第16話 闇の委託部隊
東京都郊外
激しい銃声に断末魔の叫び、そして逃げ惑いながら銃弾を浴びて絶命していく裏社会の人間達。彼らは何者かに急襲されて1人、また1人絶命してほとんど壊滅状態になっていった。
「サツじゃねえな。俺ら敵対している組織なんて無かったしヤクザにも追われてる覚えはないぞ…。」
「奴らサツでも無ければ裏社会の連中じゃねえぞ。しかも完全にプロだ…。」
半グレの男達は小言を言いながら逃げていく。
しかし、彼らも至る所を撃たれまくって怒号のような銃声と共にあの世へいった。
「害虫駆除完了。普通にスズメバチや毒蛾、獣を駆除するより簡単。まあ、相手が軍人なら俺は死亡フラグだけどな。」
スチームパンク風の溶接眼鏡みたいなゴーグルをした男は仲間に話しかける。
「オ・チンティ!ちょっとは限度というものを考えて行動しろ。」
仲間の男がスチームパンクゴーグルかけた男に叱咤した。
スチームパンクゴーグルをかけた男はオ・チンティ。大陸系の顔立ちをしている通り、モンゴル人の血が薄く混じった朝鮮系中国人と日本人の三種混血で元陸上自衛隊員の在日外国人入隊者だった。
そしてやりすぎなチンティを注意した男はは
2人が所属しているのはたわいのない日常において特殊作戦群以上に表立って存在を明かすことができない非合法ながら超法規的な民間委託の部隊で一般人の前での表向きは害虫駆除業者としているが実態は国内などで暗躍している民間軍事警備会社である。部隊名は「第1特務行動部隊Fate seeker(フェイトシーカー)隊」で悪い運命を表現するfate に追い求める人、捜索者、調査する人といった表現に使うseekerから取っている。響きは良くも悪くもだが所属する隊員は烏賊本を除いてそれなりの訳ありの連中を寄せ集めていた。
任務は警察、自衛隊では介入できない戦争などの未曾有な危機に立ち向かい対テロ、対反社会勢力における撹乱や暗殺(害虫駆除)、調査、諜報員の戦闘支援、救出、ゲリラ作戦である。
訳ありの連中で悪い運命に立ち向かい生きる道を探求する彼らこそがある意味フェイトシーカーとも言えるだろう。しかし、あくまで表向きは名前の知られていない害虫駆除業の会社だが実際はダミー会社である。
チンティも再入隊者だが陸上自衛隊にいた頃、脱柵未遂事件を起こしながらも辛うじて1任期退職まで行けたが職を転々とする上に自衛隊での汚点とも言える脱柵未遂前科があるため、汚名返上及び前科のデータ抹消を条件に任務を遂行していた。
顔の至る所にピアスをしていたり、全身タトゥーのいかにも半グレって感じの連中達が断末魔の叫びを上げ続け、血を吹き出しながら死んでいく。
烏賊本はP226ハンドガンで射撃を続けた。
「一通り片付いたみたいだし、すぐに引き上げよう。」
烏賊本はチンティと仲間に指示を出す。
「銃弾は自衛隊の物だったら確実にやばいかな?」
烏賊本はわずかな残弾を確認してチンティに聞いた。
「これは自衛隊某秘密部隊が非正規ルートから手に入れたやつだから問題ナッシング。ロッド刻みが自衛隊だったら詰むがそこまで秘密の奴らがやらかすはずがない。」
チンティはそう答えた。
「というより死体はどうなる?あれだけの量じゃかなりまずくないか?」
同じくメンバーの日本人クォーターのアメリカ人であるチャールズ・タクミ・内川がチンティに問いかける。
「お前ら心配しすぎだな。まあ、俺もだけど。とりあえずは上の奴らが半グレ同士の抗争として処理するなり苛性ソーダで溶かすなりしてくれるだろう。」
多少なりともチンティは楽観的に答えた。
フェイトシーカー隊を乗せた軽バンの4輪駆動仕様は分散しているアジトの一部へ向かった。
「これからは武器手入れした後に終礼して解散して営外の寮へ戻っていいらしい。くれぐれも変な事件の巻き添いだけはしないようにな。」
チンティは仲間達に通達をする。
烏賊本は残弾だけ、武器係に渡して残りは武器庫に格納してから少し浮かれ気味になって寮へ戻った。烏賊本自身、フェイトシーカー隊に加わったのは最近でずっと営内で自衛隊生活を送るのと違って営外の寮へ過ごせることに少し解放感を感じている。
身分は陸上自衛隊員だがこの部隊にいる以上は仲間以外に漏らさないようにするか自衛隊員であることを告げるならば部隊名を誤魔化すようにしている。しかし、大半は普通の会社員や労働者で作業員という風にして身分をむやみやたらと明かさない。まあ、当たり前というと当たり前だが。
チンティは一目散にアジトを出てから自転車で寮へ向かいすぐに帰った。
「あいつは本当に帰る時はかなり早いな。どうせ旧式の装備見てムフフしてるんだろう。」
烏賊本は少し呆れながらチンティを見てそう呟きながら笑う。
「まあ、とりあえずはしょうもねえ招集がかからないことを祈るしかないさ。」
チャールズもチンティの次にアジトを出て行った。
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