第18話 日本極左とクルド極左

 日本社会解放軍は暴力団や半グレなど反社会勢力に対して暴虐の限りを尽くした。シラミ潰しに暴力団事務所を襲撃して警察が駆け付ければ邪魔者として銃弾を見舞いして抹殺していく。

 暴力団事務所の真ん中にある机の椅子には無惨にうつむくような死体があり、日本社会解放軍のメンバー達がまた武器や金目の物を奪っていき盗賊のように掻っ攫っていた。

 「周辺の警察の防犯カメラはハックしているから今のうちに逃げるぞ。」

宇野は調達した物を入れる布製のリュックを持ち上げて指示を出す。

 全員覆面を被っており、用意したバンで逃走した。ちなみに用意されたバンは暴力団が所有していた物であり、前回の襲撃で強奪した物であった。

 「今回、調達できたやつでUZIにMP5KにM67手榴弾まである。そして数えるのが面倒くさいほどの札束が入ったバッグもある。」

メンバーは歓喜が収まらない様子である。

 今回襲った場所は埼玉県蕨市わらびしで稲海会傘下の春日部組で宇野はその組を兵役で養った統率力で見事にほぼ壊滅状態に追いやった。

 蕨市は埼玉県の川口市と同等にクルド人が多くその中にクルド人民防衛隊(YPG)の幹部が既に潜入しており、かつての人脈を使いこなして武器密輸入をしていた。彼の名前はアブナーイ・キケンダーで名前の通り、かつてはイスラム過激派ダーイッシュから恐れ知らずの奇天烈さ残虐性、凶暴性で恐れられており、その伝説はトルコ軍のトップでさえ腰を抜かして核シェルターに引きこもってまうほどだった。

 アブナーイは全クルドネットワークに幅広いツテがあり、巷のマフィアよりも武器の流通はともかく活動資金で物事をやりくりできるため実質ほぼ不労所得で生きていけるほどで、もちろん同胞にも還元できるところはとことんすることから信頼を置かれている。

 そしてこんな話がある。ある日、役所の連中や国税庁特捜部マルサがやってきてアブナーイの日本国内の財産、資産全て差し押さえ、動物愛護団体から譲り受けて飼っていた犬や猫まで差し押さえ対象にして保健所に送り殺処分してしまった。その時、その場ではアブナーイは抵抗もせず怒りもせずただひたすら差し押さえに応じているようだった。しかし数日後、調査兼差し押さえを担当して顔を覚えられた上席国税調査官が東北の山奥で無惨な遺体で見つかり、その他積極的に宝探しを楽しむように差し押さえをしていた国税調査官達も惨い姿の変死体で至ることで発見され、幸いに何も起こらなかった職員の何割かがそのショックで立ち直れず精神病棟行きになっているということだった。

 宇野達率いる日本社会解放軍は蕨市のクルド人が多数いる場所へ向かい、案内員を頼りにアブナーイの率いるグループの本拠地へ向かった。

 「提督。日本人の同志達がお見えになりました。」

案内員はアブナーイに宇野達を紹介する。

 「ご足労感謝する。ジャポネスク《日本人》同志。そしてミスター宇野。よろしく。」

アブナーイは流暢な日本語で軽く挨拶した。

 アブナーイの身の回りには東西両陣営のアサルトライフルやサブマシンガン、中には擲弾など夥しいほどの武器や爆薬が置かれていた。

 (いったい、何処からこんなやべえの持ち込んでんだよ…)

いくら海外での軍隊経験がある宇野でも驚きを隠せないあまり絶句している。

 「初めまして。日本語はできるみたいですね。助かります。」

宇野は一言挨拶した。

 「最近は目障りなヤクザや半グレをぶっちめてくれてるみたいだな。お陰で同胞から感謝されまくりだよ。それになぜ警察やジャパンアーミーであるジエイタイを襲撃せずギャングやゴロツキばかりかね?」

アブナーイは褒めつつ裏社会の連中ばかり狙うことに疑問を持っているようである。

 「確かに革命を成し遂げるには国家権力である警察や自衛隊を襲撃すべきでしょう?そして欲を掻くなら米軍基地奇襲もやるべきです。しかしまだまともに戦力や火力が整ってないのに高跳びしてもリスクが伴うばかりです。まあ、腕慣らしと調達、準備ってところですね。」

宇野は不適な笑みを浮かべながら説明をした。

 「最近はテロがあったな。世界終末救済会とか何とかいうエセ宗教か単なるテロリストごっこのバカなのか知らんが。このこともあって我々も関係ないのにとばっちりさ。国税の銀蝿ぎんばえを葬ったのも悪かっただろうけどな。一度は捕まったが証拠不十分に人権がどうたらの観点ですぐに出られたがね。」

アブナーイは長い世間話を続ける。

 「まあ、我々もだがあんたらも気をつけんとこれからは底なし沼に落ち込んでしまうから慎重に行動せねばな。公安やら内調、自衛隊の情報隊も蠢くだろうからな。」

彼は長い世間話の後に忠告を付け加えた。

 「今日からここで身を隠せるように提督が手配してくれました。外出や帰宅をする際は公安や情報機関の尾行も考えられるのでくれぐれも注意してください。」

案内員は宇野達に注意事項をサラッと言って紹介したアジトを去っていく。

 「今日はクルドの同志の温情に甘えてゆっくり休むとしよう。これからちょくちょく調達できた武器や手に入れた物も彼らに共有すべきだがとりあえずお前らも身体を休めておけ。」

宇野は日本社会解放軍のメンバー達にそう言ってタバコを吸いに外へ向かった。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る