第17話 日本社会解放軍

 今世紀最悪非道かつ好戦的な極左暴力集団である日本社会解放軍は密かに準備した武器を掌握しょうあくした上で書店から手に入れた日本全国の地図を広げて行動計画を模索し始めていた。

 「宇野さん。ご意見よろしいでしょうか?」

ひとりだけ地図を読み漁っている男が宇野に話しかける。

 「どうした?AKで自衛隊や米兵を殺して良いですか?とか馬鹿な質問とかするなよ。」

 宇野は冗談混じりに口を動かした。

 「いきなり高い跳び箱を飛ぶように蜂起するのは得策ではないことは承知な上で言いますが現在、日本にはクルド人やアフリカ諸国の外国人も増えており我らと同じ考えがある人もいるでしょう。そこで価値観、考えが合致する連中を味方につけるのも有りだと思います。」

質問を投げかけた男は宇野に新興外国人を味方につけることを提案する。

 「それも確かに有りだが問題は奴らを搾取するヤクザや半グレ、クルドマフィアがいるだろう?そいつらがいる限り難しいんじゃないか?」

宇野はためらうような質問を返した。

 「ヤクザや半グレ、マフィアはおそらくゴキブリより邪魔なので駆除しましょう。そこから奴らのビジネスも奪って資金調達もしたら良いかもしれません。」

男は強引的な意見をきっぱりと口にする。

 彼の名前は赤松共人あかまつ ともひと。最終学歴は大学卒で慶応大学出身の高学歴エリートだった。社会科学に精通しており日本全国の地理については赤松に頼れば文句無しに確実で的確である。

「それならどこの反社を潰すよ?それなりに考えてるのか?」

「考えて無かったらそんな発言しませんよ。」

会話が途切れない中、赤松は自前の地図を出して暴力団事務所や半グレのフロント企業や事務所、拠点がある場所を押さえた地域にマーキングしたのを見せた。

 「なかなかの気持ち悪さと言いたいところだがそこんところ好きだぜ。まず潰せそうなところ見つけたらこっちに意見として教えてくれ。」

宇野はそう言って去っていく。

赤松は慶応大学卒のエリートにして当初は大手食品会社に勤めていた。営業や食品や健康食品のアンケート調査、品質管理業務など様々な経験をしていたが新型感染症騒ぎが収まってもなおかつ続く不景気、そして日経平均株価の暴落などもあり次々に派遣社員が派遣切りに合い、正社員だった同等の者たちもリストラされたりする事態になるのを目にしていた。赤松が勤めていた大手食品会社も派遣社員や契約社員を良いように利用していざという時はどんなに真面目に働いていようと切り捨てるところに疑問と不満を抱いており、人件費を削減して利益の懐を自分だけのも何しようとする企業役員とトラブルになり最終的に退職して一通り時間が経つに連れて革命運動に身を投じるようになった。

 仲間が次々とデモや暴動を起こして逮捕されていく中、かろうじて生き延びて組織を拡大する方法を試行錯誤して今日に至るが、宇野にとって高跳びするように警察署や自衛隊駐屯地や基地、米軍基地を襲撃するのはリスクを伴うし欲を描きすぎた故に1972年のあさま山荘事件のようになっても本末転倒なのは承知だった。

 なによりも日本赤軍がやらかした鉄砲店襲撃なんて論外であると確信していた。

 

 翌日

 朝、早くから日本社会解放軍は今まで手に入れた武器を搬出して1人ずつ銃火器を持たせ消音器付きVz61スコーピオンサブマシンガンに手榴弾、民生用のモーラナイフを装備させて集合させる。

 「今からの計画だが、現在芸能人やアイドルと裏で繋がっていることで有名な広域指定暴力団である稲海会の拠点を襲撃する。そして金目の物や武器類を強奪。やり方は完全強盗であるが革命のためなら手段は問わない!相手は喧嘩慣れして強いだろうが火力ならこっちの方が上だ。そして俺らみたいな奴らが襲撃するとは思ってないはずだ。徹底的に潰すぞ。」

宇野は集合したメンバー達に声を張って士気を高めさせた。

 本当なら独自の軍服や戦闘服を考案して統制を図りたいところだが同じ格好で集まっても一般市民から怪しまれるのは明白であることでそれぞれ戦いに応じた格好の私服姿にさせている。

 宇野達は稲海会の下部組織の組長宅に向かわせた。

 組長宅に着いてから最初に監視カメラを破壊して、カメラの電装品が壊れる音に反応した組員が来たところをナイフで首を切り裂いて絶命させて建物内に入って行く。そして完全に警戒心もへったくれもない組長がちょうど現れて宇野と目が合う。

 「貴様らどこのもんじゃ?!」

組長は慌てふためいていた。

 既に銃口は向けられており、他の組員も動揺して、その内の1人が仲間に電話しようとする。しかし他のメンバーがその場で射殺したため、電話できず組長と他の組員も孤立状態になり戦意喪失した。

 「飾ってある日本刀の他にいいハジキやらなんやらあるだろう?それ出して金庫も開けろ。」

宇野は組長に威圧して命令する。

 組長は指示に従いながらも隙をうかがっていた。

 「おっと下手な馬鹿な事をしようなんて思うなよ。したらどうなるかこの世界にいるあんたなら想像できるだろ?」

赤松は宇野の代弁者の如く組長にさらなる脅し文句を発した。

 組長は渋々、金庫を開けて入っている物全てを出して無言のままでいる。

 「お疲れさん。」

宇野はあっさりとそう言い放ってVZ61の引き金を連写で引き続けた。

 組長なあっけなく風穴だらけになり、即死して日本社会解放軍のメンバーが室内とロッカーと机の引き出し、タンスから武器以外にも金目の物を全て取り出していく。

 「長いは無用。ここを引き上げるぞ。」

宇野はメンバー達にそう告げてすぐに退きあがらせた。

 

 

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