第10話 テロリスト教団⑥全滅
警察の指揮通信車内にいる警察幹部とSAT指揮官は戦慄していた。数多くのテロ組織やマフィア、暴力団組織を制圧してきた警察きっての精鋭部隊である特殊急襲部隊(SAT)が不意打ちに遭って全滅したからだった。
「警部!すぐに応援を…ぐぁぁあ!」
出動した特殊急襲部隊の隊長の最後の足掻きとも言える叫びと共に銃声が鳴り響く。
「いとも簡単にSATがやられるなんて…奴らは一体何者なんだ?」
警備部長はSATの指揮官に聞いた。
「それはこっちだって知りたいですよ。しかもあれだけ日本警察で一番の部隊がやられたんですから…」
特殊急襲部隊指揮官もかなり動揺しているようである。
首相官邸
散撒文幸総理大臣と
「大阪府警のSATが出動しましたが突入要員、全滅しました。相手はおそらくプロの可能性があるでしょう。最悪、自衛隊を出動させた方が良いのでは?」
鶴ノ木警察庁長官は散撒総理に意見をする。
「要は自衛隊を治安出動させると言うことですよね?そんな事したら野党やマスコミも黙っちゃいませんよ!他にも出動可能な部隊がまだあります!大阪府警が駄目なら福岡県警でも…」
「その手のプロでしかも、SATを全滅させたんだぞ。要するに警察では歯が立たなかったんだろうよ!それなら自衛隊を治安出動、もしくは特殊作戦群なり第一空挺団、中央即応連隊を投入すればそれなりに台頭にはなれるだろう。」
浜口防衛大臣は最初、声を荒げつつも後から落ち着いたような様子で自衛隊出動案を出す。
しかし、散撒総理は自分が所属する政党、自共党の支持率を気にしているようだった。確かにもし、自衛隊を出動させて淡路島がパニックになった挙句、戦死者が出た場合、責任追及もされるだろうし党の存続も怪しくなるからである。そして最後まで総理大臣の座にしがみつきたいのもあった。
「何を
翌日
不死尾副総裁の後押しで散撒総理大臣は戦後初の自衛隊の治安出動を決定したため、対テロ作戦における訓練を極めている中央即応連隊を派遣することにした。
当初は特殊作戦群の派遣を検討したが、とりあえずは特殊部隊に準ずる対テロ作戦の訓練も受け緊急展開性に精通した中央即応連隊を派遣して対処させることに決まったのである。
第一空挺団から転属してきた志賀3曹は89式5.56ミリ小銃に照準具を取り付けて防弾チョッキの上には私物の装備品を取り付けて、普段から使い慣れている物を選ぶようにしていた。
警察からはテロリスト教団が淡路島のパソーナ施設を占拠したということだけ教えてもらったが正直、どの程度の戦力は分からない。ただ志賀3曹にとってはひたすら任務を遂行するのみだった。
「たった今、テロリストに関する情報が入りました。」
公安調査官から警察、自衛隊へと通達が入る。
「近くのカメラに残っていた映像を静止画にして調べたところ犯人はダニー赤蝮と言う男でやはりあの世界終末救済会のようです。そして何より軍隊経験と東欧での戦争で義勇兵として戦った実績があります。」
公安調査官はざっくりと説明した。
「噂では東欧の戦場でスペツナズを300人以上余裕で殺しているらしいな。」
自衛隊の中央即応連隊の普通科中隊長は書類や海外機関から得た翻訳書類を見てつぶやく。
既にマスコミも動き出し、正体不明の武装集団がパソーナ施設だけ乗っ取ったことだけが報道されて画面には展開する機動隊の姿と治安出動した自衛隊車両だけが映っていた。
伊丹駐屯地からは第36普通科連隊が明石海峡大橋の検問を兵庫県警と行い、香川県の善通寺駐屯地に駐屯する第15即応機動連隊の第1普通科中隊が大鳴門橋の検問や警備を香川県警と共に行っている。既にテレビニュースで治安出動について報道されていることからパソーナ施設を占拠した教団に対して自衛隊、警察の動きに関する状況は完全か漏れていた。
「マスゴミの奴ら、完全に俺たちの情報を教団に漏らしている。これじゃ正面から立ち向かっても自衛隊、警察のどれか問わずランダムで犠牲者は確実に出るぞ。」
中央即応連隊から派遣された中隊長は特殊急襲部隊(SAT)指揮官や公安警察、警察幹部に忠告をする。
中央即応連隊から送り込まれた戦闘要員は空挺レンジャー課程をクリアした志賀3曹をはじめ部隊レンジャーを卒業した若い3曹、陸士長が参加しており、他の班も参加していた。
使用武器はやはり使い慣れている89式5.56ミリ小銃に9ミリ拳銃(SIG P220)を装備している。
志賀3曹は部下が安全に移動できるように先陣を斬るかのようにダニー赤蝮が統括する世界終末救済会が占拠する建物へ向かった。
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