第7話 テロリスト教団③完全なる戦士
信者を洗脳して戦闘員にすることで人数を増やした後はやることはただ一つ。武装蜂起することだった。軍のように団体で行動することは勿論、プラスで普段は一般人として一般家庭に紛れて生活するが指令が下ったら牙を剥き出しにして蜂起することも追加されている。
ちなみに世界終末救済会には役職と補職があり、一般的なのは信者が戦闘員になることだが戦闘員が属する役職は基本的に保安部と呼ばれるがやることは反対ながら認識としては邪魔を排除して教団の存続を守れるように時には攻めを行う軍隊であり私兵集団でもある。
一般人として一般家庭や一般社会生活に紛れるのは基本、保安部の補職である強行偵察班、そして特殊任務を背負う特殊行動班、もしくは別の役職である諜報部の役目だった。諜報部の補職として暗殺班や情報収集班が躍動班が存在する。
特殊行動班の班員である
それは脱走者と脱会支援を密かに行う弁護士の抹殺だった。
諜報班からの連絡で一時期、脱会騒ぎを起こしかけた弁護士とライバルながら協力関係にある別の事務所の弁護士が落ち合うという情報が入ってきており、待ち合わせ場所は修練所から離れた位置にある公園という情報までセットで含まれている。
教祖であるトールことダニー赤蝮総統から「案冊」と一言だけの指令が出て暗殺せよということだと確認したからだった。
なぜ暗殺を「案冊」という漢字に変換したかと言うとそれは言葉を濁すためだった。万が一の備えとしてあらかじめ打ち合わせて「この文字を使う!」と認識統一させていたのである。
守川はカランビットナイフと呼ばれる刃が三日月型に滑らかに曲がって先端が鋭い凶器を武器に部下を率いてまずは山狩を始めた。
脱走者は訓練途中でまだそこまで戦力になる程でも無いし体力も持つことがないだろうから遠くまではいけないはず。そしてついに肥満体でも隠れることが可能な太い木の後ろに隠れている脱走者を発見した。
部下に待つように合図して「自分が行く」という素ぶりのサインを送る。そしてすり足で近づいて水分補給に水を飲む脱走者の背後からスローモーションにカランビットナイフで側方の首をスッパリと切り裂いた。
脱走者は一瞬だけ守川の方を向いたが血を流しながら意識を失うように倒れる。
「持ち物はペットボトルの水だけか。武器を持たずに逃げるは愚策すぎてバカだ。残るは目的地へ行って弁護士大先生をあの世へとエスコートするだけだな。」
守川は独り言を呟きながらボディタオルでカランビットナイフを拭いて部下と共に弁護士がいる町へ向かった。
「確か弁護士の自宅はアパートです。まだ独身なのが幸いですね。住所を聞いた話だとボロアパートだからおそらく隠居生活でもしてるつもりなんでしょう。」
守川の部下である班員がメモ帳に記された情報を渡す。
一通り、弁護士に関する情報を把握できており、幸いにも人目がつかないところに落ち合う約束していたんだから特殊行動班の連中にとってありがたいことだった。
わざわざ近隣住民がいる中で暗殺任務はかなりのリスクを伴うし万が一、目撃者がいたらややこしくなる。
守川は部下たちを分散させて目的地の方面へ向かわせ、自分は迂回する形で回り込むことにした。
ナイフの他に持っている物は消音かつ隠密性のあるピストルクロスボウで矢には神経毒が塗られており厳重な注意を払うように使うつもりである。
そして写真と同じパターンの格好で分かりやすい姿の弁護士がいるのが分かった。
部下達もP9と呼ばわる小型拳銃を構えて万が一の対策を取ろうとしたが守川が問答無用で後ろからピストルクロスボウで守川が弁護士の首を撃ち抜いたから任務はあっけなく終了だった。
仮に運良く生きていたとしても神経毒に悩まされて結局は死ぬ運命であるからどっちにしろである。
弁護士は息ができないほどの激痛と共に自分が後ろから矢で射られているのに気づいてそのあと急激な苦しさですぐにあの世へと行く羽目になった。
ちょうど、諜報部の中に存在する証拠隠滅班が待ち構えていたかのように軽バンを停車させて弁護士の遺体を積載してその場から去っていく。
「さっすが守川班長!やりますねえ。」
比較的年齢の若い班員が守川を煽てた。
「当たりめえわ。お前みたいなド素人と一緒にすんじゃねえ。」
守川は冗談混じりに笑いながら若い班員に言葉を返す。
守川大牙は元々、陸上自衛隊の第一空挺団所属のコマンドーでサバイバル、追撃、隠密、偵察、徒手格闘、ナイフ戦のスペシャリストだったが訳があったのか退職して気がつけば教団側についていた。
当初は食いっぱぐれてこれからどうしようか思い悩み、インターネットで求人を探すもなかなか仕事が見つからず、偶然、適当にネットサーフィンをしていた時に世界終末救済会の時事ネタがあり、興味本位で入会したら後に引けないのは分かっていたが結局は好奇心には勝てず、完全に教団のミイラ兵士状態になってしまったのである。
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