Oh, my girl !

進藤 進

第一章 反抗期?

娘が一緒にお風呂に入らなくなったのは、いつからだろうか?

中学生まではOKだと思っていたのに。


橋本部長は高校生まで入っていたという。

羨ましすぎるぞ!


スタスタ先を歩く、娘の後姿を眺めながらタメ息をついた。


今日はママと娘の三人で郊外まで車を出し、買い物をする予定だった。

急な用事が出て、ママはキャンセル。


久しぶりの娘との二人きりのデートだと、胸を躍らせていたのだが。

車を駐車場に止めて、目的のアウトレットに向かう二人には距離があった。


小学六年生の娘は中肉中背。

年頃の女の子の平均身長。


私よりも頭ひとつ半、低い感じか。

私の妻、ママとほぼ同じなので、これ以上背は伸びないかもしれない。


私としては子供のままでいてほしいので、全然OKなのだが。

本人は気にしているらしい。


「小さいほうが可愛いし、モテるだろう?」

「だって、クラスの子が・・・」


運転中の会話。

口ごもる言葉の行間に「好きな男の子」の文字が見えて、私は胸がキュンとなった。


「お前の魅力が分からないヤツなんて、ほっとけよ・・・」

思わず口に出た言葉に、娘の表情が変わった。


「何、言ってるの・・・べ、別に・・・男子だなんて、言ってないし・・・」

明らかに動揺する表情に、切なさがこみ上げてくる。


「マジ、信じらんないっ・・・パパなんて、大っ嫌い!」

そのまま横を向いた娘は、駐車場に着くまで口をきいてくれなかった。


せいぜい気を使ったつもりだったのだが、デッドボールだったらしい。

テイクワンベース以上のペナルティは、私の気持ちを凹ますには十分だった。


娘は反抗期なのだろうか。

そんなことは無いと、私は思う。


特に普段から口をきかないことはない。

むしろ、饒舌に私に話しかけてくれる。


だが、今みたいに少しでもお気に召さないことがあると。

手痛いペナルティーを私に課すのだ。


私は常に腫れ物に触るように言動に気をつけているつもりなのだが。

男の子の影が見えると、つい本音を言ってしまう。


どんな小さなことでも娘は容赦しない。

口を利かないことが私に一番の打撃だと知る彼女は、必殺技をタイミング良く繰り出すのだ。


だが、むくれた後は、そのお詫びとして甘えてくれる。

シュンとしている私に、可愛い声ですり寄ってくるのだ。


絶妙な緩急の付け方に、私は逆らえない。

そう、私は「娘の下僕」だから。


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