ドラゴン
それでも渾身の力を振りぼって自分のブラウスとスカートを引き裂いた。パンティ一枚になると平らな胸に龍の紋章があらわれた。
これは生前のリリアナから聞かされいた捨て身の魔法だ。ドラゴンに変身できる。ただし二度と人間の姿には戻れない。
「エル。お父さんを護ってあげて。もし、万が一お父さんの身に何かがあれば、躊躇せずドラゴンに変身なさい」
「わかった」
エルは母の思い出を吹っ切ると全身に力をこめた。「グォレンダァ!!」
愛らしかったエルの顔がみるみるうちにいかついドラゴンに変わっていく。
「やめろ。エル! その魔法は!」
「おとうさん。助けてあげる」
エルは逞しいドラゴンに変身した。そして魔王に食らいついた。しかし――魔王の体は恐ろしく硬かった。
魔王の体には歯が立たない。エルの攻撃は無駄に終わった。
「グルゥ……」
エルは諦めずに何度も攻撃を繰り返したが、結果は同じだった。
「くそぉ……」
エルは絶望に打ちひしがれていた。
「もう、終わりにしようではないか!」
魔王はエルの首を一撃ではねた。地面にドラゴンのバラバラ死体が転がった。
「エル! 何で死んでしまったんだ!エルぅぅぅ」
父親はバスタードソードを抜いた。
「うおおおおお!」
そのまま魔王に向かって突進する。
「ぐはあっ!」
両者は刺し違えた。魔王の、そして男の背中から剣が生える。
「死ね、魔王!」
男はそういうと自爆の呪文を唱えた。
「やめろぉ!この俺様が、に、人間後ときに」
言い終える間もなく閃光と大爆発が起きた。
「ふははははは、これで勝ったと思うなよ」
魔王の声だけが響き渡るのだった。
こうしてリリアナの一家は死に絶えた。
だが、彼らの勇敢な戦いぶりは人々の間で長く語り継がれるだろう。
魔王が生きている限り、第二第三のリリアナが立ち上がる。
その時まで人々は希望を捨てず生き続けなければならない。
完
「異世界転生したサラリーマン、美丈夫ドラゴンに成り代わる!」- 剣と魔法の世界で生きる新たな冒険が始まる 水原麻以 @maimizuhara
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