後編
『まずいな……この調子ではクラス全員の
教室では、
しかし、すでに開始から3分が経過したにも関わらず、
女子生徒たちは
親友の
「さあさあ、残りはもう2分しかないぞ。誰でも良いから早く私の元へ
一方で《
『……《魂の美食家》は誰でも構わないから、魂をひとつ差し出せと言った。
そんな中、クラス委員長の
『高村くん……!まさか!』
「俺がお前の
高村くんは震えた声でそう言った。
その答えを聞いた《魂の美食家》は満足げな笑みを浮かべる。
「よかろう、勇気あるものよ。では私の前に立つのだ。」
言われるがまま、高村くんは《魂の美食家》のいる
『待ってくれ!高村くんが
******
「ちょっと待ってください!」
気付いたら僕は、教室中に
「なんだ?君が代わりに魂を差し出すというのかね?」
《魂の美食家》は
僕はその質問に答えずに、親友のコージと
「
高村くんはこんな時でも、僕に引き下がるように
こんないい
「大丈夫だよ、高村くん。僕に任してくれ。」
僕は高村くんに優しく笑いかけたつもりだったけど、少しひきつっていたのかもしれない。
高村くんは不安そうな表情を浮かべながら、僕の後ろに下がった。
「それで?凡田とやら。君が魂を差し出すということで良いのかな?」
《魂の美食家》は再び僕に問う。
その問いに対して、僕は小さく首を横に振った。
「いや……僕じゃない。魂を差し出すのは僕の手のひらの上にいる
そして僕は、コージが乗っている右の手のひらを《魂の美食家》の前に差し出した。
「………これは一体なんという生き物なのだ?」
《魂の美食家》は興味深げに僕の手のひらの上にいる親友をじろじろと見る。
「カブトムシだ。この世界にいる
「ああ、はじめて見る生き物だ。私と同じように
「お前は、誰でも構わないから魂をひとつ差し出せと言った。だったらそれは人間のものじゃなくたっていいはずだ。」
僕の答えに、《魂の美食家》はニヤリと笑う。
「ククッ、確かに君の言う通りだ。では、気が変わらぬうちにこのカブトムシとやらの魂をいただくとしよう。」
そう言うと、《魂の美食家》はコージの前に手をかざした。
すると、コージの
あっという間の出来事だった。
魂を食われたコージは、僕の手のひらの上でひっそりと
「あ……あああ……」
悲しみに暮れる僕とは
「ほう!人間のも
《魂の美食家》はパチンと指を鳴らし、
そして教室を
「終わった……のか?」
「助かった!助かったんだよ、俺たち!」
「よ、良かったあーーー。」
何人かのクラスメイトが僕の方に
その場にいることが辛くなった僕は、動かなくなった親友を
******
学校の裏山にある木の下に穴を
多分もう3時間目の授業が始まっているだろうけど、とても教室に
「凡田くん、ここにいたのか。」
「高村くん……」
そこに姿を現したのはクラス委員長の高村くんだった。
「それ、カブトムシのお墓?」
「うん。」
「俺も
「ああ……いいよ。」
僕の
「……凡田くん。正直に言うと、君のことはカブトムシとばかりお
「……うん。」
「本当に、ごめん。」
高村くんは僕の方に向き直ると、
「いいんだ。それに、信じてもらえないかもしれないけどさ、カブトムシが僕に向かって言ったんだよ。『俺を高村くんの代わりに
「…………。」
「
「信じるよ。俺は、啓介を信じる。」
高村くんは僕の言葉を
「あっそう……てゆーかどうしたの?急に僕のことを下の名前で呼んじゃってさ。」
「まあまあ、いいじゃないか。俺たちもう友達なんだからさ!」
「はあ?何でそんなこと勝手に決めるんだよ!?大体僕は君の下の名前だって知らないのに……」
「ええ!?俺、クラスの委員長もやってるのに下の名前も覚えられてないのかあ。なんかショックだけど、まあいいかあ……俺の下の名前は
「……コージ、か。
僕は差し出された浩二の右手を
そうして、この日を
浩二はコージと違ってよく
きっとこれはコージが命を
僕はそう
おわり
5分限りの学級裁判 橋暮 梵人 @bonto0602
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