俺は、人間とドラゴニュートの間に生まれたハーフだ

「さて、着いたぞ」

「ここが目的地なのですか?」

「そうだよ」

「ふむ。

ここは、一体どこなのですか?」

「ここか? ここは、俺の生まれ育った街だ」

「はい。

ということは、もしかして……」

「ああ。

君は、前世の記憶を持って生まれ変わった存在なんだろ?」

「やっぱり、分かってたんですね」

「そりゃあ分かるって。

だって君、人間じゃないじゃん」

そう。

俺は、目の前にいる彼女が普通の人間ではないことに気付いていた。

なぜなら、俺が今立っているこの場所は、俺の生まれ育った街の外れにある森の入り口で、しかも今は深夜の時間帯。

普段からあまり人の出入りがない場所だけに、ここに人がやって来ることなど滅多にないことなのだ。

だが、そんな場所に彼女が現れた。

それだけで、彼女がただの人間ではないことを証明しているようなものである。

「そうですか。

では、ここで話すのもなんですから、どこか別の場所に移動しましょう」

「だな」

それから俺たちは、近くの喫茶店に入り、飲み物を注文してから話をすることにした。

「改めまして、私は魔族の頂点に立つ存在である『魔王』の一人で、『サキュバス』族のリリスと申します。

以後、お見知りおきを」

「俺は、人間とドラゴニュートの間に生まれたハーフだ。

名前はエルム。

これからは、エルと呼んでくれればいい」

お互いに自己紹介を終えたところで、リリスが口を開く。

「それではエル様、まずは何から話しましょうか?」

「そうだなぁ……」少し考えた末に、一番最初に聞いておかなければならない質問をすることにした。

「なぜ君はこの世界にやってきたんだ?」「はい。

それについては、私が生まれた時のことから説明した方が良さそうですね」

「生まれた時?」

「はい。

実は私、元は人間の女の子だったんです」

「はいぃ?」

「信じられないのは当然でしょうが、これは事実なんですよ」「マジで?」

「はい。

マジです」

「そっか。

とりあえず、続きを聞かせてくれるか?」

「わかりました。

それでは、続けさせていただきますね」

そうして、彼女は語り始めた。

自分がこの世界に転生するきっかけとなった出来事を。

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