第2章

第13話 国営民営化、非正規爆増の神様

 陸上自衛隊が治安出動して元軍人・元義勇兵である世界終末救済会を名乗るカルト団体のトップであるトールことダニー赤蝮が逮捕されてから売読新聞や赤星新聞に取り上げられ、インターネットニュースにも一連の出来事が掲載されていた。

 当然、政治家に対してもだが自衛隊も非難の的になっている。

 首相官邸において散撒ばらまき総理は案の定、記者会見に応じることにした。

 「今回の件において淡路島で起きたテロにおいて多大な犠牲者が出てしまったこと大変に遺憾に思います。警備員や自衛隊員、警察官の命を奪った卑劣なテロ行為は許されない。」

散撒総理はドラマや映画ありきたりのコメントを残して行った。

 それからテロ攻撃に遭ったパソーナの取締役会長である南郷と代表取締役の中田も記者会見を始める。その中に元総務大臣で初代パソーナの取締役を務めて一部の国営を民営化させて非正規社員を多く生み出した本人である竹穴羽目蔵たけあな はめぞうも何故かしらさりげなく参加していた。

 「どんな理由だか何だかはさておき、どうせ薄っぺらい内容でテロでも起こしたんだろう。全員、海外で軍経験あるくせに情けないし戦って傷つけることしか脳が無いくせに舐めたことをするな!」

竹穴羽目蔵は怒り心頭のコメントをして放送規制がいきなりかかる。

 「竹穴教授、一旦落ち着きましょう。日本全国テレビやスマホのLIVE配信で見られてますし、海外メディアも見ています。」

竹穴の秘書がなだめようとしていた。

 竹穴羽目蔵は元内閣総理大臣がカルト宗教二世信者の息子である元自衛官に暗殺される事件が起きてからパソーナを退陣して南郷会長に引き継ぎをしてから身を引いていた。それから国に貢献している企業や証券会社の代表や大学の経済政策専門教授をしている。

 竹穴はパソーナを立ち上げてから21世紀に入り、当時政権を握っていた中泉純白郎《なかいずみ じゅんぱくろう内閣総理大臣が郵政民営化や国鉄民営化をすることに背中を押した本人でもあった。それから派遣法という法律を可決させて契約社員という名のもとで派遣社員という制度を立ち上げて大量の非正規社員を生み出して社会格差を作った。

 誰もが知っている通り、派遣法では基本的に先方へ3年働いたら正社員にするか違う派遣先へ向かわせないといけないというルールがあり、もし3年経って斡旋される仕事が無ければ事実上の派遣切りという状態になる。最近では正社員雇用を謳っているが実は派遣社員という無期雇用派遣や自分が所属する会社ではなく別の会社(客先)へ作業する客先常駐派遣などが法改正によって出来たがそれも実は名ばかり正社員に近く、もしもの時はすぐに切られるのが当たり前ながらの特徴である。それも竹穴が生み出したものであった。

 そして日本の社会格差を生み出して非正規雇用を増やすことによって稼いだ分の一部を全体的に中抜きをして自分の懐に入れていることから日本国民から非難されており、しまいには国営民営化、非正規雇用爆増の神様と呼ばれている。

 「今回の事件に関してだが、竹穴さん、日頃から日本国民、在日外国人から恨み買われているでしょうし、いつかはこうなると思われても仕方ないでしょう…」

「まあ、しかしなぜそれ相応の戦闘のプロみたいなのがカルト教団みたいなの使ってパソーナを狙ったのか気になりますね。地下鉄テロ起こした教団の模倣ならまだしも…」

 「格差社会によってタガが外れて治安悪化しまら世紀末の魔王みたいになりそうだな。」

他の記者やカメラマンは少し竹穴を卑下するような会話をしていた。

 「おい、お前ら何か文句が言いたいなら悪口が言いたいなら面と向かって褒め言葉よりデカい声で言いやがれ!ビーチにいる女の尻見て『良い尻してるな!』と直接言うより簡単だろうが!卑怯もんが!」

卑下された竹穴はテレビや配信動画でよく見るやんわりとした雰囲気とは正反対の状態で発狂してしまいにはゼェゼェと息切れをしている。

 鬱憤晴らしに怒鳴り散らすのに体力消耗して疲れたのだろう。

 「竹穴教授、大変申し訳ございません。」

 パソーナ現取締役の南郷会長は会見後のタイミングを見計らってカメラマンや新聞記者、フリーライター、WEBライターらしき者がいないのを見計らって一言謝罪した。

 すると竹穴はキッとなった目で振り向く。

 「この恥晒し!面汚しが!お陰様でこっちは完全にメンツが丸潰れ状態じゃねえか!どのような管理をしていたら軍人崩れのテロリストに襲われるんだ?おぉん!?」

相変わらず怒り狂って南郷に八つ当たりを始めた。

 「教授、落ち着きましょう。それはテロリスト本人に言った方がよろしいかと…それより最も大変なのは我が社の為に命をかけてくれた自衛官です。中央即応集団、いや即応連隊です…」

代表取締役の中田はなだめつつ竹穴にそう言い聞かせる。

 「所詮、代表取締風情のペーぺーのくせに俺に意見できるとはなかなか素晴らしいな。我が竹穴より自衛官の方が大変ですぅ〜って何だ!?空気を読めやクソが!」

竹穴はさらにヒートアップしてもはやパソーナを襲ったテロリストより恐ろしい形相になった。

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