第6話 緊急突撃
我らがリーダーは、きっとなんとかしてくれる。だからことりも、必死に動揺を抑えた。
「校長先生。いえ、なんでもありませ」
「はい。お話があって参りました」
ふうは、とっさに誤魔化そうとした篠原先生をが遮った。
直談判はまだ先のはずなのに。想定外の展開に、ことりはまた鼓動が速まるのを感じる。
篠原先生は目を見開き、校長は首をかしげる。つぼみの件もあってか、ふうに対しても視線が厳しい。
「話? まさか君も学園を辞めたいなんて言い出さないだろうね」
図星をつかれ、ことりは息がつまった。嫌な目でねめつけられ、口の中が乾く。
ふうは気づけないくらい小さな深呼吸をし、まっすぐに答えた。
「私たちは、この学園を出ます。そのための制度改革をお願いしに来ました」
怒りからか驚きからか、校長の太った顔が真っ赤に染まる。勢い任せに口を開きかけ、ぎりぎりで止めてことりとかなたを見た。
「私たち、とは、君たちもなのか……?」
鼓動が、人生で一番速い。口から心臓がとび出てきそうだ。けれどことりは両手を握りしめ、できるだけ普通の声で言った。
「はい。お願いします。卒業を認めてください」
「お願いします」
隣のかなたが頭を下げた。
あわててことりも真似る。体の前に揃えた手が、スカートをぎゅっと握っていた。
長い沈黙。けれどきっと、数秒のことだ。
校長の乾いた笑い声が、強張る耳に響いた。
「はは。何をばかなことを。学園を抜けるなど、将来の栄光を捨てるのと同じことだ。君たちはそんなこともわからないのか?」
校長がついたのは、いまだことりの胸中に渦巻いているたしかな不安。けれどふうは揺るがなかった。胸を張ったまま、淡々と言い返す。
「名門校への進学や一流企業への就職だけが全てではないと思います」
校長の鼻がぴくりと動く。
「そうだね、それだけではない。だがそれはすばらしいことだ」
「それは自分の意志で努力した場合じゃないですか?」
「君たちは幸せになりたいと思わないのか?」
「思います。でも、
二人のやりとりを、ことりは固唾をのんで見守る。
ふうの反論は、つぼみの直談判を計画したときにまとめた六人の意見に基づいている。話すのはふうだけだが、その言葉はことりたちの総意だ。
ことりたちは、自分の人生の方向を、自分の意志で決めたいだけなのだ。
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