僕はリリアナさんと結婚したいと考えています

「ねぇ、お母さん。

明日はお父さんのお誕生日でしょ? 何かプレゼントは用意したの?」

「もちろん用意してあるわよ。

あなたはちゃんとお小遣いを使って買い物をしたの?」

「うん。

バッチリ!」

「そう。

偉いわね。

よし、じゃあ今日は早く寝なさい」

「はーい」

翌日―――父の日当日。

娘であるリリアナは朝早くから出かけていたのだが、夕方になって帰宅するとすぐに自室に向かってしまったため、母親であるララは不思議に思っていた。

いったい何があったのかしら?そんなことを考えながら夕食の準備をしていたところに玄関の方から扉を開ける音が聞こえてきた。

(あら?)

誰か帰ってきたみたいね。

そんなことを考えながら玄関に向かうとそこには娘のリリアナの姿があり、その隣には見知らぬ男性の姿が見えた。

(誰なのかしら?…………まさか!)2年前に夫が他界してからは女手一つで育ててきたつもりではあるが、やはり年頃の娘を持つ親としては複雑な心境であった。

もしかしたら恋人ができたのではないかと考えたのだ。

「あの……もしかしてリリアナの恋人さんかしら?」

恐る恐る尋ねると、「違うよ! 私に彼氏なんていないもん!」と否定されてしまった。

その言葉を聞いてホッとしたのも束の間、隣の男性が口を開いた。

「はじめまして。

僕は、リリアナさんの婚約者のエルムと申します。

今後ともよろしくお願いいたします」と挨拶された。

「こ、こちらこそよろしくお願いいたします。

私は、リリアナの母のララです。

ところで、あの子はいったいどうしたの? 急に結婚だなんて……」「えっと、僕とリリアナさんは、実は同じ学校の同級生なんですよ。

それで、彼女の方から告白されて……」「な、なんですって!?」驚きのあまり大きな声を出してしまった。

「あの子が男の子に告白したっていうの!?」と。

「はい。

それで、お付き合いすることになったんです」

「そんな……。

あの子ったら、いつの間にそんな大胆なことを……」

「あの、ところで、お母さまはご在宅でしょうか?」「えっ? ええ、いると思いますけど……」「それでは、お義母様にお会いしたいのですが」「いいですよ。

それじゃあ、ついてきてください」「ありがとうございます」そして、リビングへと向かうと、そこにはソファーに腰掛けてお茶を飲んでいる母親の姿があった。

「あら、あなたは……」「こんにちは」「ええと、どちら様でしょうか?」困惑気味の母親に対して、エルが名乗ろうとしたその時、「ただいま帰りましたー」という声と共に、娘のリリアナが姿を現した。

「あなた、帰ってたのね」

「うん。

ついさっきね」

「そう。

ところで、そちらの男性はどなたかしら?」

「あっ! 紹介するね。

彼は私の婚約相手のエルムさんだよ」「はじめまして。

リリアナさんの婚約者のエルムです。

よろしくお願いいたします」

「まあまあ。

どうも初めまして。

私はリリアナの母親のララといいます。

どうぞよろしく」

「はい。

よろしくお願いします。

それで、突然なんですが、お義父様はいらっしゃいますか?」「父なら書斎にいると思うけれど、どうしてかしら?」

「いえ、ちょっと大事な話があるので伝えておいた方がいいかなと思いまして」「そうなんですね。

分かりました。

呼んできますね」「すみません。

お願いいたします」こうして、父親のゼノスを書斎まで呼びに行った母親が戻ってくるまでの間、4人は談笑しながら待つことにした。

「そういえば、あなたたちはどこに行ってたのかしら?」「ちょっと街に買い出しに行っていたんだ」

「へぇ~。

それじゃあ、荷物持ちはあなたにやってもらったのかしら?」「ううん。

実は、途中で会った男の人と一緒に行ったの」

「ふ~ん。

それって、ひょっとして彼のこと?」

「そうだよ」

「ふ~ん。

あなたたち、そういう関係になったのね」「そういう関係?」

「つまり、付き合っているってことでしょ?」

「うん」

「そっか。

あなたもそういう年齢なのね……」

「? どういうこと?」

「ううん。

なんでもないのよ」

「そう?」

「そうよ」それからしばらくして、ようやく父親であるゼノスがやってきた。

「待たせたな。

それで、俺に用があるってのは、お前のことか?」

「はい。

そうです」

「そうか。

まぁ座れよ」「失礼いたします」

「それで、一体何の話だ?」

「はい。

単刀直入に言わせていただきますが、僕はリリアナさんと結婚したいと考えています」

「ほう」

「それで、できればお義父様にも許可を頂きたいなと」

「なるほどな」

「ダメでしょうか?」「いや、別に構わんぞ」

「ありがとうございます」

「ただし、条件があるがな」

「はい。

それはなんでしょう?」

「リリアナを幸せにしてやることだ」

「もちろんです。

約束します」

「そうか。

ならばよし。

あとは若い者同士で好きにするといい」「はい。

ありがとうございます」こうして、リリアナの両親への挨拶を済ませたエルは、リリアナを連れて家路についた。

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