勝手も尊重した上で自前の装備の使用も許可をする。
「今回の任務に失敗は許されない。いや、許されないというより失敗すれば俺たちの存在は木っ端微塵だ。これ以上、言葉にできるほど物でもないが気を引き締めていけ。」
アブナーイは目の前にいるメンバー全員に通達した。
AKシリーズなどいつも通り使い続けている銃火器の他、爆薬や筒状のロケット砲など夥しい武器も準備してミニバンやハイエース、トラックなどに積み込み、先遣した日本社会解放軍戦闘員とアブナーイが中東や欧州からリクルートした傭兵を県庁へ向かわせる。
県庁はパソーナ立て籠り事件以降、警察の警備が厳しくなっており機動隊を動員するほどでは無いものの、大勢の警察官が厳戒態勢で警備をしており県議会議員や官僚の警護を警備課のSPが行っていた。
クルド人を含む傭兵達外国人はこのご時世、完全に警戒対象のなるので先に日本人で日本社会解放軍のメンバーを先に県庁内へ向かわせる。当然、私服で潜入して警備員に話しかけられそうになったところでバッグから拳銃やサブマシンガンを取り出して「全員動くな!」と叫び出して天井へ威嚇射撃を始めた。
銃声を聞いた警察官が駆けつけようとするが外部から次々に狙撃されていき、凶弾に倒れていく。
警備員の1人がUZIサブマシンガンを持った日本社会解放軍一員にくってかかるがその場で撃ち殺され、周囲では悲鳴が響いていた。
「静かにしろ!これ以上騒ぐと全員ぶっ殺すぞ!」
他の仲間もMP5Kの銃口を視界に入った職員達に向けて脅し文句を叫ぶように口にする。
警備員達もパニックになっている県庁職員や委託業者を落ち着かせようとしていた。
無線機に「外部警備していた警察官制圧。排除官僚。」と途切れ、途切れで入ってくる報告を聞き取った職員達は絶望感を突きつけられた。
「とりあえずここから動かないで下さい。」
SPが拳銃を取り出して会議室のドアの前に配置に着き、各官僚や県庁幹部、議員の安全を確保しようと必死になる。
外側を警備していた警察官を全て排除したクルド人民革命軍と傭兵達は県庁内に入り、アブナーイと宇野も中に入って行った。
「後はお偉いさんを捕獲するだけだな。」
「モンハンみたいなことを言うんじゃない。」
アブナーイと宇野は冗談を言い合いながら会議室がある方向へ向かう。
「まず、私が会議室から出た廊下の安全確認をしに行ってきます。もし、私の身に何かあったらその時は彼らをよろしくお願いします。」
SPが先輩と思われる同僚に後の願いを伝えてから廊下へ向かった。
「今のところ、異常ありません。もう1人出てきてくれると助かります。」
「分かった。そっちを頼む。俺はこっちを確認して見張る。」
SP達は息の合った連携で背中合わせに銃を構える。
会議室の近くの廊下の角から日本社会解放軍の1人が無警戒に歩いてSPの姿が見えた瞬間に銃を構えようとするが、時すでに遅しでSPが引き金を引く方が早く、1人は頭を撃ち抜かれて即死した。
「廊下にて短機関銃を装備している不審者1名排除。」
拳銃を発砲したSPが同僚に報告をする。
SIG P230から更新されて新たに使用、装備機会が増えた自動拳銃の一つであるHK P2000を装備したSPもいることでしばらくは持久戦に持ち込めそうだった。
「死体を調べてくれ。それと近くに敵がいるかもしれないから周囲の警戒も怠るなよ。」
上司と思われるSPが後半と思われる同僚に指示を出す。
「了解。すぐに向かいます。」
そう言って最初に拳銃を発砲したSPが直ちに向かった。
パーン!と何回か弾け飛ぶ銃声と共にSPが倒れて幸いにも防弾チョッキをしていたことで衝撃の痛みに耐えながら2度目の銃撃戦を始めた。1名の敵を射殺することができたがもう1人敵がいたことで激しい銃撃を受けてSPの1人が絶命する。
「榊!くそ!榊が死んだ!」
他のSPが叫びだした。
「全くバカな奴らだ。バカというより、学習能力なさすぎだな。あれだけ事件も起こり治安も悪化しているのに。」
後方から現れた宇野がSPの死体を見て小言を言う。
「ここにSPがいてドンパチ合戦。要するに向こう側に官僚や省庁関係の奴らがいるってことだな。」
アブナーイは宇野にニヤリとした笑みを浮かべながらそう言って会議室の方面を見つめた。
「至る所から銃撃音がしたってことは団体でここを襲撃したに違いないぞ。とりあえず本当なら外へ出すどころかどこか隠れられる場所を探したいがいつ奴らに出くわすか分からないな。」
SPの指揮官は弾倉(マガジン)を装填して心の準備をしようとする。
しかし、もう遅くアブナーイと宇野達率いる武装集団が会議室近くへ迫って来ていた。
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