第3話 国防機能
東欧で戦争が起きたことが世界で話題になっていたが日本も例外ではないと思われていた。その理由はやはり台湾有事だった。
台湾有事とは簡単に言うと台湾における赤い国の侵攻、そして台湾国土の大規模自然災害、テロの発生による緊急事態のことである。
陸上自衛隊習志野駐屯地に配置されている第一空挺団所属の
現在、自衛隊は深刻な人手不足に悩まされており何としてでも若手の入隊を推し進めているが志賀3曹にとっては全くもって他人事だった。
第一空挺団は『精鋭無比』をモットーにしている自衛隊発足時から完全なる精鋭部隊として知られている陸上自衛隊唯一の空挺部隊で全国の陸上自衛隊から新隊員を始めとする部隊からの希望者が集められているため、よほど体力的・精神的に脱落する者が出るのはごく稀であり、そうそう人手不足に悩まされることはなかった。
志賀3曹と入隊同期で後に一般部隊から希望転属してきた
「北のゲリラより先にぶっ殺すぞ。と言うか台湾有事とかの前に日本下手したら詰みそうじゃねえか?」
志賀3曹は少し冗談で脅し文句言ってから神空3曹に聞いてみた。
「いや、暴動が起きない限りまず有り得んやろ。革命左派の暴動やテロが起きても俺ら自衛隊も治安出動とかした試しがないしな。」
神空3曹は楽観的に聞かれたことに答えた。
「まあ、部隊レンジャーと空挺レンジャー、2回目のレンジャー卒業したお前が言うなら間違いないな。」
志賀3曹は軽く安堵して言葉を返す。
「空挺レンジャー取ってさらに荷が軽くなったのもあるけどさ、ここは陸士でも自分から空挺に来てるような奴ばっかだから人手不足に悩まんでも良いな。」
神空3曹は志賀3曹に話し続ける。
「前の部隊はそんなにやばかった?」
志賀3曹は一般部隊について食いつく。
「陸士は何かしらで辞めるわ、任期で辞めるし陸曹でも退職計画を練ってる奴らも多かったから演習はかなり人員破綻当たり前よ。3曹なりたてがほぼ下の陸士がするような雑用をしている始末さ。」
神空3曹は今までに体験したことを志賀3曹に打ち明けた。
陸上自衛隊においては近年、軍事力が大幅にアップグレードされている中国や北朝鮮の脅威に晒されている九州を管轄している西部方面隊は演習が多かったり、他の方面隊より服務規律が厳しいことで陸士長の退職者がかなり増えていた。
神空3曹が以前いた部隊も例外では無かった。
特に営内と呼ばれる自衛官が住む寮とも言える隊舎生活においては陸士が可哀想に思えるぐらいしんどそうだった。何かしらやらかせば集合という同期ごと集めての指導、営内清掃などに駆り出されたりなどの厳しさが災いとなっていた。
「俺も結婚する前に辞めておけば良かったわ。」
志賀3曹は神空3曹の話を聞いたあと少しぼやいた。
志賀3曹は自衛隊に入ってから2年目以降ぐらいから辞めたいと言いながらズルズルと続けていたことから周りから相変わらず『退職詐欺師』というあだ名が士・曹の階級層やしまいには幹部や特殊作戦群の隊員からも定着している。
しかし上層部は志賀3曹の一般社会における無頓着さに目についているのか一向に辞めさせる気はないようだった。
今、自衛隊は戦後以降ずっと在日米軍と合同訓練をしたり活動をしていることで日米安保の元でアメリカ軍の傘下に近い立ち位置になっているが日本の政治家内にも親中派がいたり、一時期世間を騒がせた宗教団体との癒着などが問題になっていることでいったい日本はどっちの味方なのか分からないのが現状だった。
自衛隊の人手不足は陸上自衛隊のみならず海上自衛隊や航空自衛隊、防衛省職員にも共通しており、各SNSでも求人を出したり地方協力本部による高校や大学、専門学校訪問をして学生に入隊勧誘をしたりしているが比較的社会的地位が高いであろう国家公務員である防衛省職員の給与や待遇もたかが知れているのが現状で状況は難しいものであった。唯一の良いところは安定しており無くなること皆無で失業のリスクがそうそうないことだけであった。もう一つ探すなら公務員という肩書きだけ。
環境においては一昔前まで当たり前だった暴力を含むパワハラやセクハラ、モラハラなどのハラスメント問題や劣悪な職場環境、いじめなどの問題があるイメージが多少残っているのも人員不足の原因でもあると考えられているが部隊によって当たり外れがある俗にいう『配属ガチャ』も絡んでいるのも多少ある。
特に再入隊したり元フランス軍外人部隊の入隊者は人によっては悲惨だったりするのもあった。かつて後輩だった先輩隊員に様々な仕打ちやプライドをズタズタにされる嫌がらせだったり特殊な経歴に嫉妬心を抱く者に目をつけられたりとか内容は話せば長くなるほどだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます