第2話 壊れゆく自然と森林環境税

日本 東北地方某所

 ほとんどの山林が都市開発のために超富裕層や海外の企業に買収されていき、街から田舎へ行く際に必ず山が削られて太陽光パネルが設置されている光景が見られるようになった。

 一部では新たにオフィスを構えた大企業や外資系企業の前に数少ない自然を保護するために抗議する者が増えて、デモ騒ぎになるほどに来ている。

 「小賢しくうるさい下民どもめ。こっちが環境保護に貢献してるってのにグダグダと騒ぎやがって。」

田舎に参入して来た電力会社の代表はデモを行う地域住民を眺めながらつぶやく。

 「太陽光パネルは環境破壊に繋がる。今すぐに辞めさせろ!」

抗議に参加したデモ隊の1人が拡声器で電力会社の前で叫ぶ。

 それに合わせて他のメンバーも「そうだ!」と連呼して抗議をしていた。

 数年前からエコビジネスとして日本政府は中国の電力会社である「大海電力」を受け入れるようになり、多額の補助金を出した上に森林環境税も非課税にしている。

 しかし、森林環境税は日本国民総員、すなわち田舎の山間部は当然だが、都会や住宅地など森林環境とは無縁の土地に住む日本人に住民税の一部として納めなければならなかった。

 元々、森林環境税は簡単に言うなら市町村において森林の整備やその促進や環境保護に充てるためにできた税制度だが、実態としてはむしろ、エコビジネスと称した環境破壊をしているとして批判の声が上がっていた。

 山がむやみに削られていくことで日本固有の生物が減少したり森林資源が食い尽くされていくことに自然保護団体や地域住民とインフラ会社や電力会社と小競り合いが続くような状況が散見されだしている。

 最近では熊本県の自然豊かな地域が半導体工場やインフラ会社の工場や設備が設置されていくことで環境保護団体がデモを起こし賛成派と衝突して警察機動隊が出動する騒ぎにまでなっていた。

 ほとんど削られてできた太陽光発電所や通信基地の周辺には厳重な警備態勢が敷かれており必ずどこかしら監視カメラが設置されていてそうそう近づく者はいなかった。

 実際に侵入して近くを巡回していた警備員に現行犯で捕まって逮捕された事例もあるぐらいだった。

 特に太陽光パネルを設置している会社の看板や注意表示を見ると日本企業もあるがほとんどが海外から参入して来た大海電力であった。

 特にインフラビジネスやエコビジネスで潤沢な資金を得た企業らは定期的に抜き打ち巡回としてドローンを飛ばして施設周辺のセキュリティを強化している。

 「最近、撮影用ドローンを飛ばしてから抗議してくる野郎達も見なくなりましたね。」

「流石に迂闊なことができないと思って諦めたんだろう。」

 大海電力の社員は役所や公共機関回りを兼ねた巡回をしながら雑談をしていた。

 大海電力は政府から補助金をもらった上に実は中国共産党からも進出した際のビジネス費用を貰っており、日本に進出してから役場関係の他、公共施設や警察が利用する設備の電力供給などを委託するようになったことで格段と利益を得るようになった。

 その一方で太陽光やインフラなどの開発事業に反対する地域住民の一部が公民館や集会所を借りて打つ手を考えていた。

 「我らもこれ以上奴らに舐められるわけにも行かねえ!あちらがその気ならばこちらも遠慮はしねえ。」

普段、農作業をしている60代になるかならないかの男性が強気で発言する。

 「まずは監視カメラがある場所を探してそれを破壊しないことには意味がないな。」

「いや、あと他にもセンサーがあるはず。赤外線レーダーで反応するようになってる機械がな。」

集合した仲間同士で大海電力やそれに加担する町役場、委託企業に対抗する術を話し合った。

 当初は猟銃なとで襲撃する計画も立てられていたがつい最近、日本国土の中心の田舎町で猟銃が使われる事件が発生しており、それ以上同じことが起きたら猟友会の存続が怪しくなると言うことで却下になった。

新型コロナウイルス騒動以降、徐々に日本の治安が悪化していき都会でも暴力団幹部が何者かに拳銃で撃たれたり、半グレの中堅が朝鮮マフィアに消防斧で頭をスイカ割りにされて殺害される事件が起きているぐらいだった。

 戦後からバブル期も同じような事件もあったがその当時は大した規制や縛りもなく法も大したことがなかったからであり、今は不況による生活困窮でストレス社会であるのが原因だと論する者も出始めている。

 特に田舎など閉鎖された地域の凡人にとっては大海電力などの海外企業は所詮は余所者でしかなくあまり良い印象ではない。

 大海電力はしばらくそういった閉鎖環境の田舎では極力、地域住民を敵に回さないように多少は気配りをしているようである。

 例えば休日出勤手当有りの催し物の一環で農業や狩猟した猪の解体を手伝ったり町内行事を豊かにするなど協力することで信用を勝ち取ろうと考えていた。

 しかし、まだ信用は得ることができずむしろゴマを擦って変なことを考えているのではないかと疑う者も増えており、距離感が分からなくなっていく。

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