第2話
作戦終了から数日後
「で?彼女どうだ?」
「どうとは?」
「あの子配属されたばっかりなんだけど仲良く出来てるかなぁってさ」
「仲良くする気は無い」
結は雫と仲良くしたいようで絡みに行っているが雫はそんな結をほぼ無視している
「でもペアだぜ?」
「だから?」
「命預けるんだぞ?連携の1つ出来なきゃ次はお前も死ぬぞ」
先程までと打って変わって真剣な面持ちで話す
戦場じゃ何が起きるかなんて分からない、人間同士のルールある戦争ですら人が大量に死ぬのに雫達が相手にしているのは人類ですらない
「…………」
無言で早足で去る
(どうしたものか……)
「あれま」
「あっ、澪さん」
背後から声をかけられた澪は振り向く
そこには結が立っていた、紙の束を持っている
「結ちゃんかどっした?」
「雫さんはどこにいるか分かります?作戦の話をしたいんですが」
「ついさっきそっちに行ったよ……急げば追い付ける」
「有難うございます」
早足で雫の行った方向へ進む
「雫さんー!」
「結?」
「はい、結です。次の作戦について話がしたくて」
「必要な事は話したはず」
淡々と雫は言う
無表情で感情が読み取れない、まるで機械と会話しているかのように言葉行動に感情が込められていない
「た、確かに雫さんの力ならこれでも行けますが……」
「余計なことはしなくていい」
そう言い残すと早足で歩き結を置いていく
基地破壊の作戦終了後は大きな作戦が無く見回りや小規模な討伐作戦を行っていた
結はほぼ棒立ちで殆どの敵を雫が切り刻んでいた
最強と言われる力を持つが故に新たにペアを組むまでの半年間1人で戦い続けてられていた
「相変わらずあいつは冷たいねぇ」
「澪さん!?びっくりしました」
「脅かすつもりはなかったんだけどねぇ……本来あいつ悪い奴じゃないんだがな」
「澪さん達は雫さんと仲良いようですが」
「まぁ、俺達は雫が配属になった時から関わってるからねぇ、そうなると当然あいつが死神と呼ばれる以前も知ってる」
「雫さんにとって私は邪魔なんですか?」
無視したり話を無理やり切ったりされているので過度に嫌われていると思っている
「……それは分からねぇ。だが嫌われてる事は無いだろうな」
それから1ヶ月、2ヶ月と時間が流れていく
いつの間にか最長記録を更新しているが関係は一切進展していない
結は話をするために相変わらず雫を探している、基地内ではもう日常の1つになっている
「また探してるのか……今日は見てないな」
「雫さん?あぁ、ペアの……ごめんなさい見てないわ」
「あ、あれ?いつもならすぐ見つかるのに」
基地内を隈無く探すも見つからない
丁度会議室から出てきた伊織、澪の2人に出会う
「あっ、伊織さん」
「どうしたの〜?」
「どうせ雫だろ?あいつは……良い機会だ着いてこい」
澪は含み笑みを浮かべる
澪の先導で基地を出て暫く森を進む
(こっちは確か)
結は進んでいる道に見覚えがある配属時に1度案内された場所だった
「言うの?」
「丁度いいからな……それに侵略者共の動きが活発になってる。いい加減連携ひとつ取れなきゃ死ぬ」
「相変わらず澪ちゃんは優しいね〜」
「俺は誰にだって優しいぜ?」
横長の墓石が1つ立ちそこに文字が書かれている
殉職した時の部隊名と人の名前が隙間無く並んでいる
かなりの量の名前が書いてある、皆この基地が出来てからこの基地に配属になり侵略者との戦い死んだ者達の名前だ
「ここは説明要らないな?」
「は、はい殉職した具現者の為の共同墓地ですよね?雫さんは何故今日なんですか?確か1年に1度決まった日に……」
「あぁ、基本はその日に墓参りするんだがあいつは別の決まった日にする」
「それは?」
「今日はなんの日だと思う?」
突然の質問に驚くもすぐに考える
(今日は何かありましたっけ?)
「流石に難しいんじゃ?」
「そうか?まぁヒント言うと雫は1年に1度じゃない、数は5回」
「5回……まさか」
「なんだ?」
「死んだペア及びパーティメンバーの命日」
「正解、よく調べてるな。今日は最初の相棒の命日だ」
雫はペアとパーティメンバーの命日を全て覚えている
必ずその日に墓参りをしている
3人はすぐに雫を見つける、今日はここに一人しかいない為すぐに雫を見つけられたのである
「さて簡単に話すが最初のペアは同期であいつが1番仲良かった奴だ。死んだ原因は作戦中に不意をつかれて致命傷を負ったことによる死亡だ」
「そうですか……雫さんも気づけなかったんですか?」
「雫もと言うよりは不意をつかれたのは雫だった、防御が間に合わなかった雫を庇って致命を負ってそのまま死んじまった」
澪は真剣な表情で淡々と語る
3人のペアと2つのパーティがどうなったかを語る
1人目と同様に3人目も庇って死亡、2人目に関しては雫を逃がす為に囮となり死亡
2つのパーティは2回とも運悪く分断された挙句に囲まれ雫側のメンバーが合流した時には仲間は死んでいたという
「なぜ澪さんはその事を?」
「パーティの生存者から聞いたのとペアの場合はあいつ本人からだ」
「雫さんから?」
「あいつ死神って呼ばれる前はよく笑ってたんだぜ?今からじゃ想像付かんだろ?」
「は、はい」
どんどんと仲間を失う事に感情を失っているかのように笑顔が消え会話が減り作戦に多く参加するようになって行った
まるで死に場所を探しているかのように
「悪いことは言わないからペアを解除しろ、今のあいつは戦場に死に場を求めてる。このままではお前も巻き込まれて死ぬ……まぁ決めるのはお前だ」
「もう帰るみたいだよ」
「おっと、急いで基地に戻るか……」
「わ、私!話をしてきます。1度しっかりと話さないとダメな気がするので」
「それがいい」
澪は結の頭を撫でる
「あいつを救ってくれ」
聞こえるか聞こえないか瀬戸際の小声で呟き雫にバレないように急いで基地に帰る
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