第4話 決定
だりあがぴっと指を立てる。
「影響力がなくてもさ、味方につければ便利なんじゃない?」
すぐには意味がわからず、ことりは首をかしげた。みんなも同じ反応で、だりあはつけたす。
「栄翔に疑問を持ってはいるんでしょ? なら仲間じゃん。利用しない手はないって」
一番に理解したのはふう。
「先生を味方につければ、職員室のコピー機が使えるわね」
だりあが嬉しそうに頷く。
続いてあるとが
「外部校卒の先生間だけなら意識改革もできるかもな」
とつぶやく。
「他の先生たちの目をそらすのにも役立つかも」
ことりも言った。
だりあの、先生を敬わない態度が吉とでた。先生を利用するなんて、栄翔にはまずない発想だ。
「じゃあ決定ね。篠原先生を『生徒解放派』に入れる」
決定事項と、『生徒解放派』の文字をメモする。ふうらしいネーミングだ。
「直談判はどうする?」
と、静かな声はかなた。
「私たちが動かなきゃいけないのか……」
つぼみが不安そうに言う。
「篠原先生を引き込んでからがいいんじゃないかしら。バックに大人がいた方がいいわ」
『直談判』の横に、先生も一緒に、とつけ加える。ふうの言うとおり、先生たちがついていれば心強い。
話し合いが一区切りつく。
ことりはノートを手に立ち上がった。
「まず栄翔に不満そうな篠原先生に接触。味方につけて、それから直談判でいいね?」
これまでの決定を確認すると、あるとが手をあげた。
「直談判って誰にするんだ?」
「それも篠原先生のあとでいいわ。先生間の力関係がわからない」
と、ふうが一蹴する。
『直談判』の横に力関係の確認と書く。立って書くとあとでかなたに怒られるが、しかたない。
「じゃあ、次。親への説得」
ノートの上のほうのメモを読み上げると、みんながあ、という顔をした。
ことりの予想通り。話し合いが長引くと、序盤の議題は忘れられてしまう。
「う~、それが一番めんどくさい……」
言い出しっぺのだりあが眉をひそめる。
「あら、そうかしら」
しかしふうは、案外明るい声色で言った。
注目を一身に集め、不敵に笑う。
「そんなもの、学園を変えたら一発だわ。学園長にやらせればいいんだもの」
物怖じしない言い方に、ことりの背筋がぞくりと粟立った。
十五歳にして王者の貫禄をもつふうは、ときどきこういう他を圧倒するオーラを放つ。
「ことり」
かなたに呼ばれ、ことりははっと我に返る。
ふうの言葉をしっかりと書き留めた。
「自分で言うことじゃねぇけどさ、成績だけで生徒会なんて選ぶもんじゃねぇな」
あるとがおかしそうに言う。
「それだけじゃないはずなんだけどね」
「でも結果、反乱起こそうとしてるわけだし」
つぼみとだりあは笑いあった。
いち早く周囲との違いを感づいた六人は、少しずつ不信感を高めてきた。けれどことりたちの世界は狭く、その違和感がなんなのか、栄翔はなにがおかしいのか、最近までわからなかった。けれど、気づいた今はもう止まれない。
(私たちの世界は、私たちが変える……!)
ことりは、決意を胸にノートを閉じた。
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