それ故に死神は戦場を駆ける

代永 並木

第1話

机を挟み女性と少女が話している

少女の方は水色の髪をした少女で無表情で感情が読めない


「ペアを組む気は無いですよ何度も言っているはずです」

「学生の具現者は最低でも2人1組を組んで行動しなければならないのが決まりだ、このままではお前は後方へ移動になるぞ?」

「私は複数回ペアを組んでいます、ですが2ヶ月と持った人は居ましたか?」


淡々と少女は語る

半年前に最後の相棒を失って以来彼女は誰とも組んでいない


「居ませんよね?」

「あぁ、居なかったな……」


少女は過去に3回ペアを組んで侵略者(ブレイカー)に対抗する為前線へ出ていた

パーティを組んでも半数は死に残りは戦闘続行不可能として後方へ移動している

少女は多少の怪我こそすれど生還し今でも前線へ出ている


「それに私と組もうという人は居ないはずです」


その過去を持つ少女に付けられた異名は死神、ペアを組んだ人は必ず死ぬという噂が流れている


「……もし居たら?」


そもそも対抗する術を持つとはいえ若者を前線に送る事自体あまりいいことでは無い

それも本来は学業に勤しむ子供達だ

人類が滅びかけているからこそ若い命は重要だ

その為、国々は最低でも2人1組……それも最前線には送らないという決まりを決めている


「その場合は組んでも構いません、そろそろ作戦開始前準備の時間です失礼します」


少女は早足で部屋を出る

1人残った女性はタバコを吸いひとつの資料を鞄から取り出す


「……彼女も確か今回の作戦に参加だったな」


その資料には新しくこの基地に所属した少女の事が書いてあった


「あら、また見てるの?」

「ノックをしろ」


白衣を着た女性がノックをせずに中に入り女性の後ろから資料に目を通す


「えぇ〜私たちの仲じゃない?それよりやっぱり気になるの?」


彼女の資料の備考欄にただ1つ、椎名雫とペアを組みたいと本人の希望があると書いてあった

椎名雫とは先程の少女の事である


「彼女と組ませるのは決定だが……」

「また彼女と組ませたら死ぬかもしれないって言いたいの?」

「あぁ、このレベルで続くとな……」


今までの記録を見ても雫の経歴は異常


「何かある?」

「明確に何かあればいいんだがなぁ……これ以上無闇矢鱈に若者に死んで欲しくないんだが」

「それは誰もが考えること……だけどそれでも私達は戦い続けなくちゃならない。それが人類存続の為に私たちが出来る唯一の事よ、そして勝つには彼女の力が要る」

「そうだな……私達は戦い続けるしかない、多くの屍を超えて勝たなければならない。これまでもこれからも戦い死に行く者達の為にも……」


〜〜〜


部屋を出た死神こと椎名雫は作戦参加の部隊が集まっている場所へ向かう

その道中見知った2人に出会う


「おっ、雫も今回の作戦参加なのか?」

「そう」

「澪ちゃん会議の内容聞いてなかったの〜?」

「聞いてたぞ!?侵略者の溜まり場ぶっ飛ばすんだろ?」


具現者の中でもレアな銃を扱うペアだ

中距離戦闘が出来る代わりに近接戦を苦手としているがその欠点を考えても瞬間火力、殲滅力はトップクラスのかなり強い能力だ


「かなりの量が集まってるって聞いたけど……」

「問題ねぇよ、お前は俺が守ってやるから」


澪は一人称が俺の男口調だが正真正銘の女である、黒髪ショートの童顔少女で初対面ではいつも歳も性別も間違えられてるが雫より2つ上の18歳である

もう片方は栗色の髪のおっとりとした女性は伊織、歳は17で強気な澪と違い消極的な性格で平均より身長が高くこちらも澪と同じく年齢を間違えられる(上)

この2人は死神と呼ばれていることを知っているが気にせずに雫と接している数少ない人物である

雑談を交わしながら集合場所へ向かう


「本作戦はこの基地から10数キロ先にある侵略者の基地の破壊だ」


最前線では無くてもちょくちょく侵略者は隠れて基地を作って滞在増殖している


「3部隊に別れてそれぞれの道から奴らが増える原因のコアを破壊しろ、部隊編成は前日には伝えられている筈だ、これより一時間後に作戦を開始する各自準備を怠るなよ」

「俺達は別々か……死ぬなよ?」

「そっちも」


1時間経ち作戦が始まる

作戦通り順調に進み侵略者を殲滅しながら進む

第1部隊がコアを発見し破壊、第2、第3部隊はそれぞれ敵を引き付け破壊の援護を行い1時間と経たずに作戦は終了した


「コアの破壊を確認!作戦は成功した!」


第1部隊を率いていた人物が近くの隊員に聞こえるように叫ぶ

(手薄すぎる)

雫はあまりにもスムーズに進んだ事に違和感を持つ


「浮かない顔だな? 死者こそ出たが奴らのコアを破壊した……俺たちの勝ちだぞ?」


皆喜んでいる、仲間を失い悲しむ者も居るがそれでも数多ある基地のうちたった1つとはいえ相手基地の破壊は大きな進歩だ

残党殲滅を終え帰路を辿る

行きと違い騒がしい

そんな中雫に1人の少女が近づく


「あ、あの……」

「誰?」

「私は新田結です、聞いてませんか?」


ピンク色の髪の愛らしい少女、緊張しているのが見て分かる

それもそのはず今回の作戦が初の実戦で相棒となる目の前の人物は学生内では最強と言われている人物


「……何を?」

「私、新田結は椎名雫さんとペアを組むことになりました!」


結は敬礼する

雫は当然そんなこと聞いていないが心当たりが1つある

作戦前に話していた時『……もし居たら?』という質問があった


「あれは言質を取るために呼び出したという事……?」

「これからよろしくお願いします!」

「そう、よろしく」


雫は差し伸べられた手を取る

(あれは新しい相棒?あの様子じゃあいつは仲良くはする気ないみたいだけど)


「澪ちゃんどうかしたの?」

「いんや、少し疲れただけだ寝るから着いたら起こしてくれ」


伊織の太ももに頭を置きすぐに眠る

(前線に出るのが2人1組が最低条件なんて酷な話だなあの優しい死神にとっては)

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