第3話 夜間工事
同じ現場で、3 日目です。
夜間工事あるある。
夜間工事3日目若いやつ昼間寝れず、現場でふらふらしだす。
ベテランは、逆に、昼寝れるようになり、いつも通りの力強さが戻ってきます。
そうすると、当然、現場に怒鳴り声が響き渡るようになります。
私は、現場に活気があって好ましく思ってるのですが、最近は、一般の方から、(あそこの工事の人達が怖い)と苦情が入ってしまうので、抑えて下さいと良くお願いします。
いまは、コロナの影響で、夜の人出がだいぶ減ってますよね。
当時は駅そばでの仕事は、午後11時前後終電の時間帯が一番難しいところでした。
これから乗る方は、乗り過ごせない気持ちが強く、ほんとにあわてています。
私達工事の人間や、ガードマンがいる為、信号無視で横断歩道を渡ることができないので、信号が変る瞬間走りだす方が結構な数でます。
降りてくる方は、酔が回り工事に絡んでくる人。
とても、ゆっくり歩く人。
イヤホンを両耳に着け、周りを見ないで歩く人。
私達の方は、昼働いている時間帯になおすと、ちょうど昼ごはんで休憩の時間です。
集中力が落ちてきます。
だいたいトラブルのは、こんな時、それでも仕事はしないといけません。
この日は5cm削る仕事でした。
ちょっとした段差です。
それでも駅前急ぐ人達に向けて、注意喚起の「段差注意」の看板を多めに出し、段差のはじはじにカラーコーンを配置します。
交通誘導警備員もつけて
「段差あります。気をつけて下さい。」と声掛けもさせます。
魔の時間帯、たまたまトイレ休憩の為、ガードマンが抜けた時、それは起こりました。
走る人達、若めの女性が、段差につまづき、ぱたんとコントのように、たおれます。倒れ方が悪く痛そうです。それを避けたサラリーマン、ちょうど段差に足がのりふらつきます。苦笑いして進み出します。
横断歩道の後ろから、それを眺めて大笑いしてる学生さん、お酒はいってるんでしょうね。
さらに、信号が点滅しだした時、凄い勢いで走ってくる人が、あれは止められない。
何事もないことを祈りながら眺めました。
私の立ち位置からは60mほどあります。
ちょうどだったようです。
車道にでて、1、2、3歩目が段差に取られました。体か飛んで行きます。
(やっちやった)
(うまく受身取って)
(だめだ)
微妙に身体がななめになり、肩から地面に叩きつけられました。
すぐには、起きあがれないようです。
予想外の不意な痛みは、なかなかつらい。
走って現場向かいます。
「大丈夫ですか。」
「大丈夫ですか。」
場所は、交差点のどまん中、信号変わって車が走ってきてます。
勢いがよかったせいで、規制の外で倒れています。
頭を打ってる可能性もあるので動かせません。
後ろのほうでクラクション鳴らす車。
(うるせぇ〜な)
「大丈夫ですか。」
ちょっと反応がありました。
「大丈夫ですか。」
顔が動いて目が合います。
とりあえず、大事にはならなそうです。
「動けますか。」首を縦に振ってます。
それでも辛そうなので、後ろから手を差し込み、ゆっくり起こします。
「大丈夫ですか。」
肩、ヒジ、顔… ぱっと見ただけで、何箇所か出血してます。何とか立てましたが、動くのがきつそうです。
現場から離れていた元請に連絡します。
「救急車呼びますよ。」
「現場行くまで待って下さい。」
もっと重症なら、すぐに救急車呼ぶのですが、動けるし、悪くて骨折程度と思われるたので、この時は、元請くるまで被災者のそばでまつことにしました。
歩道にある植樹帯に被災者を座らせ、私は交通整理に向かいます。
今の出来事で、車の通行を止めてしまったので、通れますよアピールと、頭を下げて、ご迷惑おかけしましたジェスチャーをします。
やっとガードマン戻ってきたので交代します。
被災者のところに行き、ペットボトルの水とタオル出します。
「救急車呼びましょうか?」
ぼーっとしてます。
元請到着。
「あとは、宜しくお願いします。」
元請と交代。
こんなことが起きても工事自体は進んでます。
進捗状況確認に走ります。
「てめー何やってんだよ。」
ベテランから怒鳴られます。
現場確認します。
ビルトゲンが終わったようです。
「のりちゃん、だいじょぶ」
ビルトゲンのオペレーターさんから聞かれます。
「回送車呼んでますか。」
「OKだったら、呼ぶよ。」
「とりあえず、呼んどいて下さい。」
回送車は、現場くるだけで15分はかかります。
周囲を見回し、削り残しないか確認して周ります。
「だいじょうぶですね。ありがとうございました。」
「何あったん?」
経緯を説明します。
「相変わらず、のりちゃんも大変ね。またね。」
とりあえず、現場は一段落。
被災者のとこ戻ります。
元請に話しを聞くと、はっきりしません。
「俺が呼びますよ。」
119番電話します。終電も逃してるようだし、こんな格好で外歩くのもツライだろうと考えました。
経験上、被災者も急なことで、混乱しているだろうし、決めきられないことが多いです。
後になって、早期治療してればってことが嫌なので私は、こういう時は人命最優先で行動するようにしております。
救急車きましたね。
今日も、何とか形になりそうです。
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