第二章 最初のズキュン
娘が三歳になったころ。
おしゃまな口調が私の心を捕らえ、虜にしてしまったのだ。
「よいしょ・・よいしょ・・・」
食事の後、リビングで晩酌している私が座っているソファーをよじ登る娘。
ウィスキーの水割りを片手に、眺めていると。
ソファーの端から、ハイハイのように近づいてくる可愛い天使の顔が。
私の酔いを加速させていった。
さらに小さな両手を私の太ももに当てて、よじ登ってくる。
ムニュムニュとした重さが、むず痒く心にからみついてくる。
あとからママが言うには。
真っ赤な顔がデレまくっていたそうだ。
ストンと、私の両足の間に座る娘。
おもむろに見上げる大きな瞳がキラキラ輝いている。
「ダメでしゅよ・・・」
小さな唇から意外な言葉が漏れた。
「えっ・・・なにが?」
私は戸惑いながら聞き返した。
「パパ、おかお、まっかでしゅ・・・おさけ、ナイナイでしゅ・・・」
どストライクの直球が私の胸に、私にとっての最初のズキュンが突き刺さった瞬間だった。
「そーか・・そーか・・・お酒、ナイナイでしゅかぁ・・・?」
私はグラスをテーブルに置き、娘を抱きしめた。
「やだ・・パパ・・・おヒゲ、いたいぃ・・・」
小さな悲鳴を聞きながら、私はその軟かいホッペをチュッチュしていた。
「可愛いなぁ・・・ナッちゃんは・・・
パパ、何でも言うこと聞くぞぉ・・・」
「本当・・・?」
ウィスキー以上の酔いが、私を興奮させていた。
「むすめ酒」である。
「ああ、本当さ・・何でも買ってやるぞぉ・・・」
「じゃあ・・じゃあ・・・
セーラースターのチアラが欲しいっ・・・」
どうやらアニメのグッズらしい。
私に断る理由等、ありはしない。
「ああ、じゃあ明日、一緒におもちゃ屋さんにいこうか?」
「うれしいっ・・・パパ、だいしゅきっ!」
娘は私の頬に、可愛いキスを何度もしてくれた。
私の酔いが更に加速したのは言うまでもない。
だが、冷静な妻の目には見えていたのだろう。
三歳の娘の表情が妖しい笑みを浮かべていたことを。
この時から私は。
娘の下僕になったのでした。
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