第14話 発信
だりあが愛用しているアプリは、なんと計七つ。
ことりたちはそれぞれ一つずつ、分担して活動を始めた。
ことりが任されたのは、短文投稿アプリ。ユーザー数はそこまで多くないが、初心者の投稿も見られやすいらしい。
「こんな感じでいいのかな……」
打った文章を読み返し、首をひねることり。
この手のことは初めてで、いまいち加減がわからない。
「まいっか」
だりあにきいてみようかとも思ったが、脳内の彼女は気軽にいこー! とゴーサインを出した。
投稿ボタンを押す。
NEWとマークがついて、ことりの叫びがネット上に轟いた。
『私立栄翔学園中等部の三年生です。
私たちは、学園の幼等部、初等部、中等部に卒業、中退の制度を設けるための署名活動をしています。
ご協力よろしくお願いします』
メッセージの右下に、1と数字が表示された。
ここには閲覧者数が表示されるらしいが、もう誰かが見たのだろうか。
スマホが通知を告げた。だりあからだ。
『ことり、文章かたすぎ笑笑』
むっと頬をふくらませることり。
どうやらあの1の正体はだりあらしい。
ことりはだりあの担当アプリを開いた。
事前に聞いていたアカウント名を検索すると、すぐに出てきた。
「うわ」
思わず声が漏れる。
投稿数約二百件。フォロワーはなんと一万人。
今回の投稿も、ずいぶんおしゃれな出来だ。第三希望まで『栄翔学園高等部』で埋めつくされた進路希望調査書と、『私たちに自由な選択を』の文字。
「センスってこういうことか……」
ことりは呆然と呟く。
不安になって同じようなアプリを担当するふうの投稿を確認すると、ほっと息をついた。その文章はことりよりもかたかった。
なんだか少し楽しくなってきた、そのとき。
ぽーん、とスマホが初めて聞く音を発した。
何事かと画面を見ると、どうやら投稿に反応があったらしい。
そわそわとアプリを開く。
右下の数字が5に増えている。その横のふきだしに触れると、コメントが表示された。
『親の思いと金を無駄にするな』
ことりの息が止まった。
そんなふうに、とらえられるのか。
返信機能もあるが、余計なトラブルは避けたい。対応に迷い、だりあにメッセージを送った。すぐに返ってきた返信は、
『放置』
簡潔だった。拍子抜けしたことりに、次のメッセージが届く。
『とりあえずたくさんの人に知ってもらうことが最初の目的だから。悪い広まり方でも、目立てばとりあえずそれでいいよ』
なるほど、と納得することり。
だりあの言う広い世界、とは、こういうことなのかと実感した。
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